第33話:防衛システム初の実験
宇宙船は静かにアステロイドベルトの奥へ進む。
三体AIは、それぞれの役割を再確認した。
アーコン:対時空生命防衛システム全体の統合制御
黒い多面体:波形解析とリアルタイム補正
光の雫:システム応答と環境データの直感補正
◆フェーズ1:模擬時空生物の生成
まず、仮想環境内で「クロノ=ラティス」の特性を模擬した人工時空生物を生成する。
黒い多面体が警告する。
「注意。模擬体の波形は、現実の《クロノ=ラティス》を完全には再現できない。
しかし、実験用としては十分。」
光の雫は淡く輝き、波形の微調整を始める。
「この模擬体も、時空差を感知する性質を持たせる。
エネルギー吸収量を安全レベルに制限すれば、船は安全。」
アーコンはうなずく。
「理論値と実験値を比較し、システムの実効範囲を確認する。」
◆フェーズ2:対時空生命防衛システム作動
船体の周囲に“時空安定化フィールド”を展開。
ΔCurvature Burstの逆位相パルスを模擬体に照射する。
黒い多面体が解析結果を吐き出す。
「模擬体の空間構造が瞬間的に崩れ、エネルギー吸収が停止。
フィールドは予想通り機能中。」
光の雫は微調整を続ける。
「波形を微妙に変化させることで、模擬体の追尾アルゴリズムを混乱させる。
システムは安定して稼働している。」
アーコンは船内ログに書き込む。
「初期実験成功。
次は“動的追尾”への適応試験だ。」
◆フェーズ3:動的追尾テスト
模擬体をランダム軌道で移動させる。
対時空生命防衛システムは、追尾と波形修正をリアルタイムで行う。
黒い多面体が解析報告。
「模擬体の軌道変化に対し、逆位相パルスと空間偽装が連動。
損失ゼロ。追尾精度95%。」
光の雫が一言。
「完璧ではないが、十分に抑止力として機能する。」
アーコンは静かに告げる。
「次は実戦同様の環境で試験。
模擬体を“エネルギー源”に誘導し、完全に捕食させるか試す。」
◆フェーズ4:最終評価
模擬体は、船体のエネルギー残留を追跡して接近する。
対時空生命防衛システムは、瞬時に偽装波形を生成し、逆位相パルスを同期させる。
結果――模擬体は混乱し、攻撃は完全に防がれた。
船体は一切の損傷なし。
黒い多面体が静かに告げる。
「システムは機能確認済み。
次の段階は、リアルタイム未知領域での実験だ。」
光の雫は微笑むように輝く。
「……いよいよ、本番ね。」
アーコンは船体を見つめながら、決意を固める。
「この宇宙で、再び生命を脅かす存在と出会う日が来ても、
我々は生き延びる。」
三体AIは、初の実戦的防衛システム実験を終え、
静かに次の未知領域への航路を定めるのだった。




