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一章10話 可愛らしい子供

 「おい、本当にこっちであってるんだろうな」


部隊から逸れた魔族の一人が仲間の魔族に不満げにぼやいていた。


「うるせえな、ぎゃあぎゃあ騒ぐな。そもそも、お前らが行きたいって言うから俺が案内してやってんだろ。そんな言うんだったら自分で探していけよな」


喧嘩になりそうな二人の魔族の間に入るようにして、一人の魔族が割ってはいる。


「悪かったって、そう怒るなよ。それに、この中じゃお前が一番探索が上手いんだからさ、頼むよ。こいつも、早く弱いものいじめがしたくて興奮してただけなんだよ」


宥められた魔族は、やれやれと少々呆れた様子でまた歩みを進めた。一見ただ歩いているようにしか見えないが、この探索が上手いと言われていた魔族だけは、常にスキル【魔力探知】で周囲を警戒しながら弱い魔力を持つものが多い村の中心へと進んでいた。


「ちなみにあとどれぐらいで着きそうだ?」


「もう後少しで着くはずだ。いやーそれにしても、久々の狩は楽しみだな。いつもは、支配区画の奴らに難癖つけて痛ぶってるだけだったからなー、最近少し物足りなく感じてたとこだったんだよ。早く女子供の泣き叫ぶ声が聞きてえなー、あの柔らかーい肉をゆっくりじっくり引きちぎった時のあの顔、また見てえーなー」


「おいおい、お前も興奮しすぎだぞ。全くこの変態どもは…」


「お前が言うなっての。お前なんて…オェ、思い出しただけで吐き気がするぜ」


三人の魔族が楽しそうに話していると、【魔力探知】を使っている魔族が突然とまり、先程までの緩み切っていた表情が一変、険しい表情へと変わった。


「しっ、静かに…何かいる。多分見られているが、気づいたことを悟られないようにしろ」


二人の魔族も真剣な表情で黙って頷き、棒立ちになりながらもいつでも戦闘を始められるようする。


「おそらくあの建物の裏にいる。あっちもやる気みたいだ、飛び出してきたら三人で囲むぞ」


三人の魔族は互いに目配せをして黙り込み、獲物が飛び込んでくるのを待ち構えていた。しかし、その待ち構えていた行為が無駄であったことに気付かされる。

突然視界に映った子供の姿を捉え【魔力感知】を使っていた魔族だけがかろうじて腕でガードするが、腕を飛ばされてしまった。腕が飛んですぐ後ろから、まるで風船が破裂したような音が聞こえてきた。魔族の背中に何か飛び散ってきた感覚があった。痛みに耐えながら後ろを確認すると、一緒にいた魔族二人の、首から上がなくなったものが絶命しながらも立っていた。魔族は、まだ何が起きているのか理解できずにそれを見ていると、どこか楽しそうな子供の声が聞こえてきた。


「あれをガードするなんて少し落ち込むなー、結構早かったと思うんだけどなー」


魔族が声のする方に目をやると、まだ幼い子供の姿があった。その子供は満面の笑みで、こちらにゆっくりと近づいてきていた。見た目はとても優しそうな子供だったが、両の手を赤く濡らし笑顔で近づいてくるその子供に恐怖を覚えた魔族は、すぐにでも逃げねばと思ったが、恐怖で思うように体が動かず立ち尽くしていた。


「いやー、魔族を殺すのは初めてだったから不安だったけど、やってみると意外といけるね。なんか不思議と高揚してるんだよね。物事なんでもやってみるもんだね。殺すには頭を潰すのが早いって本で読んだけど、いくら早いからって頭潰すなんてどうかとも思ってたけど、なかなか悪くない感触だったねー。こうぎゅっ、ってな感じでさ。初めは殴って壊そうとしたんだけど、あんたにガードされちゃったから確実に潰さなきゃ、って思ってやったんだけど。いやー本当何事も挑戦だね」


「楽しそうにしてるとこ悪いんだけどよ、お前は何者だ。ただの子供がこんなことできるはずないよな」


「何者って、あー自己紹介でもしてほしかった?初めまして名前も知らない魔族さん、僕はレイン・ローズ7歳。この村の村長ヴェア・ローズと一緒に暮らしている、可愛らしい子供だよ」

もしよろしければ、感想・レビュー・いいねなどしていただければ幸いです。

今後のモチベーションや参考となりますので気軽によろしくお願いいたします。

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