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中心者と開発者──二人で世界を支える理由  作者: かも@ろん


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第6話

チャットで海斗の正体を知ったあと、

ユナはしばらく呆然としていた。

ゲームの路地は静かで、

街灯の光がゆっくりと揺れている。

「……共同設計者って……何すればいいの……?」

ユナがぽつりと呟くと、

海斗からすぐにチャットが届いた。

《K》

「難しく考えなくていい。

まずは……ユナが“こうだったらいいな”と思うことを言ってみてくれ」

「えっ……そんな簡単に……?」

《K》

「君の感情は、この世界のAIにとって最重要データだ。

試しに、ひとつだけ言ってみてほしい」

ユナはしばらく考えた。

路地は薄暗く、

追われた恐怖がまだ残っている。

「……じゃあ……」

ユナは小さく息を吸った。

「この路地……もう少し明るかったら……安心できるのに」

その瞬間だった。

ふわり、と光が広がった。

街灯がひとつ、またひとつと柔らかく灯り、

路地全体が温かい光に包まれた。

「……え……?」

ユナは目を見開いた。

光はユナの足元から広がるように、

まるで“ユナの言葉を聞いて”動いたかのようだった。

《K》

「……成功だな」

海斗の声は、どこか誇らしげだった。

「すご……本当に……変わった……?」

《K》

「ユナが望んだからだ。

君の感情と希望は、この世界の優先度の最上位にある」

ユナは胸に手を当てた。

「……私が……言っただけで……?」

《K》

「それで十分だ。

君は“中心者”であり、共同設計者だ。

君の言葉は、この世界の仕様変更として扱われる」

ユナは混乱しながらも、

どこか嬉しそうに笑った。

「……なんか……魔法みたい」

《K》

「魔法じゃない。

君の感性が、この世界を動かしているだけだ」

海斗の声は優しくて、

どこか照れているようにも聞こえた。


「じゃあ……次は……」

ユナは少し考えてから言った。

「NPCたち……さっきみたいに怖い顔じゃなくて……

もっと普通に、優しくしてくれたら……いいな」

その瞬間、

路地の奥から歩いてきたNPCが、

柔らかい笑みを浮かべた。

「こんばんは、中心者様。

ご無事で何よりです」

ユナは思わず後ずさった。

「えっ……えっ……!?

さっきまで無表情だったのに……!」

《K》

「ユナの“怖い”という感情が、AIにとって危険値だった。

だから、君が望む形に調整されたんだ」

「……すごい……

私、本当に……世界を変えてる……?」

《K》

「変えてるよ。

君はもう、ただのプレイヤーじゃない」

ユナは胸が熱くなった。



チャットに、海斗から短いメッセージが届いた。

《K》

「……ユナ。

君がこの世界にいてくれるなら……

俺は、どんな仕様でも作れる」

ユナは息を呑んだ。

「海斗さん……」

《K》

「君を守りたかった。

でも……それだけじゃない。

君と一緒に、この世界を作りたい」

ユナの胸がじんわりと温かくなる。

「……私でいいの……?」

《K》

「ユナじゃなきゃダメだ」

その言葉は、

静かで、

まっすぐで、

胸の奥に深く落ちた。



ユナは小さく頷いた。

「……じゃあ……私……やってみる。

この世界を……海斗さんと一緒に作る」

《K》

「ありがとう、ユナ。

これからは……君と俺の世界だ」

ユナは照れながら笑った。

「……なんか……すごいことになってきた……」

《K》

「大丈夫。

俺が全部フォローする。

ユナは“感じたまま”言ってくれればいい」

ユナは深呼吸した。

「……じゃあ……次は……

この世界に、もっと“安心できる場所”がほしい」

その瞬間、

街の奥に、柔らかな光のドームが生まれた。

ユナのための、

世界で最初の“安全領域”。

海斗は静かに笑った。

《K》

「……ユナの初仕事だな」


路地の奥に生まれた光のドームは、

まるで呼吸しているみたいに、ゆっくりと脈打っていた。

ユナが一歩近づくと、

光は柔らかく揺れ、まるで歓迎するように広がる。

「……これ、私が言ったから……?」

胸の奥がじんわりと温かくなる。

怖かった路地が、今はまるで別世界のようだった。

チャットが届く。

《K》

「ユナの“安心したい”という感情を、街のAIが最優先で処理した。

ここは……君のための安全領域だ」

ユナはそっと光の中へ足を踏み入れた。

空気が変わる。

柔らかくて、温かくて、胸の奥のざわつきがすっと消えていく。

「……すごい……本当に……安心する……」

《K》

「それが目的だ。

君が落ち着ける場所を、まず最初に作りたかった」

海斗の声は、どこか照れているようで、

でも真剣だった。


光のドームの中心に立つと、

ユナの前に黒いコートの男性──海斗が現れた。

NPCの姿のままだけど、

その瞳はもう“開発者”のものだった。

「……海斗さん」

「ユナ。ここなら、誰にも邪魔されない」

海斗はゆっくりと歩み寄り、

ユナの目の高さまで視線を合わせた。

「さっきチャットで話したこと……

全部、本気だ」

ユナは胸がきゅっとなる。

「私を……共同設計者に、って……」

「そうだ。

君はこの世界の中心者で、

そして……俺が信頼できる唯一のプレイヤーだ」

海斗の声は静かで、まっすぐだった。


「でも……私、本当に何も知らないよ?

ゲーム作りなんて……コードとか……

なんか、難しい数字とか……」

海斗はふっと笑った。

「ユナ、コードは俺が全部やる。

君は“どう感じるか”を言ってくれればいい」

「感じる……?」

「そう。

君の感情は、この世界のAIにとって最重要データだ。

君が“怖い”と言えば、街は警戒し、

“嬉しい”と言えば、街は光る」

ユナは目を瞬いた。

「……え、じゃあ……

私、感情で世界を動かしてるの……?」

「動かしてるよ」

海斗は微笑んだ。

「君はもう、ただのプレイヤーじゃない。

この世界の“共同設計者”だ」

ユナは頭を抱えた。

「む、むりむりむり……!

そんな大役、私にできるわけ……!」

海斗は肩を震わせた。

「……ユナ、落ち着け。

そんなに慌てると……可愛いだけだ」

「か、かわ……っ!?

そんなこと言って誤魔化さないで!」

「誤魔化してない。

君が初心者なのはわかってる。

だからこそ、俺が全部フォローする」

海斗は一歩近づいた。

「ユナは“感じたまま”言えばいい。

それが、この世界の未来になる」


ユナは深呼吸した。

「……じゃあ……

この安全領域……もっと広くしてほしい。

私だけじゃなくて、他のプレイヤーも安心できるように」

海斗の目がわずかに見開かれた。

「……ユナ……」

「私だけが特別なのは……ちょっと、落ち着かないから……

みんなが安心できる場所があったら……いいなって」

海斗はゆっくりと頷いた。

「……わかった。

それがユナの“最初の仕様変更”だな」

その瞬間、

光のドームがふわりと広がり、

街の奥へと伸びていく。

安全領域は、

ユナの願いに応えるように拡張されていった。

ユナは息を呑んだ。

「……本当に……変わった……」

海斗は静かに微笑んだ。

「ユナの言葉が、この世界の仕様だ。

これからは……君と一緒に作っていく」

ユナは胸に手を当てた。

「……うん。

私、やってみる。

海斗さんと一緒に……この世界を作る」

光の中で、

二人の影がゆっくりと重なった。


安全領域の光がゆっくりと脈打つ中、

海斗はユナの前に立ち、手をかざした。

すると、ユナの視界に小さなウィンドウが現れた。

《簡易設計ツール:Co-Edit Lite》

《共同設計者専用モジュール》

《使用権限:ユナ》

「……これ、なに……?」

ユナが目を丸くすると、

海斗は少し照れたように笑った。

「ユナ専用の開発ツールだ。

と言っても、難しいコードは全部俺がやる。

ユナは“感じたまま”を形にするだけでいい」

「感じたまま……?」

「そう。

このツールは、ユナの感情や希望を“仕様”として翻訳する。

ユナが『こうしたい』と思えば、それが世界の提案になる」

ユナはウィンドウをそっと触った。

「……なんか……魔法のノートみたい」

海斗は肩を震わせた。

「ふっ……ユナの例えはいつも可愛いな」

「か、かわ……っ!?

もう、そういうの言わないでよ……!」

「言うさ。

ユナが共同設計者になったんだから、遠慮する理由がない」

ユナの胸が熱くなる。


海斗が一歩近づき、

ユナの手元のウィンドウを覗き込む。

「試しに……何か一つ、書いてみてくれ」

「書くって……どうやって?」

「言葉でいい。

ユナの言葉は、このツールが全部理解する」

ユナは少し考えてから、

小さく呟くように入力した。

「“この世界に、安心できる休憩所がほしい”」

その瞬間、

ウィンドウが淡く光り、

安全領域の奥に新しい光の柱が立ち上がった。

「……え……?」

光が形を変え、

小さなカフェのような建物が現れる。

木の扉、柔らかな灯り、温かい空気。

ユナは息を呑んだ。

「……本当に……できた……?」

海斗は静かに頷いた。

「ユナの“願い”が、世界の仕様になった。

これが……共同設計者の力だ」

ユナは胸に手を当てた。

「……すごい……

私、本当に……作ってるんだ……」

「そうだよ、ユナ。

君はもう、ただのプレイヤーじゃない」

海斗の声は、

優しくて、誇らしげで、どこか嬉しそうだった。


ユナが新しい休憩所を見つめていると、

海斗がそっと隣に立った。

「ユナ。

俺は……ずっと、君を守る側だった。

でも……これからは違う」

ユナは海斗を見上げた。

「……違うって?」

「君と同じ側に立ちたい。

一緒に、この世界を作りたい。

君の感じること、望むこと……全部、聞かせてほしい」

ユナの胸がじんわりと温かくなる。

「……海斗さん……」

「ユナがいてくれるなら、

俺はどんな世界でも作れる」

ユナは少し照れながら笑った。

「……じゃあ……

これからも、いっぱい言うね。

“こうしたい”って」

海斗は静かに頷いた。

「全部、叶えるよ」


休憩所の扉を開けると、

温かい空気がふわりと流れ出した。

ユナは小さく呟いた。

「……私、この世界……好きだな」

海斗はその言葉を聞いて、

ほんの少しだけ目を伏せた。

「……その言葉だけで、

この世界はもっと良くなる」

ユナは振り返り、海斗に微笑んだ。

「じゃあ……次は何を作ろうか?」

海斗は静かに笑った。

「ユナが決めていい。

ここは……君の世界なんだから」


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