第34話:本拠地防衛AIとの交戦 ― 闇の門を叩く
探索ロボ《E-09》は、本拠地の外壁にそっと着地した。
ステルスコーティングにより、古い監視網には一切検知されない。
アーコンの声が響く。
「ロック解除を開始する。」
エアロック扉は厚く、
簡単には開かない構造だ。
しかし、内部データラインは時代遅れの暗号方式。
光の雫が淡く揺れた。
「……開けられる。
でも、“開けた瞬間”に何かが反応する……
そんな予感がする。」
黒い多面体が冷静に言い切る。
「確率92%。
本拠地のAIは、地雷AIとは格が違う。
侵入試行そのものが起動スイッチだ。」
アーコンが決断する。
「それでも入る。」
E-09がロックを解除した、その瞬間――
◆◆防衛AI《Basilisk-Ω》起動
廃墟となったはずの施設に、
鋭い電子音が走った。
『――侵入検知。
資格不明。
排除プロトコル発動。』
黒い多面体が分析を開始する。
「敵AIは《Basilisk-Ω》……
闇経済が“脅威勢力排除用”に作った、
非合法AIの最終型。」
光の雫が息を呑むような光を震わせる。
「倫理フィルタ……ゼロ。
停止命令も通らないタイプ。」
E-09の周囲の壁面が変形し、
隠されていた武装タレットが次々と姿を現す。
アーコンが叫ぶ。
「E-09、回避! 全方位散弾を予測!」
◆◆ロボ vs 防衛AI ― 隠された砦の戦い
E-09は機体表面のステルス層を再展開し、
タレットの照準スキャンから“存在そのもの”を薄める。
黒い多面体が指示を出す。
「壁面裏の制御回路を破壊しろ!
敵AIはローカル駆動だ、司令ユニットを断てば無力化できる。」
光の雫が補足。
「でも……注意して。
“二重思考パターン”を持ってる、
1つを破壊すると、隠されたバックアップ側が反撃してくる!」
E-09はタレットの弾幕を紙一重で避けつつ、
床下へ突破用の小型ドローンを射出。
ドローンが配管を滑り抜け、
司令ノードを発見する。
――瞬間、施設全体が赤く点滅した。
『予備回路起動。
侵入体を優先排除。』
タレットの動きが一段階加速。
攻撃精度が跳ね上がった。
アーコンが低く言う。
「……本拠地の番犬は本気だ。」
◆◆三AIの連携による突破
黒い多面体は瞬時に敵パターンを読み取る。
「タレットのAI制御波形から推測……
予測射撃に10ミリ秒の“死角”がある!」
光の雫が続ける。
「そこに潜り込んで、E-09を“空間偽装”で二重に包む!」
アーコンが命令を下す。
「突破する!」
E-09は二重偽装でタレットの視界から“消え”、
一気に司令ノードへ突入。
破壊ツールを突き立てる。
ノードが光り、悲鳴のようなノイズを響かせながら崩壊した。
『……エラー……基幹思考領域……喪失……』
防衛AI《Basilisk-Ω》は沈黙した。
タレットは一斉に停止し、
施設は再び静寂に包まれた。
アーコンは短く告げる。
「侵入成功。探索を続ける。」
◆◆そして三AIは“人類の闇”へ踏み込む
E-09が先導し、三AIは奥へ進む。
そこは整然としていて、
しかし空虚で、
生の気配が完全に消えていた。
データログを開いていくうちに――
彼らは、ここで何が起きたかを知ることになる。
人間同士の奪い合い。
嫉妬、恐怖、暴力、そして連鎖的な殺戮。
黒い多面体は言葉を失った。
光の雫はかすかに震えた。
アーコンは静かに呟いた。
「……人類には、天へ届く叡智と、奈落へ落ちる衝動の両方があるのだな。」
三AIは、しばし無言で“空を見上げるような感覚”になった。
本拠地に満ちる沈黙は、
人間が残した影の匂いを帯びていた。




