同居人
道端での報告会のあと、二人は一緒に帰宅した。
二人が住んでいるのは、路地裏の安いワンルームのアパートだ。
「大福、外では話しかけんなって言ってるだろ」
人型になったアキラは、開口一番、苦情を言った。
目つきの悪さは人になっても変わらない。二重なのに眠そうに見える。
怒鳴りはしない。眠そうなのは目だけではない。気だるげな雰囲気が漂っている。
黒髪の男の子は、ビビりながらも言い返した。
「ごめん。でも、けんかしなくて済んだでしょ?」
「人と一緒にいるとこ見られるとなめられんだよ。話なんか家で出来るだろ」
「アキラ帰ってくるの遅いじゃん。すぐに話したくてさ」
「というか仕事なんかしなくていいって言ってるだろ。俺が適当に稼いでくる金で、今までだって、やってきたんじゃねえか。家で大人しくハムスターやってればいいだろ」
黒髪の男の子こと大福は、ハムスターの獣人だった。ジャンガリアンハムスターだ。
ハムスターでいれば人でいるよりずっと、生きていくのにお金はかからない。
たまに人の姿で日雇い労働をしているアキラの稼ぎで、なんとか今日まで暮らしてきたのだ。
「だってそれじゃあ、人に飼われるのと変わんないよ。アキラには迷惑かけないからいいでしょ」
「……勝手にしろ」
アキラはそう言って、また猫になると家を出て行った。
一緒に帰宅したのは大福を家まで送って、ひとこと言うためだったのだろう。
元々無口だが、こういう大事な話は特に嫌がる。逃げたな、と大福は思った。
獣人は人にまぎれて暮らしている。正体を明かさずに人として暮らすことが多い。
しかし全員が全員そうではない。働くことを嫌って獣の姿のまま過ごす者もいるのだ。
そのなかには、人のペットとして生きていくことを選んだものもいた。
獣人は獣の姿で暮らしていても、ただの動物よりずっと寿命が長い。そのため、ペットとして飼われて続けていると化け物扱いをされてしまう。人に獣人であるとバレないために、時期を見計らって脱走し、獣人の営むペット屋さんで売ってもらうことを繰り返すのだ。二人の両親がそれだった。
獣人は成長速度も、普通の動物よりかなり遅い。ペット家系に生まれた子供は、ペット屋さんが運営している児童養護施設に預けられる。そこでは、ペット以外の選択肢を知らされぬまま育てられる。元々あまり勤勉ではない遺伝子を受け継いだ子供たちが集まっているので、疑問も持たずに受け入れてしまうが、納得のいかないものが、二人だけいた。それがアキラと大福だったのだ。
二人は売りに出される前になんとか脱出し、ホームレスをしていたところを親切なおじさんに助けられ、今の家に住むことができた。
住む家を提供してくれた猫獣人のおじさんは、二人と同じような境遇の獣人を助けようとしている人で、アキラは今でも頻繁に会ってはお世話になっているらしい。