一章22話 共闘1
二人は先に仕掛けようと、隠れていた岩場から飛び出し、そこまで広さがあるわけではない洞窟の横幅を最大限活用し、左右から同時に仕掛ける。レインは左から魔力で強化した蹴りを、アレスは右から先ほど準備した三節棍で横薙ぎを放つ。
その時二人は同じことを思っていた、『いける』と。
しかし、そんな二人の思いは届かず、その手は跳ね上がり攻撃をかわし、その動きのままこちらへ飛んできた。
狙いは近くにいたレインではなく、距離をとっていたアレスの方であった。
(レインの攻撃がかわされた!?)(アレス君の攻撃がかわされた!?)
二人は攻撃をかわされたことに驚き、一瞬動きを止めてしまっていた。得体のしれない敵であり、それも相手は手という、今まで戦ったことのないものと戦うということに、十分に警戒しているつもりであった。
それは実践経験の浅さか、はたまた一緒に戦っている者への信頼からか、どちらにしろ戦闘中に動きが止まるというのは、大きな隙をうんでしまうことがある。ましてや、格上相手ともなると、殺してくださいと言っているようなものである。
レインが動き出すよりも先に、アレスは飛んでくるものに対応しようと、反応が遅れてしまった分脳をフル回転させる。
(まずい、どうする、受け流すか...?いやこの速さ、三節棍じゃ流しきれない...。それならもうできることは一つだけだ!)
アレスは飛んできたものに、握っていた三節棍を引っ張り、敵の進行方向の後ろから攻撃を仕掛けた。アレスは完全に背後をとっていいた...。いやとったつもりでいた。
その手は空中で、さらに言うならアレスに向かって飛んで行っているさなか、手の甲から手を生やし向かってきた攻撃を打ち払った。
そして、そのままアレスの顔を鷲摑みにし、先ほど攻撃を払った手をナイフのような鋭いものへと変形させ、アレスの左目へと突き刺しにいった。
(ガード...間に合わない。ならこれが左目に刺さって食い込んだ瞬間、土魔法で眼球を石化させて動きを止める)
アレスは左目を失う覚悟の反撃を考えていた。しかし、アレスは左目を失うことはなかった。アレスの左目がとらえたのは、レインのまだ小さく幼い手であった。
レインは掌にナイフのような鋭いものにあえて刺さり、そのままそれ事こぶしを握ると、アレスから鷲摑みにしていたそいつを引きはがし、そのまま勢いよく壁にたたきつけた。
レインがあと少しでも動くのが遅れていれば、アレスの左目は失われていただろう。
まだ小さなレインの掌には大きな風穴があき、おびただしい量の血が流れていた。
それを見たアレスが、急ぎ治癒魔法を使い簡単な止血を行った。
「助かった。それで、触った感じどうだった?あれはやれそうか?」
それを聞かれレインは少し難しい顔をした。
「なんか変な触り心地だった。ブニブニしてて、今までに触ったことない感触だった。ああいうのは、核を潰すか消し炭にするかしか思いつかないよ」
「やっぱそうかー...。とりあえず、核を探しながら叩き続けよう」
レインは黙って頷き拳を握って構えた。
アレスはもっていた三節棍を、元の一本の棒に戻し、槍のように構えた。
レインに壁に打ち付けられ、少しの間動かなかった手がまた動き出した。壁に打ち付けられた際、粘性の液体のように飛び散っていたものが一つに集まっていた。
手が元の一つに集まっていく中で、二人は何かに気づいたようにお互い顔を見合わせる。
「思ったよりも簡単に見つけたな」
「確かに見つけるのは簡単だったけど、それでもあの速さについていくとなると、なかなか難しいんじゃないかな」
「そうだな...、多分相当難しいとは思うがいい案がある」
「勝てるの?」
「これでだめなら終わりだな...」
二人に緊張が走る。元の形に戻った手が今に襲い掛かろうとしていた。
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