第20話 真実と帰る道
朝露で濡れる芝生を踏みしめ、鈴奈、奏、蓮は目的のテントへ歩いていく。その前で足を止め、3人は互いの顔を確かめるように見合わせた。
「ん。お先にどうぞ」
蓮が、テントの入口を覆う厚布の端を掴んで片側へ押しやった。
「どーも」
「おめーじゃねぇよ!」
身をかがめて中へ入る奏の背中に蓮は低く呟く。
鈴奈は2人の会話にクスリと笑うと奏に続いて中に入った。
テントの中に入ると、話し込んでいたラゾートとロアークが、気配に気づいてふと視線をこちらへ向けた。
「よぉ」
ラゾートはそう言うと片手を上げた。
「おはようございますラゾートさん、ロアークさん」
「おはよう。3人の様子はどうだい?」
心配そうに見つめるロアークに鈴奈は続ける。
「湯島さんと優はだいぶ熱は下がりました。大塚さんは目を覚ましましたが、大事を見てテントで休んでます」
「そっか。それはよかった」
ふっと肩の力が抜けロアークは小さく微笑んだ。
「……で、どうしたんですか?」
奏はそう言うと、ラゾートに視線を向けた。
「お前らにも真実を知る権利があると思ってな」
「なるほど」
短く言い奏は頷く。
「結論から言えば、ルミナスはナルヴァシスの一員で、どうやら傭兵と偽って青年たちを集めて、若返るって思って自分の気に入った青年を殺してその血に浸かってたみたいだな」
ラゾートの言葉に蓮は険しい顔をする。
「ひでぇな……」
「まぁ、たしかドラキュラのモデルになった女性も似たようなことしてた方はいます」
顎に当てていた手を振りながら説明をする奏に鈴奈が顔を顰める。
「だとしても……ね。聞くのと実際に見るのとは違うよ」
「……でだ」
ラゾートは3人の沈黙を破るように口を開いた。
「その中にマヒナ・スヴェートの名前があった」
「ルイさんの……」
鈴奈の零した言葉にラゾートは黙って首を縦に振った。
「なんで、苗字が違うんだ?」
「み……ミョウ……」
首を傾げる蓮にラゾートは目を白黒させる。
「あ、家族の名前の方ですね。たしか、ルイはアルバスって」
鈴奈は曖昧な笑みを浮かべた。
「あぁ。それは兄貴が居なくなって、身寄りがなくなったから父方の家族に引き取られたからだな」
「なるほど、だから違うのね」
ぽつりと零す鈴奈にラゾートは大きく頷く。
「これがこの国で起きた真祖だな。で、お前らはこれからどーすんだ?」
3人は何とも言えない表情を浮かべ視線を向け、鈴奈はすーっとラゾートに視線を向けた。
「そうですね。私たちが来た世界へ戻る方法を……探したいです」
「来た世界?」
眉間に皺を寄せラゾートは鈴奈の言葉を繰り返す。
「来た国……でなく?」
ロアークの問に鈴奈は小さく首を振った。
「……お前らは一体何もんなんだ?」
「何者って言われてもなぁ…僕たちはただの高校生ですよ」
奏は困ったような顔をする。
「コウコ…」
戸惑った顔をするラゾートに鈴奈は苦笑いをする。
「私たちの国にある…んー色々と学ぶ場所です」
「ほぉなるほどな。お前らはそこの生徒なのか。…で、なんでそんな学舎の生徒がこんなとこにそもそもいたんだ?」
鈴奈は少し考えると顔を上げると、少し困ったように笑みを浮かべる。
「ラゾートさん、ロアークも…この世界とは違う世界があると言ったら…信じますか?」
「ん?それは違う国とかでなく?」
「はい。こことは全く違う世界です」
ハッキリと頷く鈴奈に驚いた顔をし、顎に手を当て口を閉じた。
「お前らがその違う世界?から来たという証拠は?」
「証拠と言われても……」
そう言うと鈴奈は瓦礫と化した城を見上げる。
「全部あの瓦礫の下です」
「だよなぁ……」
困ったようにラゾートは頭に手を当てた。
「ちなみにどんなところなんだい」
「そうですね……」
顎に手を当て目を伏せると、しばらく黙り込むと顔を上げる。
「魔法ではなく化学や遠くの人と話たり、文字を送るような機械や人を乗せて運ぶ鉄の乗り物など機械が発達した世界です」
「それまたモルスくんが喜びそうな世界だね。そうか、だから君たちは魔法に馴染みがないんだね」
「そうですね」
ゆっくり首を振ると話を続けた。
「僕らの世界では想像の中でしか存在しない物でしたから」
「なるほどな。だから、あんな状態になるまで魔法を使ってたのか」
ラゾートは優と沙綾香が寝ているテントの方を見る。
「それに、こっちの知識がないのも何となくわかるが……にわかに信じ難い話だな」
ラゾートは頭に手を置いた。
「だとしても、帰る方法を探す手伝いはするさ」
3人は唖然とした表情をしてラゾートを見た。
「いいんですか?」
「んーまぁ、納得というか理解できたわけじゃないだけで、別にお前らを疑ってはいないよ」
パァーっと鈴奈の表情が明るくなる横で
奏と蓮はホッとした表情を浮かべた。
「とりあえず、お前たちがいた世界に帰る方法がどうやったらわかるかだよな」
ロアークは顎に手を当て下げていた顔を上げる。
「…聖アルティナイルの大図書なら何か手がかりがあるかもよ」
「聖アルティナイル?」
繰り返す鈴奈にラゾートは頷く。
「ここから東にいったとこにあるこの国の中で1番大きな街だね。ここからだとラクルという港町から船でいけるかな」
「ありがとうございます。行ってみます」
「まっ、とりあえず残りの体調が安定するまでゆっくりしろ」
「はい」と3人は強く頷いた。




