ザラ ②
第13話 夜中の訪問者
(よかった。チビちゃん預かったお母さんに褒めてもらっちゃった)
優がホクホク顔で歩いていると、遠くにしゃがみこんでいる茜の姿を見つける。
「あ、大塚さん。あっ、可愛い。」
茜の前に座っている白い体に茶色い模様がある子犬に、優は目を細めた。
「どうしたんです、この仔?」
優は茜の横にしゃがみ込み、子犬に手を伸ばした。
「なんかずっと俺のあとをついてくるんだよ」
茜は困った顔をし、頭に手をあてた。
「へぇ。大塚さん優しいもんねぇ」
優は子犬の頭をワシャワシャと撫でる。
「優しくねぇよ」
ポツリと言い、ぷいっと横を向いた茜に優はふふふと笑いをこぼす。
「そのまま連れて行ったらいいじゃないですか。みんな、特に鈴ちゃんとか施設にいた時にこっそり猫の世話してたぐらい動物好きだから、喜びそう」
子犬を撫でる優は視線を感じ茜を見た。
「ん?どうしたんです?」
茜は何か言いたげにするが頭を掻いた。
「いや、なんでもねぇ」
「ん?そうですか?」
そう言い優は首を傾げた。
「あ!いたいた!2人とも、ご飯行くよー」
顔をあげると鈴奈がこちらに手を振っている。
「いま行くー!」
優は立ち上がり鈴奈に手をあげ、振り向くとニッと笑い、茜に手を差し出した。
「行きましょう」
「おう」
茜は片頬をあげ、優の手を取った。
2人は立ち上がり、鈴奈の方へ歩いて行く。その後ろをぴょんぴょんと跳ねるように子犬がついてきた。
全員で夕飯を食べ、お風呂に入り、家に戻ると疲れていたからか、全員あっという間に夢の中に落ちて行った。
ふと、優は胸の苦しさで目が覚めた。
(うっ…何だろ…苦しい……)
体を動かそうにもまるでボンドで貼り付けられたかのように固まり、動かない。
どうしようかと思いながら、目を開けた優は息を飲んだ。
目の前にはオレンジ色に近い茶色の髪をした少女が腹の上にちょこんと座り、優に何か言いたそうにじーっと見つめている。
(なに?!なに?私はあなたのお母さんじゃないよ?!)
そう言いたくても声がまるで取られてしまったかのように出ない。
すると、スーッと少女は優に手をのばした。
(なに?!やめて!来ないで!)
無表情の少女はズリズリと近づいてくると、優の目の前が暗くなった。
「うわぁぁぁぁ!……あれ?」
飛び起きた優は顔についてた物を手に取った。
「っるせぇなぁ。何騒いでんだ?」
茜は眠そうな声で言うと体を起こし優を見た。
「ふわぁ、どうした?」
その声で鈴奈も体を起こし、目を擦りながら優を見た。
「いま、そこに女の子が!」
優は自分の体の上を指さしたが、そこに少女の姿はなかった。
「女の子だぁ?」
「こんな夜中に?」
「ホントだってぇ」
怪訝そうな2人に優は語尾を強めた。
その時
「どうかしましたか?」
そう言い、騒ぎを聞きつけた奏と蓮が部屋に入ってきた。
「優が女の子を見たって」
「女の子?」
奏の言葉に鈴奈が返すと、奏と蓮は顔を見合わせた。
「だとしたら…どっから入ったのでしょう」
奏はそう言い顎の下に手を当て、話を続けた。
「ドアの前には僕と馬場がいたので、誰かが入れば気が付くはずです」
「でも、今私のお腹の上にのってて…あ、ほら、どっかに勝手口があるとか?」
ばっと優は奏を見た。
「一応、来た時に確認したが、入口は1つしかなかったぞ」
蓮は頭に手を当て言った。
「そうだね。大塚さんが拐われた時のことがあったから一応、確認したもんね」
そう言い鈴奈が茜を見ると、茜は少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「……隠し通路とか?」
優の言葉に全員が考え込む。
「一応、女の子がいないか全部の部屋見てみるか」
顔を上げ提案する茜に鈴奈は頷いた。
「そうだね」
「鈴ちゃ―ん。一緒にいてぇー」
「はいはい」
情けない声をあげ腕にしがみつく優に鈴奈は、苦笑いを浮かべ掴まれた手をポンポンと叩いた。
全員で手分けして部屋を見てまわるが少女の姿はない。
「いないね」
「タンスとか開けられるとこ開けて見たけどいないな。っうことは寝ぼけてたんじゃねぇのか?」
そう言い茜はギロッと優を見た。
「そんなわけないよ。ほら、写真も」
「写真?」
そう言い3人が覗き込んだ優の手元には、父親らしき男性と母親らしき女性の前にオレンジに近い茶色い髪の少年がイタズラっぽい笑みを浮かべていた。その横には、兄と同じようにオレンジに近い茶色い髪をした幼い少女が写っていた。
「こいつ…」
優の手からスルッと写真をとった茜が声を上げた。
「ん?どうしたの?」
鈴奈が視線を向ける前で茜はジッと写真を見た。
「やっぱり。俺、この女の子に会った」
「えっ?」
「いつ?!」
優と鈴奈は驚いた顔して茜を見た。
「この村に来た日に、こいつに行くなって言われて服を掴まれたんだよ」
そう言い茜は少女を指さした。
「え、なら実在する子?」
「だとしてもどこから入って、どこ行ったんだ?」
頭に手を当て辺りを見渡す蓮の言葉に全員が黙る。
「まぁ、今はできることないから、明日その子を探して聞いてみよ」
「そうだな。じゃ、寝るか」
茜は伸びをしながら言うと、大きな欠伸をする。
「鈴ちゃん一緒に寝よう」
優は鈴奈の服を掴んだ。
「お前、ビビりすぎだろ」
「ビビるよ!起きたら目の前に女の子がいたんだよ!心臓止まるわ!」
呆れる茜に優はくわぁっと反論した。
「まぁ、たしかに。起きてそれは怖いわ」
優はガバッと鈴奈を見ると「我が同士」と言うように鈴奈の手を掴み
「でしょ?」
勢いよく言う優に鈴奈はタジタジと笑った。
「そうかぁ?」
「そうなの!」
その様子を頭を掻きながら言う茜に優は噛みつく勢いで返した。
そんな会話をしながら全員が各々の寝具に、奏と蓮は入口に戻った。




