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一章12話 泡沫の勝利

 レインは相手の能力がどんなものなのか探るため、少し距離をとって壊れていない左を使い、落ちていた石や木、槍や剣など、とにかく近くにあったものを手当たり次第に投げ続けた。

レインがフードを深くかぶっているため、誰かはわかっていないが、他の戦っている村人や魔族たちも各々戦いながらも2人の戦闘が気になっている様子であった。それもそのはず、魔王の側近である魔族と一対一で戦っているのだから。背丈の小さなものが戦っているのだから。気になってしまうのも仕方のないことだろう。

そんな視線など気にする様子もない二人の攻防は、どんどんとペースを上げていく。レインはひたすらにものを投げて攻撃し続けるが、ベンドに触れた瞬間グニャグニャに曲げられて、その場に落ちたり弾かれたりして一向にダメージになる様子がない。


(くそ、これじゃいつまで経っても攻撃が通る気がしない…。だけど、攻撃を続けたおかげで分かったこともある。攻撃は当たらないわけじゃないみたいだ。一応あの力は、あいつの体に触れてから発動してるみたいだな。あと、同時に幾つのものを当てても全てに力を使えるってことか…。なら今度は、反応できない速さで攻撃を当ててやる)


レインはスキル【生命力変換】を使用し、忍耐力を生命力に変換し、それを合わせた生命力の半分を筋力と魔力に7対3の割合で変換する。忍耐力を変換したことによって、ボロボロになった右に今よりもさらに激しい痛みが走り表情が少し強張った。


「どうした、もう終わりか?じゃあ今度は、こっちから行こうかな」


そう言うとベンドは、ゆっくりとレインに向かって歩みを進め始めた。

ゆらゆらと左右に揺れ、不気味に笑いながらゆっくりと近づいてくる。それでも気にせずレインは、残っている魔力を身体強化にまわし、敵を屠るための準備を整えていた。


 この一撃でもダメなら、もううつ手はなくなってしまう。今ここでこいつを倒せたとしても、まだ他にも魔族はたくさんいる。こいつの後に他のやつと戦えなくてもいい。ただ逃げる為に、少しばかり力を残しておかなければいけない。他の魔族の強さを、最初に戦った魔族の強さ程度と考えて、そいつらを蹴散らして逃げるぐらいの力だけ残して、あとは全部こいつに勝つために使う。などと思考をフルに回転させ、持っていた槍を構えた。


「何か企んでるみたいだが、無駄だ。お前は僕に触れて、グチャグチャに曲げられて、それでおしまいさ」


 レインは集中する。今からやろうとしていることは、以前ヴェアにダメージを与えたあの一撃。それを今ここで再現、いやそれ以上を狙っている。

 レインは、大きく後ろに飛び一度ベンドから大きく距離をとった。そして、槍を大きく振りかぶり、ベンドめがけて一直線に投げ飛ばした。次の瞬間、レインの姿が消える。

 ベンドは決して油断などしていなかったし、一瞬たりとも目を離したつもりもなかった。しかしベンドが見たものは、レインがいたはずの場所には何もなくなっていた。あるのは、くっきり残されたレインの踏み込んだ靴の跡だけだった。

 凝縮された時間の中ベンドは考える。


(逃げたか?いや、そんなはずはない。あれは確実にこっちを差し止めようとするものの目だった。であれば、今飛んできている槍に合わせた攻撃か?なんにせよ、攻撃が当たった瞬間、こちらもスキルを発動させるだけのこと)


 今にも槍が当たりそうになっているが、一向にレインの気配が感じ取れない。探知系とのスキルを使っているわけではないので、正確に場所を特定することはできない。しかし、魔王の側近ともなると、これまでの経験と、その時の勘や五感で、近くにいれば気配を感じ取ることぐらいは簡単なことだ。にも関わらず、レインの気配を感じ取ることができないのはベンドにとって不可思議なものであった。


(なぜだ、気配を一向に感じない。もう槍が当たってしまうぞ...。まさか、逃げたのか?!いや、まだそうと決めつけるのは良くない。最後まで油断せずにいく。)


 槍がベンドの頭部に触れた瞬間、槍は曲げられダメージは少しも通らなかった。

 ベンドは警戒を怠らずレインが攻撃を仕掛けてくることを待った。しかし、レインが攻撃をしてくることはなかった。


(クソ、あの野郎マジで逃げるとはな。あんな目されたら、攻撃してくると思うだろ普通。まぁいい、いくら頑張ったところで、僕に攻撃を当てるなんて無理な話だったん———)


 ベンドは決して警戒を怠ったつもりは無かった。しかしそれは、戦闘中のそれと比べれば少し劣るものであった。レインは決してそれを見逃さなかった。

 その結果、ベンドの右上半身を吹き飛ばすこととなった。

もしよろしければ、感想・レビュー・いいねなどしていただければ幸いです。

今後のモチベーションや参考となりますので気軽によろしくお願いいたします。

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