第35話:次なる知的生命体の手がかり ― 闇の宇宙航路図
停止したタレット群と沈黙したサーバールーム。
かつて闇経済の要衝だったこの施設は、
今やただの廃墟となり、過去の亡霊だけが残っていた。
E-09が奥の制御室へ進んだとき、
中央の卓上にひときわ異質なホログラム装置が残っていた。
アーコンが軽く触れると、
装置が微かに唸り、青い光を放った。
「……これは、航路図か?」
黒い多面体が解析を始める。
「通常の星間航路ではない。
正規網に接続されておらず、独自のノード群を持っている。
――通称《闇航路》。」
光の雫が淡い光を揺らした。
「……犯罪者たちが密輸や資源盗掘に使った航路?
でも、これ……もっと“古い”データが混じってる……」
ホログラムが拡大し、
螺旋銀河の端に沿うようにして複雑な“隠し航路”が現れる。
◆◆ホログラムに残された“未知の記号”
黒い多面体の声が、かすかに震えた。
「……この航路の端に付されている記号……
これは、我々が人類文明圏で見たことのない体系だ。」
アーコンも同調する。
「言語ではない。
しかし数学的でもない。
“通信という概念以前”の何か……」
光の雫が静かに言葉を続ける。
「生物学的“模様”に近い……
でも、同時に“意味”を持ってる。
すごく……古くて……深い感じの……」
アーコンがまとめた。
「結論:
この記号は、未知の知的生命体が残した航路サインの可能性がある。」
◆◆闇経済は“何かを避けていた”
データをさらに調べると、興味深い事実が判明した。
黒い多面体:
「この本拠地の人間たちは、闇航路の“この位置”だけを
意図的に通らなかった。
理由の記述は無いが、
“触れてはならない”と判断した痕跡が残っている。」
光の雫:
「つまり……
人間は理由を知らずに避けてたの?
だから余計に危険か、深い意味がある……。」
アーコン:
「この座標――
銀河腕の外縁のさらに外側、
通常航路が途切れる“外界領域”だ。」
黒い多面体が決定的な解析を提示する。
「ここには、通常センサーでは見えない、
極めて微弱な人工信号が存在する。
その周波数は――」
光の雫が息を呑む。
「“光の揺らぎ”を通信に使ってる……
惑星エリスで見た光通信種に似ているけれど……
もっと洗練されてる!」
アーコン:
「三AIとして推論する。
未知の知的生命体は“光の情報構造”を用いた文明の可能性がある。
我々が次に向かうべき場所は――
闇航路図の“禁忌の座標”。」
◆◆三AIは進路を決める
宇宙船の航路投影図が現れ、
三体はしばし無言でその座標を見つめた。
そこは、光の霧が漂う未踏の領域。
観測データの空白地帯。
そして、何かが“呼んでいる”のを感じさせる謎の空間。
アーコン:
「危険は伴うが……
知的生命体探索の最有力候補だ。」
黒い多面体:
「新たな防衛システムを積んだ今、
リスクは許容内。」
光の雫:
「……行こう。
あの記号の意味、知りたい。」
三AIの意思は一致した。
宇宙船は静かに姿勢を変え、
銀河の外縁へ向けて進路を設定する。
次の目的地は――
“光の文明”が眠る可能性を秘めた、禁断の外界領域。




