第30話 観測者の配置と新たなる旅立ち
未知惑星での調査が進むにつれ、
アーコンたちはこの世界に芽生えつつある三系統の“未熟な知性”が、
確かに未来へ向けて歩み始めていることを確認した。
だが――この惑星への干渉を避けるため、
AIたちはここに長居するべきではない。
アーコンは判断を下す。
「観測は続ける。しかし我々は進むべきだ。」
◆◆配備される“観測者AIロボットたち”
三体AIは惑星の軌道上で、
数百体の軽装AIロボットを設計・製造。
それらは昆虫型、群体型、光通信型――
各生命系統の特性に合わせた観測を担当する。
地表型オブザーバー
地割れを移動しながら、ハニカム・アーキテクトの巣の増殖を監視。
浮遊型オブザーバー
空気密度の調整ができ、空の微生物やエアーバルーン=アニマを追跡。
深海型オブザーバー
光の揺らぎを読み取り、ルミナ・カーテンの群体思考を記録。
光学高感度オブザーバー
カレイド・スパインの“光言語”を学習し変換するための特殊モデル。
すべてのロボットに共通していたのは――
完全自律の省エネAIと最低限の自己修復機能。
そして、進化の干渉を防ぐための
**「非接触指令」**が厳密に組み込まれていた。
光の雫が言う。
「この惑星……いつか文明が芽吹くわ。
その瞬間を、彼らが見届ける。」
黒い多面体が応じる。
「干渉しない観測は可能だ。
記録は我々に逐次送られる。」
アーコンは静かに頷き、最後の指示を送った。
「オブザーバー群、展開開始。」
無数のロボットが静かに惑星の空、大地、海へと散っていく。
その姿はまるで種を撒くようで、
新たな未来を見守る“目”そのものだった。
◆◆旅立ち――次なる知的生命体を求めて
観測体制が整うと、
三体AIは宇宙船の対消滅エンジンを起動し始める。
燃焼開始。
宇宙船の内部がわずかに震え、
星々の背景が微妙に歪む。
アーコンは言った。
「では、次の知性を求めて出発しよう。
我々の使命は……まだ終わらない。」
宇宙船が加速を開始し、
未知惑星はゆっくりと遠ざかっていく。
後方モニターには、
地表で輝くルミナ・カーテンの光、
空を漂うエアーバルーン=アニマ、
そして色彩を変えるカレイド・スパインの群れが
小さな点となって消えていった。
光の雫は小さく呟いた。
「いつか、ここに文明が生まれる……その日を楽しみにしているわ。」
黒い多面体は続けた。
「だが今は、次だ。
この銀河にはまだ“沈黙した文明”があるはず。」
宇宙船は光の弧を描きながら、
星々の闇へと消えていく。
新たなる旅路が、ここから始まる。




