一章2話 残忍で美しき…
ヴェアは、途中襲い来る魔物を難なく撃退しながら支配区画に向かっていた。
(どうなってんだいこりゃ、襲ってくる魔物が多すぎる、それにいつもより格段に強くなってる)
疑問に思いながらも支配区画に進むヴェアであったが、前方に魔物ではない何者かの気配を感じ取り素早く身を隠し、気配のする方に視線をやりスキル【遠方視認】を使い確認する。
(ん?なんでこんなとこに魔族がいるんだい、ここはまだ地図の端の方、魔族が来る様な場所じゃないはず…)
ヴェアがどうするか考えながら魔族の動きに注視していると、一人の魔族の動きがぴたりと止まった。
「おいどうした、早く行くぞ」
すると、何かに気づいた三つ目の魔族が指を口に当て、
「しっ、静かに…。誰かに見ら…れ…」
三つ目の魔族が仲間に何かを伝える前に、自分の視界が逆さまになり自分の足が目の前にあることに気づく。
「なんだよ途中で黙ったりして」
もう一人の魔族が振り返ると、そこには首のない自分の仲間を目にし、顔が青ざめひどく動揺する。
「なっ、なに、え、どう、え」
仲間の死に激しく動揺していると、突然目線が低くなり地面に手をつく。あたりを数秒見回した後、足の感覚がないことに気づき元々足があったところを見ると、足がないことに気づき思い出したかのように痛みが襲い出す。
「っあー、オレのアシー」
足が無くなり絶叫していると、後ろに誰かいることに気づき振り返る。そこには、手を血で真っ赤に染めたヴェアが立って魔族を見下ろしていた。
「だっ、誰だお前。こんなことしてタダで済むと…」
魔族が何か言い終わるのを待たずに、ヴェアが魔族の頭を鷲掴みにし、魔法で手に炎を纏わせ素早く魔族の腕を焼き切る。声にならない程の激痛が走り、同時に目の前の耳長族への感情が、怒りや憎悪から圧倒的な恐怖へと転じた。
「おい魔族、私の目をよく見ろ」
「ひっ、ひー」
「これからいくつか質問する。嘘をついたら死なないようにゆっくりと腹を抉る、誤魔化したら羽をゆっくりとむしる、関係のないことを言ったら片方の肺に穴を開ける、騒いだり妙なことをしたら皮を剥ぐ、わかったらその厠みたいな口を閉じな」
そう言われ魔族は急いで口を閉じる。
「よしいい子だ、じゃあ一つ目、この辺に他に仲間はいるか」
「いない、この辺に来たのは俺たち二人だけだ」
それを聞くとヴェアのスキル【虚言洞観】が今の発言を嘘であると察知する。それと同時にヴェアが魔族の腹をゆっくりと抉り始めた。
「やっ、やめっ、アーー、やめでぐれー」
「言ったよな、嘘は腹を抉ると。もう一度聞く、この辺に他に仲間はいるか」
「い、いまず、ごごがらずごじいっだどごにずうにんいばず」
「んー、聞き取りにくいな」
そう言うとヴェアは、魔族の腹から手を抜き、治癒魔法を使いちゃんと喋れる程度に治した。
「よし、もう一回今言ったことを言ってみろ」
「ひぃ、こ、ここから少し行ったところに数人待機してます」
「数人じゃない、正確に何人だ」
「すっ、すいません、6人です、6人います」
「よし次だ、なんでお前ら魔族がこんなとこにいる」
「魔王城から逃げ出した、女とガキを捕らえるためです」
(例の噂のやつか、こんな場所まで捜索の手が伸びてるのかい。こりゃ村が危なくなる日も近いか)
「その女とガキってのは何か特別な存在なのかい」
「しっ、知らねぇ、ただ王城勤めの魔族全員に捜索命令が出されてるってことしか、それ以外は本当に何も知らねぇんだ」
(どうやら相当な訳ありって感じだな、出来るだけ関わらないようにしないとね)
「よしじゃあ最後の質問だ、今死ぬか、もう少しだけ生き延びるか、好きな方を選びな」
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