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一章15話 圧倒的強さ

 村の防衛戦をアレスに任せ飛び出したヴェアは、自身の間合いに入った魔族を文字通り潰しながら、手当たり次第に強い気配を辿って突き進んでいた。

 進んでいる途中、自身を魔王の側近と名乗る者が三人ほどいたが、五秒もかけず倒してしまった。

 ヴェアは少し疑問に思っていた。魔王の側近とはあんなに弱い者だったか、何百年も前に戦った時はもっと強かったはずだったが…と。


(あんなのが側近?もしかして側近を語っていたっだけなのか…。まあいいか、どちらにしろやる事は変わらない)


 疑問を疑問のままに突き進んでいくヴェアであった。まさかこの疑問が、のちに最悪の形で解明されることになるとは思いもしなかった。

 奥に進んでいくにつれて、魔族の数がどんどん多くなっているのを感じる。この奥から、先ほど側近を名乗っていた者たちよりも遥かに強者の気配を感じた。


(この先にいる奴が総大将だと、楽でいいんだけどね)


 進行方向にいる魔族を薙ぎ払いながらその気配の元へと進むと、少し開けた場所に飛び出した。そこに一人ぽつんと立っている牧師の格好をした魔族がいた。その魔族はヴェアを見ると、どこか嬉しそうに笑みを浮かべた。


「待っていたぞ、久しぶりだなヴェア・ローズ。あの時より少しばかり老けたか?」


 「久しぶり」と声をかけられたヴェアは、少し難しい顔をしながら首を傾げていた。


「どこかで会ったことあったかい?すまないね、長く生きているからか少し忘れっぽくなってるみたいだ。印象深いやつは忘れないんだけどね」


 ヴェア本人はそんなつもりで言っていないが、まるで相手を煽るように嘲笑まじりに答える。


「ふんっ、そうかそうか、歳をとると頭がパーになるとよく言うしな。いいだろう、ならば名乗ってやる。私は魔王様の側近にして最強の矛である、名はマゴル・ボルバ。どうだ流石に年老いた貴様とてこの名を聞けば思い出したであろう?」


 名前を聞いたヴェアは、やはりピンとこない様子で首を傾げていた。


「悪いね、やっぱり全く覚えのない名前だ。そんなことより、そっちの総大将はどこにいるんだい?」


「そんなことだと?!まあいい、ここで貴様を殺してあの時の雪辱を果たすとしよう」


 そう言うとマゴルは、ヴェアに向かってゆっくりと歩みを進めた。

 背負っていた斧を手に取り、おもむろに構えだした。

 周りの魔族たちは誰も動こうとはしなかった。まるでここにいる魔族たちは皆、マゴルの勝利を確信しているかのように。

 マゴルが構えたのに対して、ヴェアは構えてすらいなかった。それどころか、とてもリラックスしているようにすら感じる。

 それを見てマゴルは、歩みを止め不満そうな顔でヴェアを睨みつけた。


「なぜ構えない。よもや貴様は、相手との力の差も測れなくなってしまったのか?」


 それを聞いてヴェアは、笑いを堪えられず思わず吹き出してしまった。


「あははは、いやーごめんごめん。君があまりにも変なことを言うもんだから、笑いを堪えきれなかったよ」


「なんだと?!」


 笑っていたかと思えば、突然真剣な表情になり、気づけばマゴルの背後に立っていた。


「力の差がわかっていないのは、そっちの方だよ」


 先ほどまで目の前にいたはずの者の声が、背後から聞こえて、焦り声のする方へ斧を振り抜く。斧は空を切り、虚しく風切音が響くだけだった。


「おいおい、ちゃんと当ててくれよ。そんなんじゃ私どころか、羽虫すら殺せないぞ」


 斧を軽く避け、少し楽しそうにマゴルを煽り続ける。


「あまり調子に乗るなよ。本気を出せば貴様など、いつでも殺せるのだからな」


「ほー、そうかそうか。じゃあ…早く出したほうがいいぞ。その本気とやらを」


 ヴェアの手がマゴルの顔を鷲掴みにし、そのまま後ろで待機していた魔族に向かって投げ飛ばした。魔族の身体が次々と吹き飛ばされ、十数人絶命させたところで投げ飛ばされたマゴルの勢いがとまる。

 追撃が来ないことを疑問に思ったマゴルだったが、ひとまず立ちあがろうと状態を起こした。


「耐えて見せろよ、側近のマゴルとやら」


 そう言うとヴェアは少し後ろに下がり、時限式魔力爆弾が炸裂する。マゴルの顔面に仕掛けられたそれは、周囲にいた魔族を巻き込み、そこを中心に大きなクレーターを作った。

 ヴェアがそこを覗くと、中心にはほぼ瀕死のマゴルが座り込んでいた。


「おっ、意外と丈夫だね。でもそれじゃあもう戦えないだろ」


 ニヤニヤと悪魔のような笑みを浮かべながらマゴルの元へと歩み寄っていく。


「この化け物が…」


 掠れた声で精一杯言葉を投げかけるマゴルであった。先ほどまでの自信が嘘のように消えていた。


「さて、じゃあ教えてもらおうか。総大将はどこにいるんだい?」

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