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一章6話 未知を知る

 あれから魔力操作も覚えたレインは、本格的に実践訓練としてひたすらヴェアと戦っていた。

 ヴェアは初め、レインの魔力路の数が多いことから、もしかしたら自分よりも強くなるのではないかと思っていたが、過度な期待をしてしまったと今では思っているようだった。

 レインの魔力路は確かに数が多く出力こそすごいものだったが、肝心の魔力核の最大容量がそこまで多くないため、全力で魔力を使用すると3秒で空になってしまうということが、何度か戦っているうちにわかった。そのためヴェアはレインに教える戦い方として、魔力の使用量を抑えた戦い方と、魔力を使わない戦い方を教えていた。


「はぁはぁ、先生、この修行方法どうにかなりませんか」


「なんだい、何が不満だっていうのさ、これが一番効率的でいいじゃないか」


「だって、アレスくんのとこの訓練はもっとこう、言葉で説明したりしてました」


 アレス・ラトル、10歳のカムの息子であり、綺麗な白髪がとても印象的で優秀な魔法戦士として育てられている。歳の離れたレインを弟のように可愛がってくれていて、カムに似てとても優しい性格をしている。


「よそはよそ、うちはうち。それに、全部教えてもらって覚えるより、自分で見て覚えるってことをできるようになっておくと便利だから、うちではひたすら私と戦闘なんだよ」

ヴェアが丁寧に説明をするが、それを聞いてもレインは不満そうな顔のままだった。


「とりあえず、今日は少し早いけどおしまいにしようか。少し出てくるから、風呂掃除しておいておくれ」

そういうと、ヴェアはどこか行ってしまった。



 ヴェアがいなくなったのを確認したレインは、早足で家に戻りヴェアに絶対に入るなと言われている部屋に入り、そこにあった赤い表紙の本を持って自室に向かった。

 その本には、千年以上前からの出来事や、魔王アラルについてのこと、地図に載っていない地のことが書かれていた。特に歴史や魔王アラルについて事細かに書かれていた。アラルの両親の名前や性格好きだった食べ物についてまで、この本を書いたのはきっとアラルと親しい関係だったのだろう。

 地図に載っていない地については、内容こそそこまで細かく記載されていなかったがとても興味がそそられるものだった。地図に載っていない地にもさまざまな種族の者が生活していて、過酷な環境でそこで育った者たちは皆高い戦闘力を持つ。その上戦闘力も高いが、戦闘で使用する武具などがとても面白かったと記載されていた。

 さらに、面白そうなことが色々と書かれていた。魔法を教えてくれる施設や、武器を扱った戦闘を教えてくれる施設、商いを楽しむ者、武具を作ることに一生を捧げようとする者、そして魔王アラルを倒すために集まり力を蓄える者たちまでいた。


(いつか僕も行ってみたいなー)



 すっかり本を読むことに夢中になっていたレインは、外が暗くなってきたことに気づき、お風呂の掃除をしていないことを思い出し急いで本を隠し、お風呂の掃除に取り掛かるので合った。


「ただいま、レインお風呂の掃除は終わったかい」



「お帰り、お腹すいたー、今日のご飯はなんですか」


 ヴェアは、質問の答えが返ってこなかったことを不思議に思ったが、すぐに何かを察した。


「今日は野菜スープだよ。ご飯できるまで時間あるから、先に風呂の掃除してそのまま入ってしまいな」


「は、はーい」


 レインは、誤魔化すように笑いながら、そそくさとお風呂へと向かった。



 レインがお風呂を済ませ、少しして食事ができたので二人で食事をとっていた。レインが一心不乱にスープを食べていると、ヴェアが食事の手を止めることなく普段と変わらぬ優しい口調で話しかけた。


「レイン、あの部屋に入ったかい」


 聞かれたレインは、思わず食事の手を止めてしまった。冷や汗が流れ、ゴクリと唾を飲む音が聞こえる。

 レインの反応を見てやはりかと、思わずため息をつき少し険しい表情に変わってしまった。


「何をしたんだい、少ししか怒らないから正直に話してごらん」


「ごめんなさい、赤い表紙の本を持ち出して読んでました」


 ヴェアは、目を丸くして顔を少し赤くして顔を伏せてしまった。

 レインがどうしたのだろうと、少し不思議そうにヴェアを見ていると、ヴェアが顔を上げその顔は眉間に皺が寄っていて、少し怒っているようにも見えた。


「よりに寄ってあの本を読んだのかい…」


「ごめんなさい…」


「あの本は、面白かったかい」


 予想外の言葉に少し驚きと戸惑いを感じたが、すぐに明るい表情で正直に答えた。


「うん、すごく面白いです。地図の外にあんな世界が広がってるなんてびっくりしました」


「そうかい、それは良かったよ」


 レインの楽しそうな表情を見て、ヴェアの表情がいつもより少し嬉しそうに見えた。


「さあ、さっさと食べて早く寝なさいよ。明日もビシバシいくからね」


「はーい」


 その日はいつもよりも、少し明るい食事の時間だった気がする。

もしよろしければ、感想・レビュー・いいねなどしていただければ幸いです。

今後のモチベーションや参考となりますので気軽によろしくお願いいたします。

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