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prologue.この世界にふたりきり
『ドン!!』
突如あたりに響いた大きな音。
思わず振り返ったけれど、周囲の人は変わらぬ様子で急に動きを止めた私を邪魔そうに避けていった。
(何、今の)
他の人には感じられなかったのだろうか。
まるで隕石が墜ちてきたかのような衝撃だったのに。
まぁ、考えてもわからないことにいつまでも囚われている時間はない。狐に化かされたような奇妙な出来事に内心首を傾げながらも目指す方向に向き直ろうとして―――ふと彼と目が合った。
―――――黒。
彼は黒かった。
黒い髪に黒い瞳。吸い込まれそうなほど深く昏い夜の色。
その瞬間、きっと世界は私と彼のふたりきりだった。