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76 寂れた町 2

 この町の代官は悪い奴。それは分かったが、さて、それではどうしたらよいのか。


 腹を立てたものの、翔馬はどうしたら是正出来るのかが分からない。


「陛下……じゃ、上過ぎる。ってか、王政に限らないけどピラミッド型の社会で頂点がいちいち末端の面倒は見ないよ。ガーラントさんは、やっぱ上過ぎるし怖ろしく畑違い。アーティさんたちは管轄が王都だろうから、地方のことは口出せないよね。希ちゃんたちみたいに結果を出した聖女様ならともかく、お呼びでない勇者じゃ権限も力も無い。――どうしたらいいんだろ」


 官憲の汚職問題なんてニュースで見るだけでまるで関わりの無かった庶民で、地位も権力も無いが伝手だけはある。しかし、その伝手は使うには威力が大きすぎるし乱用してよいものではない。


「ぴらみっど?」

「あー、俺がいた世界の建造物。てっぺんが尖ってて下に向かって広がっていく三角錐?四面体?そういう形。トップが陛下で裾広がりに命令系統があるってこと」


 国王に願えば的確な判断で対処方法を教えてくれるだろう。だが、翔馬は誰かに投げるのではなく自分でどうにかしたいと思ってしまった。


 ビーちゃんは嫌がるか面倒くさがるかだろうけど。でも、放ってはおけないよなぁ……。


 翔馬がそう考えていることを見透かすように「流石に王様の出番は無いけど、城に報せれば誰かがどうにかしてくれる」とハニー・ビーが他人任せを推奨する。


「あたしにもにーさんにも関係ないよ」

「関係はないけど……でも、袖振り合うも多生の縁っていうしさー。あ、そうだ、ビーちゃんだって狂騒と揉めてまでフォセカちゃんたちを助けたことがあったし!」

「あれは、あたしが狂騒のグリージョにムカついたから仕返ししただけ。フォセカはついでであって目的じゃない。――袖振り合うも多生の縁ってのがイマイチわかんないけど」


 フォセカに聞けば全く違う見方をするだろうが、ハニー・ビーは「自分がムカついたから」のスタンスを崩さない。


「こうやって知り合ったんだから、ご縁があるってこと。ご縁があるならどうにかしたいじゃん」

「いや、別に」


 理不尽を見るたびにどうにかしていたら身が持たないとハニー・ビーはきっぱりと言う。世の中は不幸や理不尽で溢れているのだ。それを一々他人がどうにかしてくれると思ったら大間違いで、アリウスやフランネも自分たちでやれることをして頑張っている。それに他人が嘴を挟むのはお節介だとハニー・ビーは思う。


「希ちゃんたちの警護だってしたでしょ?」

「アレは報酬ありきのお仕事」

「フォセカちゃんのお家に侵入した奴らだって退治したじゃん」

「クロウグラスがらみだったら、事の発端があたしってことでしょ。ま、サジナルドが全面的に悪いとは思うけど自分の行動によって起きた揉め事は自分で対処するのは当然」


 なんとかハニー・ビーに人助けを肯ってもらいたい翔馬だが、ハニー・ビーは素っ気なく取り付く島もない。

 いくら本人が利己主義を気取ろうと、彼女はそれだけの人間でない事を翔馬は知っている。


 でなければ、狂騒一味を捕えた後にフォセカたちを保護することも、旅がしやすいようにガーラントに収納その他の魔法を教えることも、翔馬を故郷に誘う事もあるまい。


 なんでこう偽悪的なのかねぇ。いい人だって思われるのが嫌で格好つけたい中学二年生的情緒かなー。


 自分も中二病という不治の病持ちの翔馬はハニー・ビーも同類かと思うと頷けると考えた。


「あの、説明させてもらったのは誤解解くためで、お二人に何かしてもらおうとか思って無いから」

 フランネの言葉に「ほらみろ」とハニー・ビーが翔馬を睨む。


「でも、困ってるでしょ?俺に何の力がある訳じゃ無いけど、あ、肉体的には(勇者補正で)強いし戦闘能力も(勇者補正で)結構高いけど、地位も権力もこういうときにどうすればいいのか考える知恵も無いからさぁ……。助けたいけど、どうやればいいのかが分からない」


「ショーマさん、いい人ですね。ハニー・ビーさんの仰るように、お二人には関係のない事ですから、どうぞ、旅の続きをなさってください」


 アリウスが微笑んで言う。


 それでも翔馬はグチグチと「無気力になってる年配者のせいで子供が苦労している」「悪がこの世に蔓延るのは宜しくない」「このまま見てみぬふりをしたら寝覚めが悪い」と、主にハニー・ビーに聞かせるようにつぶやいているので、折れたのはハニー・ビーの方だった。


「んで、にーさんは代官ぶっ潰せばそれでいい?」

「いや、それじゃ済まないっしょ。ビーちゃん、直情過ぎ」


 アリウス達が驚いたように二人を見る。縁も所縁も無い、ただ単に通りかかっただけの町で、ある意味因縁をつけたような自分たちの為に動こうとしている二人はいったいどういう人たちなのだろうかと。


「先ず、連れて行かれた人たちの所在と安否確認。連れて行った理由の解明。代官のみの悪行なのか領主も絡んでいるのかの確認」


「え、領主さまも……?」


 アリウスが思いもよらぬことを言われたとばかりに、やや非難がましくハニー・ビーを見た。


「代官だけの筈がない。裏にいるのが領主かどうか分からないけど」

「領主さまは……違うと思います。――思いたいです」


 何か事情があるような雰囲気のアリウスに、これ以上の面倒事はご免だとハニー・ビーはそれに触れずに続ける。


「ん。まだそれは不明だけど、代官のみの犯行だった場合は領主かこの町に私怨があると考える」

「ビーちゃん、どーして?」

「にーさん、ちょっとは考えなよ。人が減って税収が落ちれば代官として無能って事だよ?税収を落としてまで人を徴集するのは、人を連れて行くことによって金銭的に税を治めさせるより旨味があるか、弱みがあるとかで脅されてやむを得ない仕儀なのか、思想か宗教か性癖かで贄を必要とする精神異常者か、評判を落として最終的に罪に問われてでも構わない位にある恨みを晴らしたいか――そう思わない?」


 なるほど、と翔馬は頷いた。アリウスもフランネも連れて行かれた人たちを取り戻したいとは思っていても、その裏にある事情までは考えていなかったらしい。


 感心したように自分を見る三人の目が居心地悪く、ハニー・ビーは口を尖らせて視線を逸らす。


「連れて行かれた人たちを取り戻すだけならあたしとにーさんがいれば問題ない。でも、根本的にどうにかしたいなら、まずは裏取り」


 ハニー・ビーの言葉に、三人は力強く頷いた。

 どうやら、この町から出発するのは先になりそうである。


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