好きな子のことをいじめてしまうのって、男の子あるあるなのかな
好きな子のことをいじめてしまう………これって男の子だったらよくあることなんだよね?
私には幼馴染が二人いる。
一人はシャロン、金髪碧眼のとても可愛い女の子。
もう一人はライト、銀髪紫眼のとても綺麗な男の子。
その二人の幼馴染の私はメリル、私はいたって普通の黒髪緑眼の普通の女の子。
「ねえ、そのリボン似合ってないよ」
そう言ってライトがシャロンの髪のリボンを取ろうとしている。
「ちょっと、ライトやめてよ! 私はこのリボン気に入っているんだから」
取られそうになったシャロンはそう言ってライトから離れて私の方へやって来た。
これはいつものこと。
ライトはシャロンにだけこういう態度をとる。
今回のようなリボンを取ろうとしたりとか、急に手を引っ張ってみたりとか。
同じ幼馴染だけど私にはそんなことしない。
ライトはいつも私には紳士的だ。
やっぱりこれって、そういうことだよね?
私の初恋は、あっという間に消えてしまう運命ということ。
………まあ、初めから分かっていた、どう考えたって私とシャロンならシャロンを好きになるって。
こういう時、私はどうしたら良いんだろう?
下手に幼馴染だから急に離れたら絶対に理由を聞かれる。
素直に言う? ………絶対に無理だ、恥ずかし過ぎる。
私たちは親同士も仲が良く、小さい頃から一緒に遊んでいた。
いつからだろう、ライトがシャロンに小さなイタズラをするようになったのは。
私がライトのことが好きで自然と目で追っていたからか、ライトがシャロンにちょっかいをかける姿をよく見かけた。
最初はなんでライトはシャロンに意地悪するんだろう? と思っていたのだが、学校で違う友達にその話をしたらそれは『好きな子をいじめたい男子特有の病気』と答えが返ってきた。
私はそれを聞いて妙に納得してしまった。
それからは余計にライトのその行動が目につくようになった。
それを見る度に、ああ、今日もライトはシャロンに構ってほしくて意地悪しているんだ、と私の心がちょっと傷付いた。
学校でもライトとシャロンは付き合っていないけど、付き合うまで秒読みのカップルと思われている。
なのに二人は幼馴染だからと私と一緒に行動したがるので、私は居た堪れない。
周りからは絶対に空気の読めない幼馴染だと思われているはずだ。
私達ももう十五歳、そろそろ将来の事も考える時期。
ライトとシャロンが付き合ったらきっと、近い将来結婚もするはず。
そうなった時に私は笑顔で二人を祝えるだろうか? ………たぶん、今の気持ちでは無理だ。
ここ最近そんなことばかり考えて元気が無いように見えたのか、珍しく五つ上の兄が心配そうに話しかけてきた。
「なあ、メリル。なんか嫌なことでもあったか? 」
「ううん。別にないよ」
私は兄に心配をかけたくなくって、そう答えた。
すると兄は私の頭を撫でながら
「そんな顔して『ないよ』なんて言うな。ほれ、言ってみろよ。よく言うだろ、誰かに話しただけでも気持ちが楽になるって」
兄のその言葉に、私は恥ずかしかったけど今の気持ちを話してみることにした。
ライトがシャロンを構うこと。
それが男の子特有の好きな子をいじめたい行動の現れだということ。
そして………私がライトのことを好きなこと。
だけど、もう離れないといけないと思っていること。
兄は静かに私の言葉に耳を傾けてくれた。
「うん、わかった。ったく、アイツら………。俺がいろいろ口を挟むようなことではないけど………でも、もしちょっと二人と距離を置きたいなら隣国に留学しないか? メリルは学校の成績も良いし、隣国の言葉も勉強していただろう? 俺の通っていた頃は交換留学の制度があって、半年行けたと思うんだが。学校で聞いてみろよ。自分のスキルもアップするし、物理的に二人と距離を取れる。半年だけど、少しは冷静になれるんじゃないか? 」
兄の言葉は私の気持ちを軽くしてくれた。
半年だけでも離れられれば、少しは気持ちも落ち着くかも。
私は早速次の日、先生に交換留学の話を聞いてみた。
するとちょうど募集が始まるところで、私の成績ならば推薦出来ると先生からも勧められた。
二人にはギリギリまで言わない。
二人は私を幼馴染として大切にしてくれるから反対されるかもと思ったからだ。
あっという間に月日は過ぎる。
三日後には隣国へと旅立つ私は、幼馴染の二人にようやく留学することを話すことにした。
二人はどんな反応するだろう? なんでもっと早く言わないの、と怒るかな。
それともあっさり、いってらっしゃいと送り出してくれるかな。
私はドキドキしながら二人に話を切り出した。
「あのね、私、隣国に半年間留学することにしたの」
私がそのことを伝えたら二人は同じような表情をした。
びっくりして、その後………非常に顔色が悪くなったのだ。
「わ、私、なんか耳がおかしくなったみたい………」
「奇遇だな、ぼ、僕もだ………なんかメリルが隣国に留学って空耳が………」
「二人とも、耳おかしくなってないよ。空耳でもない。私、留学するの三日後に」
「ど、どうしてそんなこと急に………三日後って」
「わ、私達に黙ってたの? ヤダよ、半年もメリルと離れるのなんて! 」
「ごめんね。二人は私のこといつも気にかけてくれるから、もしかしたら留学するの反対されるかもって思って。でもね、もう十五歳だし将来のためにも自分のスキル磨きたいって思ったの。私、語学が得意だからもっと勉強したいと思って。だから行ってくる」
「じゃ、じゃあ、僕も行く! 」
「私も! 」
「学校の留学枠は一枠だし、何より二人は自分の将来の為に今後忙しいじゃない。シャロンは実家の商会でようやくアクセサリーのデザインに携われるって言っていたし、ライトも実家の商会で今度大きな取引に関わらせてもらうって言っていたじゃない」
シャロンもライトも比較的大きな商会の子供だ。
扱っている商品は被っていないから親同士も仲が良い。
シャロンのところは跡取りのお兄さんがいる、ライトのところは妹さんが一人。
だからシャロンがライトのところにお嫁に行くのは何の問題もない、むしろ商会の娘さんだから歓迎されるだろう。
うちは両親共に領主様のところで働いている。
父は文官、母は薬師として。
ちなみに隣国では、語学の他に薬学の勉強もするつもりだ。
「どうしても行くのか? 」
ライトが珍しく泣きそうな顔をしている。
なんか、私がライトをいじめているようだ。
「うん。もう決めたし。もう会えないわけじゃないからそんな顔しないでよ」
私の言葉にシャロンが抱きついてきた。
「絶対に半年で帰って来るんだよね? ヤダよ、隣国にずっといるなんて………」
「帰って来るよ。交換留学だからちゃんとこの学校を卒業するし」
二人は私が考えを変えないことがわかったのか、悲しそうに行ってらっしゃいと言った。
優しい二人は私が心配でしょうがなかったらしい。
こうして私は隣国へと旅立った。
僕には二人の幼馴染がいる。
一人はうちと同じく実家が商会を営んでいるシャロン。
もう一人は………艶やかな黒髪にエメラルドのように煌めく緑の眼の持ち主、そして一緒にいるだけで癒される僕の大事な大事な最愛のメリル。
僕達は親同士が仲が良かった為に昔から一緒に遊んでいた。
僕がメリルを好きなように、シャロンのヤツもメリルのことを気に入っていて事あるごとに自分の兄とメリルをくっ付けて家族になろうとしていた。
シャロンのヤツはリボン一つをとっても、メリルの目の色と同じ色のリボンを見つけてはそれを身に着けやがる。
だから僕はよくそのリボンは似合わないと言って取ろうと躍起になっていた。
それからシャロンはすぐにメリルにベタベタ触るから、その都度シャロンを引っ張ってメリルから引き離す、だけどまたすぐにくっ付くから何回もそんなことをする羽目になった。
小さい頃は良かった、いつでも一緒にいられたから。
だけど学校に入ってからは気付くとメリルが僕とシャロンから距離を取るようになった。
もちろん僕とシャロンはすぐにメリルの側に行く、けどなんとなくメリルとの壁を感じた。
学校では何故か僕とシャロンが付き合っているとよく勘違いされた。
なんでシャロンなんかと………僕が付き合いたくて、将来結婚したいのはメリルだけなのに。
なかにはメリルが僕とシャロンの邪魔をしているなんて馬鹿みたいなことを言う勘違い野郎もいたが、そういう奴には男女問わずじっくり、丁寧に、いかにメリルが可愛く、素敵な女性かと僕とシャロンから三時間ぐらいかけてオハナシさせてもらった。
なのに、その大事な、大事な、何よりも大切なメリルが半年も隣国に留学するって。
しかもその話を聞いたのは留学する三日前、もう目の前が真っ暗になった。
僕とシャロンは止めようとしたけどメリルの決意は固かった。
付いて行きたかったけどメリルに諭されてしまう始末、メリルは将来のことを考えて歩み始めてしまった。
僕とシャロンは一週間抜け殻状態。
でも、このままだと帰ってきたメリルに胸を張って商会の仕事を頑張っていたと言えないと考え、シャロン共々がむしゃらに頑張った。
周りは僕とシャロンが急に実家の仕事を頑張りだしたから、いよいよ僕達が婚約したんじゃないかと勘ぐってきたが、そんなことを言う奴は忙しい中、五時間程かけてオハナシさせてもらった。
でも、勘ぐって来る奴らの方がマシだと気付いたのは後になってからだった。
私は隣国で充実した日々を送っている。
語学も薬学も毎日新しい知識を得られて本当に楽しい。
それに忙しくしていればライトとシャロンのことを考えなくてすむ。
でも、離れている隣国にも情報って来るんだね。
実家からの手紙と一緒にたまに友達からの手紙もやって来る。
その内容は学校で流行っていることや、先生の愚痴、それから………ライトとシャロンのこと。
どうやら二人は婚約秒読みらしい。
私が隣国に来てから二人は、お互い商会の仕事に熱を入れているらしく、切磋琢磨しているとか。
そうだよね、やっぱり私がいたからなかなか婚約の話が出来なかったんだ。
二人とも大事だから、本当に申し訳ない。
こちらの国で親しい友人が出来た。
語学の授業で仲良くなったエドウィン・オートとリーン・オートだ。
二人とも綺麗な金髪で美男美女、しかも二人の家の仕事も商会経営だった。
授業でお互いに自分の国の言葉の発音を教え合っているうちに仲良くなった。
二人にはライトとシャロンのことも言っている。
「そろそろメリルの留学も終わりか、寂しくなるな」
「そうね、せっかく仲良くなれたのに………ねえ、メリル。やっぱりこっちに本格的に越して来たら? 」
二人は私と別れることを惜しんでくれている。
「二人ともありがとう。でも、やっぱりあっちで卒業するよ。それに、ケジメもつけたいし」
半年離れてみたけど、やっぱり私はライトが好きなままだ。
でも、きっとライトは学校を卒業したらシャロンと結婚するだろう。
正直そんなの見たくない………けど、二人を祝福したい気持ちもある。
「そういえば、メリルの幼馴染の実家も商会を営んでいるんだろう? 名前はなんて言うんだ? 今度メリルの国の商会と一緒に仕事をするんだけど、もしかしたらそこだったりな」
そんな偶然あるわけない、と思っていたけどエドウィンが言った名前はまさにライトの家の商会だった。
「それなら私達もメリルの帰国に合わせて一緒に行くわ」
「そうだな、メリルも幼馴染達に会うとき俺達がいた方が心強いだろう? 」
「二人とも良いの? 二人が商会の仕事本格的にするのは卒業してからなんでしょう? 」
「いいの、いいの。もう卒業に必要な単位もとっているし、逆に今回顔合わせで隣国に行った方が今後の為になるわ」
「そんなに長い時間いるわけではないしな。それに、ここで恩を売っておけばメリルが俺達の商会で働いてくれるんじゃないかっていう下心も満載だから気にするな」
ふふ、本当に下心がある人だったらそんなことを言わないよ。
私は二人の優しさが嬉しかった。
今日は待ちに待ったメリルが帰って来る日だ!
周りは半年なんてあっという間だと言っていたが、僕にとっては何十年にも感じるくらい長かった。
それはたぶんシャロンも同じだろう。
僕もシャロンも時々、メリルがいない事に耐えられずメリルの名前を呟きながら遠くを(隣国方面を)見つめることがあった。
でも、そんな生活も終わりだ!
やっとメリルに会える、メリルと話せる、メリルと同じ空気を吸える!!
本当はメリルと二人っきりで会いたいけど、それはシャロンも同じでお互いに牽制し合った結果シャロンと二人でうちの商会で再会することになった。
なんで商会でかと言うと、今度一緒に仕事をする隣国の商会の跡取りがメリルと友達で、俺達を引き合わせるのに付き合ってくれるとかでそうなった。
正直、その跡取りとメリルが友達というのは気に入らない。
絶対にメリルに気があるに決まっている、あんなに可愛くて頭も良くて、優しいメリルを好きにならないわけないんだから。
でも、絶対に渡さない………メリルは僕と結婚するんだから。
そのためにこの半年頑張ってきた、親にも将来はメリルと結婚したいと常々言っている。
一時期シャロンとの婚約を勧めてきたが、それは僕とシャロンの猛反発で今は禁句になっている案件だ。
商会の前に馬車が止まった。
きっとこの馬車にメリルは乗っている。
僕とシャロンは待ちきれずに馬車のドアに近付いた。
中から出てきたのは年配の男性、それからやたらキラキラした美男子………たぶんメリルの友達だっていう跡取りが続き、そいつの後にまたキラキラした美女が登場。
そしてようやくメリルがキラキラ美男子に手をとられ降りてきた。
何笑顔でメリルの手を握っているんだ! 早く離せよ!
さすがに初対面の仕事相手に暴言ははけないので、その言葉をグッと呑み込んだ。
半年ぶりに見るメリルは前よりもっと輝いて見える。
「あ、ライト、シャロン、久しぶり」
僕達に気付いたメリルがニコッと笑ってこっちにやって来た。
久しぶりの生メリルに僕もシャロンも嬉しさが込み上がって、メリルに抱き着こうと思ったのだが。
「やあ、初めまして。メリルの親友のエドウィン・オートです」
メリルの前に立ちはだかるようにあのキラキラしたヤツが現れた。
「あ、はい。僕はメリルの幼馴染(将来の夫)のライト・ベルガです」
表面上僕達は和やかに握手を交わした。
しかし次の言葉は許せない。
「うん? もしかしてそちらの方がメリルの幼馴染のシャロン嬢かな? もうすぐ婚約するとか聞いたが今日も仲良く出迎えてくれたんだね」
その言葉に俺とシャロンはお互い顔を見合わせ目を丸くした。
しかも、その言葉を言ったエドウィン(もう心の中では呼び捨てで良い!) にメリルが可愛い顔をしながら袖を引っ張り何か言っている。
もう、我慢ならない! なんで久しぶりに会うメリルを堪能出来ないだけじゃなく、会ったばかりのヤツにシャロンの婚約者だとか思われているんだ?
しかもそれをメリルの目の前で言うなんて。
「ごめんね、ライト、メリル。二人のことはよくエドウィンとこちらのリーンにも話していたの」
そう言うとメリルはもう一人の女性を紹介した。
「初めまして、メリルの親友のリーン・オートよ。二人のことは常々メリルに聞いていたわ」
その言葉にシャロンが反応した。
「初めまして、メリルの幼馴染で大親友のシャロン・スパナよ。よろしくね」
お前、それ、全然よろしくって顔じゃないじゃないか。
まあ、僕も仕事はするけどよろしくはしたくない。
僕達はとりあえず商会の中の応接室に移動することにした。
応接室には僕の父が待っていた。
互いに挨拶をして、あっちの年配の男性が商会の幹部で今回付き添いで来ていることをここで知った。
「いや、しかしこんな偶然もあるんですな。まさか留学していたメリルちゃんとオート商会の跡取りが友達になっていたなんて」
父がにこやかに話しかける。
「ええ、私もエドウィンから聞いた時びっくりしました。お互い跡取りが顔合わせするって聞いていたから、ライトもこの半年頑張っていたんだなって思いました」
そう言ってメリルが僕に笑いかけてくれた。
僕はこの時ほど頑張ってきて良かったと思ったことはない。
でも次の言葉に僕は凍りつくことになった。
「………私、噂で聞いていたんです。ライトもシャロンも商会のお仕事凄く頑張っているって。………あの、もうすぐ婚約するんだよね?二人は。結婚は卒業してからにするの? 」
僕とシャロン、そして僕からずっとメリルと結婚すると聞いていた父は固まった。
彫像のようになっていた僕達だが、父が何とかまず復帰を果たした。
「う、うん? えっと、メリルちゃん? ライトと、だ、誰が婚約するのかな? 」
「はい? ライトとシャロンですよね? こちらの学校のお友達が定期的にお手紙くれていたんですけど、もうすぐ婚約らしいよ、とか結婚は卒業してからすぐらしいよ、とかいろいろ教えてくれていたんです。もう、二人とも遠慮せず教えてくれれば良いのに。………二人とも幸せになってね」
メリルがそんなことを何故かちょっと泣きそうな、切なそうな顔で言う。
「二人のことを見届けたらうちの商会の手伝いをしてもらえないかとメリルには頼んでいるんですよ」
なんてバカなことをエドウィンが言っている。
いや、泣きたいのは僕だよ。
何で大好きなメリルじゃなくてシャロンと結婚するんだよ!
しかもメリルがエドウィンの商会の手伝いって、それってエドウィンと結婚するってこと?!
僕はあまりの衝撃に涙が溢れた。
いた、溢れたなんてもんじゃない溢れかえって大洪水だ。
「な、なんでそんなこと言うんだよメリル! ぼ、僕は、メ、メリルと結婚したいって思って、ず、ずっと、が、頑張ってぎだのに〜」
もう、訳がわからない。
私の目の前でライトが号泣している。
いつも冷静で、子供の頃からあまり泣いているところを見たことないライトが号泣している。
あまりのことに私も隣国商会組もライトのお父さん、シャロンもびっくりして固まった。
そして何よりライトは今なんて言った?
と、とりあえずライトをこのままにしておけない。
私は自分のハンカチを取り出し、顔を覆って泣いているライトへ近付いた。
すると私に気が付いたのかライトが顔を上げてその綺麗な紫の目で私を見つめ、そして私の腰に抱きついた。
「メリル! 大好きだ! 隣国になんて行かないでよ! 僕、メリルがいないと駄目なんだ。なんで、僕とシャロンが結婚なんて話になるんだ………僕はずっとメリルしかいないって思っていたのに! シャロンは幼馴染だけどライバルなんだよ! いつもいつもメリルにくっ付いて………僕だって本当はもっとメリルにくっ付きたかったのに邪魔ばかり。メリルの色のリボンは身に着けようとするし………」
「やだ! 何言っているのよライト! メリルはね、私の兄と結婚して私のお姉ちゃんになってずっと一緒にいるんだから! 何勝手にメリルと結婚しようとしているのよ! 」
何だろう、この状態。
いろいろな情報が一気に入ってきて私も混乱中だ。
「はは、あはは! なんだ、メリル、お前めっちゃ愛されてるんじゃん」
「ふふ、本当。心配して損しちゃった、ふふ」
エドウィンとリーンが笑顔でそう言ってくれた。
「メ、メリルは渡さないから! メリルはエドウィン……さんとは結婚しないから! 」
私の腰にしがみ付きながらライトがエドウィンに向かって言う。
「そ、その体勢で威嚇されても、っく、面白いだけなんだが。まあ、でも安心してくれ。俺はメリルとは結婚しない、というかもう結婚しているし」
エドウィンはそう言うとリーンを抱き寄せた。
二人は学生結婚していたのだ。
その後、非常に混乱を極めた現場だったがライトのお父さんとエドウィンの商会の幹部の人が何とか話をまとめ上げた。
落ち着きを取り戻したライトとエドウィンも何とか無事お互いの交友を深められたらしい。
私はライトに今まで考えていたことを全部話した。
「ま、まさかメリルにそんな誤解をされていたなんて………。僕、結構あからさまにメリルを大事にしていたと思うんだけど」
「うん、そうだね。だから凄く幼馴染思いなんだと思っていたよ。そもそもライトは基本優しいじゃない? でも、シャロンにだけ反応が違ったからずっとシャロンのことが好きだと思っていたの」
「………うん、これからはもうシャロンに構わずメリルだけ構い倒すから。誤解や勘違いしないように毎日好きって言う。だから、メリル! 僕と結婚してくれる? 」
「うん、私もライトが好きだから一緒にいたい。私をライトのお嫁さんにして下さい」
私がそう言うとライトがガバッと抱き着いてきた。
「はあ〜、可愛い〜。メリル大好きだよ。もう僕から離れないでね? 」
私とライトが婚約を決めた時、シャロンは思ったより落ち着いていた。
「本当は私わかっていたの。メリルがライトのこと好きだって。だけど二人が結婚したら私はメリルと一緒にいれないと思っていた。でも、メリルが好きだから祝福するよ。………今度は自分で頑張る! メリルのお兄さんにアタックしてくるから応援してて! 」
予想の斜め上に頑張る気になったようだ。
応援して良いのか悩むけど、兄ならなんとかしてくれるような気がする。