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宇宙人『あれはなんだ』『メントスコーラです』

掲載日:2026/07/21

「見たまえ、船長。あいかわらず、地球人は戦争をしているぞ」


「はい、議員。文明の発生以来、ずっと続いています」


 宇宙から地球を見下ろす宇宙人の調査船。船内には、無数のモニターがある。

 議員はモニターの1つを指した。


「ほら! あれを見てみろ。捕虜をぎゅうぎゅうに押し込んでいるぞ。あれは戦争犯罪ではないのかね?」


「いえ、議員。あれは、『満員電車』です」


「満員電車? なんだね、それは?」


「さあ……? それでは他を見てみましょう」


 ──


「む、船長。あの地球人を見たまえ」


「どうしました?」


「地球人は、1日の3分の1は静止状態なのだろう? あの個体は静止不足のようだ」


「そうですね。地球人は『ネブソク』と呼んでいます」


「大丈夫なのかね?」


「さあ……? あの個体は『シャチク』というそうです。『ブラック企業』とやらで働いているそうで」


「ひょっとして、これは奴隷制度なのではないか? 奴隷は宇宙条約で禁止されているんだぞ」


「そうですね。しかし、我々の条約では、未開人の文明には干渉できませんので……」


「うーん、そうだったな。ところで、さっきから通信を見ていると、『値上がり』『少子化』『増税』などで、みな、生活が苦しいと言っているぞ」


「そのようですね」


「じゃあ、地球人は絶滅の危機に瀕しているのではないのか? 彼らを条約で保護したほうがいいのではないのかね?」


「いえ、議員。その必要はありません。地球人は80億も人口がありますので」


 ──


「あの地球人たちは、大勢で集まって何かの映像を見ているぞ。何をしているんだ?」


「あれは、『映画』です、議員」


「映画? 映画とはなんだね?」


「架空の物語を映像に投影したものです。彼らはそれを見ているのです」


「架空の? なぜわざわざウソの記録を見るのだ?」


「さあ……?」


 ◇


「あ、あれは知っているぞ。自動車というんだろう?」


「左様です。地球人の主な輸送手段です」


「で、あの自動車は何を輸送しているんだ?」


「えーっと、自動車を操作する個体と、あとは空気だけですね」


「地球ではまだ化石燃料を使っているんだろう? しかも有限のはず」


「その通りです」


「ただ移動するだけでは、エネルギーの無駄ではないのか?」


「さあ……?」


 ◇


「じゃあ、他の地球人の活動を見てみよう。彼らのネットワークから選んで出してくれ」


「はい……、これはどうでしょう?」


 ──モニターに地球人たちが映し出された。



『はい、それでは今日は、メントス食べてからコーラ飲みま~す──パチパチパチ!』


『わさびを鼻から一気飲みしまーす! ウェーーイ!!』



「なんだあれは? 船長、彼らはいったい何をしているんだ?」


「さあ……?」


「さあって、船長、彼らは苦痛を感じているように見えるぞ。そこまでして何が目的なんだ? ちゃんと調べたまえ」


「お待ちを……。えーっと、どうやら、彼らはあの行動を配信で見せることで、生活の糧を得ているようですね」


「それじゃあ、肉体を危険にさらして収入を得るわけか。……わかった! 彼らは兵士なのだな?」


「さあ……?」


 ◇


「むむむ、この情報はなんだ? この通信を見てみろ」


「えっと……、『宇宙人は、すでに地球に来ている』と書いてありますね」


「船長、どういうことだ!? 我々の調査が、地球人にばれているではないか」


「そんなはずはないのですが……?」


「未開の文明には干渉してはならないと、宇宙条約で定められているんだぞ」


「それ、さっき私が言ったやつですよ」


「……とにかく、どういうことなんだね」


「さあ……? 船のステルス装置は完全に機能していて、地球人には探知できないはずですが……」


「うーん、地球人には、我々の知らない技術があるのか……? まだ調査が必要なようだな」


「では、議員。これなどいかがですか?」


「なんだねそれは?」


「これは、『小説家になれない』です。小説を投稿するサイトです」


「小説? 小説とはなんだ?」


「先ほどの映画と同じで、虚構を文字でつづったものです」


「またそれか。ウソとわかっていて読むのか?」


「お読みになられますか?」


「面白いのか?」


「さあ……?」


「うーーーん。……やめておこう」



(おわり)


この船長、やる気ないなあ。

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
宇宙人が地球人を面白おかしく表現する設定が面白いですね。 肉体を危険にさらして収入を得る、という表現は上手くて笑いました。 2人の会話のやり取りも面白いしオチもすっきりしていて良かった。
満員電車を捕虜収容とする辺りから完全に引き込まれました。最高です。
「さあ……?」と言ってますが、めちゃくちゃマイナーな情報を知っているので、非常に優秀な船長だと思いました。マイナーな情報の有り難みを知らずに深くツッコむ議員が優しくない奴だと思ってしまいました。 とて…
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