一章23話 共闘2
先に仕掛けたのは、手だった。向かった先にいたのは、少し手前にいたレイン...ではなく、少し後ろにいたアレスであった。
(まただ、こいつ俺ばかり狙ってきやがる。弱いほうから落とそうってのか?)
向かってきた手に対して、アレスは棍を突き出し先制攻撃を仕掛ける。その攻撃は軽くかわされそのまま突っ込んでくる。
アレスがニヤリと笑みを浮かべると同時に、いつ棍に魔力を流していたのか、すでに三節棍へと変形させていた。そのまま鞭のように手にたたきつけ動きを封じた。
その隙をレインは見逃さなかった。動きが止まった手に対しレインは、魔力とスキル【生命力変換】で最大限強化した拳を叩き込んだ。
凄まじい轟音があたり一帯に広がる。まるで爆弾が爆発したかのような、そんな音が洞窟の中で響いていた。
(手ごたえ十分。これならさすがに消し飛んだだろう)
少しだけ緊張が解け疲れたのか「ふぅー」っと右の腕で額の汗を拭おうとしたが、拭うことができなかった。...腕がなくなっていた。
レイン自身腕がなくなった時の感覚が全くなく、何をされたか全くわかっていなかった。
なくなった腕の断面を見ると、その断面はとても綺麗なもので、腕の断面の標本を見ているようであった。
(えっ?あれ...?うで...腕どこいった?ってか、いってー!まじかよ何で腕なくなってんだよ!)
レインは痛みに耐えながらも、腕を抑え止血をしようと試みる。しかし血はなかなか止まらず、だんだんと視界がぼやけ始めていた。
飛んでしまいそうな意識の中、どうにかして自身の力で出血を止めれないものかと、方法を探すが思いつかず焦っていたところに、先ほどの一撃ですこし飛ばされてしまったアレスが戻ってきた。
何を言うよりも先に、レインの腕から流れでる血を見るや否や治癒魔法で止血をおこなった。
「腕はどこにいったんだ。物がないと、くっつけることはできても、無いものを生やすことは今の俺にはできないぞ」
「それが、さっきから辺りを探してはいるんだけどどこにも見当たらないんだ」
治療し傷口から血が止まり、痛みも和らいだ、その腕をさすりながらそう答えた。
「困ったな。とりあえず腕のことは後で何とかするとして、あれは倒したのか?」
そう聞かれてレインは少し訝しげな表情を浮かべながら答える。
「さっき見た核らしきものは叩けたはずだけど、手ごたえも十分だったけど、倒しきれてない気がするんだ」
「なにかおかしなことでもあったのか?」
レインの倒しきれていないかも、という発言を聞き、警戒し辺りを見回す。
「腕がなくなったことと、あとは何となくなんだけどね」
「確かに腕がなくなったことは異常だが、それは攻撃の反動でそうなったということはないのか?」
「そうだったら良かったんだけど、多分違うよ。無くなった部分が異様にきれいなんだ。ほら、ここ見てよ」
そういうとレインは、服の途切れた袖部分を指さして見せた。それはそれは綺麗に無くなっていた。元からなかったと言われても疑わないほどに、綺麗になくなっていた。
「なるほど..、確かにこれは何かありそうだな...」
二人があれこれ話していると、一番初めに感じたものを再び背後から感じ振り返ると、そこには見たことのあるものが落ちていた。レインの腕である。
「なんだ、そんなとこにあったのか」
レインがじぶんの腕を拾おうと、何も考えずにゆっくりと近づいていく。先ほど感じたものは何だったのか、ということも考えずただ自分の腕を元に戻そうと、ただそれだけを考えて近づいて、拾い上げてしまった。
気づくべきだった。自分の腕と思っていたものと、自身の身体の切断面の形や大きさが少しばかり違っていたということに。
レインが腕を拾い上げた瞬間、拾い上げた腕の切断面からゲル状のものが飛び出し、形を変え針状になりレインの腹に突き刺さった。
一瞬驚いたレインだったが、さほどダメージを感じなかったため大いに油断してしまった。
刺されたものを引き抜こうと引っ張ってみるが、一切抜けそうになく焦り始める。さらには何かよくわからないが、何かを吸っているようにも見え一層不気味さが増しさらに焦らされた。
「くそ!何だこれ、抜けねぇ!」
「どうしたレイン、何かあったのか?」
レインの身体が陰となり、アレスのところからは、レインが何をしているのか全く分からずにいた。急ぎレインのそばに駆け寄ると、瞬時に状況を理解し手で針状のものをレインの肉ごと抉り出した。
(一体今日は何度痛い思いをすればいいんだ...)
レインが痛みに耐えようと歯を食いしばっていたが、いくら待っても痛みが襲ってくることはなかった。
「痛くなかっただろ?」そう言いながら抉り取ったものを壁にたたきつけ、土魔法で箱を形成し封じ込めた。
何をしたのか、抉られたレインの腹の肉は何事も無かったかのように元に戻っていた。
「もしかして肉抉るときに、治癒魔法も一緒にかけてくれたの?」
「少し違うけど、大体そんな感じだ。それよりその手に持ってる腕レインのだよな...?」
「それが違ったんだ。誰か別の人の腕だったみたい...ってあれ?」
レインが持っていた腕はいつの間にか、先ほどまでとは形も大きさも変わっていた。それは間違いなくレインの腕であった。
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