君と並んで
しばらく抱き合って、気持ちが落ち着いてくる。
大福はだんだん残していかなくてはいけないアキラのことが気になって仕方なくなってきた。
「アキラ……恋人、つくったら?」
アキラは大福を抱きしめる力を強めた。
「お前がいるだろ」
アキラからは、まるで駄々をこねる子供のように、絶対離さないぞという気概を感じる。
「……僕のことは忘れて、幸せになりなね」
大福は穏やかな気持ちで、アキラの頭を撫でまわした。
「怒るぞ」
アキラは、大福の背中に回していた腕をほどいた。そのまま両手を垂直にあげ、大福の肩をがっしりと掴み、上から押さえつけてきた。
「うわあ」
大福はアキラの頭から手をはなし、押されるがままに背中を丸めて頭を下げる。
バランスを崩してアキラにすがりつく。
「いたっ」
首元が熱い息と、痛みに襲われた。アキラに噛まれたと分かったのは、舐められてからだった。
「なにすんのさ」
大福はアキラの肩をグーで殴った。
「お前が俺のこと、馬鹿にするからだろ。勝手に決めつけてんじゃねえよ」
さっきまでの優しい顔はすでに消え、いつもの眠そうな顔に戻っている。
大福はべそをかきながら、傷を確認しようと首を回した。しかし、よく見えない。
「そんな強く噛んでねえよ。すぐ治んだろ」
今まで無害な肉食獣として、安心して一緒にいたが、認識を改めるべきだろうか。
大福がアキラをにらみつけると、アキラは突然真面目な顔して言った。
「俺もちゃんとした仕事探すわ」
「え?」
「大福と並んで、歩きたい」
先日のペット扱いがよっぽど応えたのだろうか。
アキラの顔をよくよく見ると、耳がほんのり赤くなっていた。何か大事なことを言ってくれたようだ。大福は、そうだね、と同意して、小指を立てて差し出した。アキラはおずおずと小指を絡ませたのだった。
大福が作品を納品している雑貨屋さんでは、ハムスターの商品が人気だ。
大福の編みぐるみの他にも、様々な商品が取り揃えられており、中にはとってもリアルなぬぐるみもあった。
面接時に店内の商品を割引価格で買えると説明を受けていた大福は、そのリアルなハムスターのぬいぐるみを買って帰ることにした。
大福とそっくりのジャンガリアンハムスターのぬいぐるみだ。
寝床に置いておくと、ハムスターの友達ができたようでうれしかった。
ある日、ソファーに座り、ぬいぐるみも膝に置いて、編み物をした。
夕方になって、ソファーに使っていたものを置いたまま、買い物に出かけた。
お店で何を買うか迷って、いつもより遅くに帰宅すると、アキラが猫の姿でソファーで寝ていた。
編み物セットは綺麗に片付けられていた。アキラを起こさないよう静かに近づくと、その懐にハムスターのぬいぐるみがあるのが見えた。ちょっと、居場所を取られてしまったようでムカムカする。
大福がそのまま観察していると、アキラが寝返りを打つようにぐるんと動いた。
ぬいぐるみが猫の下敷きになって見えなくなった、と思った瞬間、アキラがぴょーんと飛び跳ねた。
猫のお腹は丸く盛り上がり、しっぽは膨らんで垂れ下がっている。
めちゃくちゃ驚いた顔で、ぬいぐるみを見たあと、大福の方を向いた。
大福はあっけにとられたまま、猫と見つめ合う。
何が起きたのか理解したアキラが人型になり、何やら言い訳を始めたが、大福は笑いをこらえることができなかった。
三人称で書こうとして、しくじりました。
今は文字に起こせただけで満足です。いつか書きなおしたいです。
読んでいただき、ありがとうございました。




