宇宙人『あれはなんだ』『メントスコーラです』
「見たまえ、船長。あいかわらず、地球人は戦争をしているぞ」
「はい、議員。文明の発生以来、ずっと続いています」
宇宙から地球を見下ろす宇宙人の調査船。船内には、無数のモニターがある。
議員はモニターの1つを指した。
「ほら! あれを見てみろ。捕虜をぎゅうぎゅうに押し込んでいるぞ。あれは戦争犯罪ではないのかね?」
「いえ、議員。あれは、『満員電車』です」
「満員電車? なんだね、それは?」
「さあ……? それでは他を見てみましょう」
──
「む、船長。あの地球人を見たまえ」
「どうしました?」
「地球人は、1日の3分の1は静止状態なのだろう? あの個体は静止不足のようだ」
「そうですね。地球人は『ネブソク』と呼んでいます」
「大丈夫なのかね?」
「さあ……? あの個体は『シャチク』というそうです。『ブラック企業』とやらで働いているそうで」
「ひょっとして、これは奴隷制度なのではないか? 奴隷は宇宙条約で禁止されているんだぞ」
「そうですね。しかし、我々の条約では、未開人の文明には干渉できませんので……」
「うーん、そうだったな。ところで、さっきから通信を見ていると、『値上がり』『少子化』『増税』などで、みな、生活が苦しいと言っているぞ」
「そのようですね」
「じゃあ、地球人は絶滅の危機に瀕しているのではないのか? 彼らを条約で保護したほうがいいのではないのかね?」
「いえ、議員。その必要はありません。地球人は80億も人口がありますので」
──
「あの地球人たちは、大勢で集まって何かの映像を見ているぞ。何をしているんだ?」
「あれは、『映画』です、議員」
「映画? 映画とはなんだね?」
「架空の物語を映像に投影したものです。彼らはそれを見ているのです」
「架空の? なぜわざわざウソの記録を見るのだ?」
「さあ……?」
◇
「あ、あれは知っているぞ。自動車というんだろう?」
「左様です。地球人の主な輸送手段です」
「で、あの自動車は何を輸送しているんだ?」
「えーっと、自動車を操作する個体と、あとは空気だけですね」
「地球ではまだ化石燃料を使っているんだろう? しかも有限のはず」
「その通りです」
「ただ移動するだけでは、エネルギーの無駄ではないのか?」
「さあ……?」
◇
「じゃあ、他の地球人の活動を見てみよう。彼らのネットワークから選んで出してくれ」
「はい……、これはどうでしょう?」
──モニターに地球人たちが映し出された。
『はい、それでは今日は、メントス食べてからコーラ飲みま~す──パチパチパチ!』
『わさびを鼻から一気飲みしまーす! ウェーーイ!!』
「なんだあれは? 船長、彼らはいったい何をしているんだ?」
「さあ……?」
「さあって、船長、彼らは苦痛を感じているように見えるぞ。そこまでして何が目的なんだ? ちゃんと調べたまえ」
「お待ちを……。えーっと、どうやら、彼らはあの行動を配信で見せることで、生活の糧を得ているようですね」
「それじゃあ、肉体を危険にさらして収入を得るわけか。……わかった! 彼らは兵士なのだな?」
「さあ……?」
◇
「むむむ、この情報はなんだ? この通信を見てみろ」
「えっと……、『宇宙人は、すでに地球に来ている』と書いてありますね」
「船長、どういうことだ!? 我々の調査が、地球人にばれているではないか」
「そんなはずはないのですが……?」
「未開の文明には干渉してはならないと、宇宙条約で定められているんだぞ」
「それ、さっき私が言ったやつですよ」
「……とにかく、どういうことなんだね」
「さあ……? 船のステルス装置は完全に機能していて、地球人には探知できないはずですが……」
「うーん、地球人には、我々の知らない技術があるのか……? まだ調査が必要なようだな」
「では、議員。これなどいかがですか?」
「なんだねそれは?」
「これは、『小説家になれない』です。小説を投稿するサイトです」
「小説? 小説とはなんだ?」
「先ほどの映画と同じで、虚構を文字でつづったものです」
「またそれか。ウソとわかっていて読むのか?」
「お読みになられますか?」
「面白いのか?」
「さあ……?」
「うーーーん。……やめておこう」
(おわり)
この船長、やる気ないなあ。
お読みいただきありがとうございました。




