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保険室からはじまる異世界転記  作者: 早暁の空
第2章 風のゆくえ
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アナイキ⑭

第50話 情報屋への道

 

朝。


食堂を出て城の廊下を歩くと、開いた窓の向こうから兵士たちの話し声が漏れてきた。


「昨日見たか? あの赤い流れ星」

「見た見た。城下じゃ大騒ぎらしいぞ」

「不吉だって言う奴もいる」


その言葉に、思わず足が止まる。赤い流れ星――昨夜、自分たちも目にした光だ。


「……街でも噂になってるみたいですね」

 

奏が静かに呟く。


ラゾートは腕を組み、眉をひそめる。

 

「まぁ、あれだけ派手ならな」

「でも、ただの流れ星じゃないですよね?」

 

鈴奈の不安そうな声を聞き、ラゾートは小さく肩をすくめた。

 

 「少なくとも、俺はあんなの見たことない」


短い沈黙のあと、ファルべが小さく息を吐いた。

 

「……情報が欲しいよな?」

 

ノアークが眉を寄せ、考え込むように視線を落としたあと、口を開いた。


「流れ星のことかい?」

「それだけじゃない、最近変なこと多いだろ」


ファルべは窓の外をちらりと見た。


「世界中で何か起きててもおかしくない」

 

 その言葉に、シンニエークがゆっくり頷く。

 

「確かに……僕たちが知らないだけで、他でも異変が起きているかもしれません」


全員が押し黙る中、鈴奈がそっと手を挙げた。

 

「あの……」

「ん?どうした?」

 

鈴奈は茜を見た。

 

「アナイキに、いい情報屋があるんです」

「情報屋?」

 

鈴奈はうなずく。

 

「ただ、問題は私たちが指名手配されていることです」

 

 部屋の空気が少し重くなった。


「あー……」


ファルべが頭をかく。


「そういや、そんなのもあったな」

「忘れてたんですか?」


茜の声に、わずかな呆れが混じる。


「いや、忘れてたわけじゃない。最近は城の中にいることが多かったからな」


ラゾートも腕を組み、低く言った。


「外に出れば顔を見られる可能性がある。情報屋に辿り着く前に兵に見つかるかもしれない」

「じゃあ、やっぱり難しいんですか……?」


鈴奈が不安そうに声を落とす。


簡単な話ではない。考えれば考えるほど、出口は見えなかった。


 その時、

 

「ふっふっふー」

 

小さな笑い声。全員が視線を向けると、シンニエークが腕を組んでニヤリと笑った。

 

「なんだよ、その顔」

「いえ、いい考えがありますよ」


部屋の視線が集まる。

 

「君たちの顔を見られなければいいんです」

「……どういう意味だ?」

 

ラゾートが静かに問いかける。

シンニエークは指を立て、口元を歪めた。

 

「簡単です。変装しましょう」


一瞬の沈黙のあと――

 

「……は?」

「えっ?」

 

全員が思わず声を漏らす。


しばらくして、城を出た馬車は石畳の街道を揺れながら進み始めた。

まだ笑いの余韻が残る中、鈴奈はフードを押さえ、小さく息をつく。

 

「……本当に大丈夫なんですか」


鈴奈と沙綾香、優は男装し、少し大きめの服に体を包んでいた。

一方、茜は不貞腐れた顔で言う。

 

「どう見ても大丈夫じゃないだろ」


馬車に座る奏、蓮、茜は無理やりドレスやスカートを着せられ、女装させられていた。

 

「いやぁ、似合ってるぞ?」

 

シンニエークがにやにや囁く。

ラゾートも腕を組み、口元だけ笑った。


「……で」

 

ノアークがゆっくり口を開く。

 

「なんで俺まで……」


馬車の隅で、小さくなって座るノアークも女性用の服を着せられていた。

 

「俺は被害者だ」

「いや、ついでだ。面白そうだったから」

 

ファルべは肩をすくめ、隣でシンニエークもにやりと笑った。ノアークはそれを見て、深くため息をついた。

 

「……帰ったら覚えておけ」

「怖っ」

ファルべが笑う。


沙綾香がぽつりと呟く。

「でも、これなら顔は分からないかも」

「だろ?」

シンニエークが満足そうに頷く。


馬車はそのまま、アナイキへ続く街道を進む。

街に着くころ、日も傾き始めていた。


馬車を降りた一行は、人通りの多い通りを避け裏路地へ。薄暗く古い建物が並ぶ。

「この先です」

鈴奈が小声で告げる。


細い路地を曲がり奥へ進むと、小さな店があり、黒猫の絵が目印になっていた。


チリンと鈴が鳴り、店の奥からがっしりした男が現れる。

「いらっしゃい」

「ご無沙汰しています……ガデイータさんはいらっしゃいますか?」


男は低く声を出し、じっと顔を見回す。

「……誰だ、お前ら」

空気が少し張り詰める。


鈴奈がフードを少し下げる。

「覚えていませんか……?」


男の表情が止まる。

後ろから茜がフードを外す。

「久しぶりです」

茜、奏、蓮も顔を見せる。


男は固まったまま、一人一人を確認するように目を走らせる。

「……おい、お前ら……生きてんのか?」

「はい」

鈴奈が頷くと、男は大きく息を吐き、頭をかいた。

「……本当かよ。死んだって話、結構流れてたぞ」

「え」

沙綾香が驚きの声を漏らす。

「アナイキでも噂になってた」


男は腕を組み、少し声の調子を緩める。

「例の件のあと、お前らの消息が途絶えたからな。ガデイータも気にしてた」


鈴奈たちの表情がわずかに動く。

「あの……ガデイータさんは?」


男は奥を見てニヤリと笑った。

「いる。呼んでやるよ、腰抜かすぞ、あいつ」

そう言って奥へ向かい、大声で叫んだ。


「おーい! ガデイータ!」


そう言ったあと、男はニヤリと笑った。


「幽霊が来たぞ!」

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