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73 鉱山の街ガラウェイ 13

 サカニー達を軽く嗜め(ハニー・ビー基準で)見逃した後、おばあさんに付き添うというフォセカを置いてハニー・ビーと翔馬は領主屋敷に向かった。

 欲したのはハニー・ビーだが、だからといって民家に押し入ってクロウグラスを集めている輩を見逃すわけにはいかないからだ。


 クラウドは翔馬がまた自分に乗ることを喜んだし、ライも機嫌がいい。

 途中で数件の民家押し入り犯へのお仕置きをしたが、一件一件裁くよりも領主に問いただして是正させて方が早いと二人は領主の館へと急いだ。


 騎馬の二人が領主への面会を求めると、すでに下知されていたのだろう、すぐに領主の執務室に通された。



「魔女殿、勇者殿、お早いお帰りでしたな。ご友人とはお会いになれましたか?執務中で、このような場所にお通しして……」


「サジナルド」


 ハニー・ビーの冷たい声が、サジナルドの長広舌をぶった切る。魔女の冷ややかな声にサジナルドは、理由は分からないが彼女が立腹していることを知り、いったい街で何があったのだろうと焦燥する。

 一刻も早く穏便に領外へ出て行ってもらうために、彼女の望みを出来る限り早く叶えようと動いたが、それが仇となった事をサジナルドはまだ知らない。


「なにか……ございましたか、魔女殿」


「クロウグラスの件」


「あ、ああ、金石英との調合に必要だと伺いました。魔女殿の為に一刻も早く集めるよう指示を致しましたが、まだ、必要数は……」


()()()()()?」


「はい、もちろんです。魔女殿の為ですから、動かせるものは全て動かして採取するようにと――」


 ハニー・ビーの隣で翔馬が「あちゃー」とでもいうように額に手を当てて天井を仰いだ。


 それを見て、サジナルドは更に焦る。何か間違ったことをしただろうか。今のところ、魔女殿と勇者殿の機嫌を損なうような真似はしていない筈だ。であれば、やはり街で何かあったのだろう。――いや、クロウグラスの件だとはっきり言っている。という事は……


「つまり、与太者が領民の住居に押し入ってクロウグラスを奪おうとしたリ、その家の主を殴り倒したりしたのは()()()()()()ってこと?」


「…………は?」


「あたしの為に一刻も早くクロウグラスを集めるようにって事なんでしょ?だから、森や川辺まで行く時間すら惜しんで民家に押し入って押収させたんでしょ?それもこれも、あたしがクロウグラスを欲しがったから、怪我をした人も恫喝された人も、領主命だと言われて諦めた人も、脅されて家族に被害が及ぶよりはと涙をのんだ人も、あたしのせいで辛い目に遭ったと……あたしが悪いとそう言ってる訳だ?」


 ハニー・ビーは声を荒げている訳ではない。淡々とフォセカやおばあちゃんの被害を、道すがら天誅を下した者たちの被害に遭った状況を述べている。


「そ……そんな、街でそんな事が……」


 顔を青くしたサジナルドは必至で抗弁する。


「ですが、私はそのような指示は出しておりませんっ。速やかにクロウグラスを調達するようには言いましたが、けっして、民から徴収しろなどとは言っておりません」


「事実、街ではそんな行動があたしが見ただけでも4件起きてる」


「そっ、早急に対処致します。まさか、早急と指示があったからといって、そんな……失礼します」


 魔女の怒りを買ってしまったと大慌てで頭を下げ、逃げるようにサジナルドは部屋から出て行った。


「まあ、急いで集めろって言われても”よそのおうちにむだんではいってはいけません”とか”ひとのものをかってにもっていってはいけません”なんて、お使いの子供でも必要ないような指示はしないよね……」


 サジナルドの指示が不適切だったわけではない。指示を受けた人間が不適だったのだ。まあ、そういう人間に指示を出した誰かが悪いのかもしれないが。


「だね。それより、執務室に部外者二人置いてったら駄目でしょ」


 そう言う翔馬に促され、ハニー・ビーたちも部屋を出る。街で起こっていることの報告はしたので、あとはサジナルドが何とかするだろうと、二人はまたフォセカの家へと向かうのであった。



「ただいまー」

「おかえりなさい、ハニー・ビーさん、ショーマさん」


 フォセカの家に着くと、おばあさんを見ると言っていたフォセカが既に帰宅していた。首を傾げると、お婆さんを連れてきたという。

 確かに、一人残しておくのは心配だよね、ハニー・ビーはそう言って裏庭に向かった。


 付いてきたフォセカとフォセカ父、裏庭で拘束されている侵入者たちに「サジナルドに対処するように言ってきた」と話し始める。


「発端は、あたしがクロウグラスを欲しいって言ったから。サジナルドはそれを聞いて”一刻も早く集めるよう”指示を出した。フォセカのお家にも媼にも、他の人たちも迷惑かけた」


 ごめん。ハニー・ビーが頭を下げる。


「いえ、ハニー・ビーさんのせいじゃないです」


 フォセカが慌てて言い、侵入者たちは「本当に領主さまと昵懇だったのか……」と青い顔をする。


「お詫びになるかどうかは分からないけど、あたしの提案は多分、鉱山採掘とはまた別に街の特性になると思う。埋め合わせにガッツリ領内の薬師を仕込む」


 その言葉の通りハニー・ビーが薬師を鍛えた結果、紫石英から作る鎮静・鎮咳の薬は薬効が高く国中から注文が来るほどのものとなったし、金石英は今までこの世界には無かった新薬として、ランティスだけでなく全国に広まったのであった。





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