一章8話 進化の裏の残酷
ヴェアは、ボロボロになって倒れたレインを家のベットまで運び、治癒魔法を使いレインの負っていた怪我を、全て綺麗さっぱり治し部屋を後にした。次の日、レインは目を覚ますと自分の身体に、怪我や痛みが全くないことに気づき、日々の修行で身体が丈夫になり、あれ程の攻撃を打ち込んでも大丈夫なほどに成長したのか、とも思ったが流石にそんな事はないなとなり、きっとヴェアが何かしてくれたのだろうと気づく。
色々と考えていると、部屋の外からとてもいい匂いが漂ってくる。レインの腹から大きな音が鳴り、そう言えば昨日の夜は何も食べていないことに気づき、早足で台所へ向かった。
「おはようヴェア、お腹すいたー」
「ん、おはよう。もうできるから、先に顔洗ってしまいな」
「はーい」
レインが顔を洗い戻ってくると、食卓にはたくさんの料理が並んでいた。食卓につくと、昨晩食べ損ねた分を取り戻すようにひたすら口に頬張った。
「そんなに急いで食べなくても、食べ物は逃げたりしないよまったく」
あまりに必死に食べる姿を見て微笑ましく思っていたヴェアだったが、少し真剣顔つきになり話を続けた。
「昨日の最後の一撃、ああ言う戦い方は実戦ではあまりお勧めしないね。どうせせめて一撃だけでも、って思ったんだろうけど、私との修行の時だけにしなよ。まぁ滅多にないとは思うけど、もし実戦で私ぐらいの強さのやつにあったら迷わず全力で逃げるんだよ。間違っても一矢報いてやる、なんて考えるんじゃないよ」
突然真剣な顔で話すヴェアに驚き、思わず食事の手を止め口に食べ物を含んだまま真剣に聞き入ってしまった。
「はい、気をつけます」
「うん、わかればよろしい。でもあの一撃、攻撃自体はなかなか悪くなかったよ、成長してるね。さぁ、冷めないうちに食べてしまいな」
「うん」
食事を終え少しして、すぐに修行が始まった。今日のヴェアとの戦闘は普段よりも優しく感じた。普段通りであれば五、六回気絶しているはずだが、今日は二回しか気絶していないのだ。もしかしたら、ヴェアが僕の昨日の怪我を気遣って手を抜いたのではないか、そう思いヴェアに尋ねてみることにした。
「ヴェア、今日の戦闘ってもしかして、僕に気を遣って手加減してくれたの」
「そんなわけないでしょ、レインが強くなってきてる証拠だよ」
「へへ、もしかしたらもうすぐヴェアに勝てちゃったりして」
「調子に乗らない」
調子に乗っていたレインの頭をこづくヴェアの顔は少し嬉しそうだった。
それから月日は流れレインは7歳になった。あれから、ほぼ毎日ヴェアとの戦闘の日々が続いた。特に新しい事は教わらなかったが、ただ一つだけ5歳になったときに、魔法を使うのに必要な知識だけは頭に入れときな、っと言い魔導書を一冊だけ渡された。その日から毎日のように何度か読んではいるが、まだ一度も魔法は使った事はなかった。ヴェアに魔法の使用を禁止されたからである。それについてレインは疑問に思っていたが、魔導書を読んでいるとそのことについて最初のページに目立つように書かれていた。
8歳に満たないものが魔法を行使しようとすると、脳の処理が追いつかず最悪死に至ると記載されていた。次のページには、実際に8歳に満たないものが魔法を行使した時の症状が絵と文章で記載されていた。
3歳から5歳の子供は、症状がほとんど同じだったらしく、頭部の血管が数箇所切れ、首から上の穴という穴から、少し黒みがかった赤い血を吹き出し、魔法発動まで至らず例外なく絶命。
6歳の子供は、約一割ほどではあるが魔法を発動させることができるものもいた。しかし、発動の後結局絶命。その際の出血量は少量だった。それ以外は3歳から5歳の子供とほぼ同じ症状であった。
7歳の子供は、約四割弱ほどが魔法の発動に成功。そのうちのほとんどは、出血こそ少量あったもの生存し、そこから何も問題なく生活を送っていたと書かれていた。
その本に書かれていた子供達の死体の絵が、とても生々しく怖くなったレインは8歳に成るまで決して魔法は使わないと誓ったのであった。
「あと数ヶ月で8歳か、もう少しで安全に魔法行使ができるな。魔法も使えたらヴェアに勝てるかな。楽しみだなー」
そんなことを考えてる僕だったが、僕の望みが叶う事はなかった。この時は、あんなことが起こるとは誰も予想していなかった。
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