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34 瘴気浄化の旅 4

「お嬢さん、聖女様の護衛だったから国の上層部と繋がりがあったのか」


 領主の屋敷に着き、聖女三人が湯あみだ着替えだとメイドたちに連れ去られ、ガーラントが今後の事を領主と話し合うために出て行ったあと、残された護衛五人と勇者と魔女は、来客をもてなす為であろう広い部屋でお留守番である。出された茶は王城でもまだ飲んだことのない種類で、ハニー・ビーは香りをゆっくりと楽しんでいる。

 茶と共に出された軽食は、贅を凝らしたものではないが十分な量があり、翔馬は嬉しそうにそれを食していた。


 護衛騎士には過分の供応だが、そこは聖女付き――今回のみなのか今後もそうなのかは定かではないが――の名の威力であろう。


「んー。ちょっと違う。上層部と繋がりがあったから護衛に駆り出されたって感じ」


 疑問の答えを貰ってトティは首を傾げた。


「元々はどういう繋がりなんだ?この国に来たばかりなんだろう?」

「それはガーラントに聞いて」


 制約に縛られている訳ではないが、ハニー・ビーはまだ召喚の事を他言していない。聖女が召喚され、浄化の力が確定した今となっては口にしてもいいのだろうが、それによる面倒事が起きる可能性を考えたのだ。


「こんな子どもが聖女様付きの護衛とか」


 鼻で笑うように言ったのは、女性騎士のうちの一人でズズという三十手前の赤毛で茶色の瞳の女だ。赤毛と言ってもハニー・ビーのようにルビーを溶かしたような透明感のある色ではなく、黒みがかった濃い赤だ。長剣を得意とし、肩や腕周りの筋肉が発達している。


「ズズ、止めなよ~」


 止める気もなさそうに取りあえずの制止をしたのは同じく女性騎士のアルヴァ。ズズと同じ年頃で柔らかな茶色の髪と瞳を持つ、魔法も多少は使える剣士である。

 揉め事は好まないが、希や樋口に「ビーちゃん」などと親しげに呼ばれて対等な口をきき、ガーラント魔導士長を呼び捨てにする少女に好感は持っていなかった。


 もう一人の女性騎士は二人よりは年若く、序列ゆえにか口を挟むことはしないようだ。

 弓を得意とし、やや小柄で濃茶の髪と青い瞳を持っていてメリアと名乗っていた。


「ズズ先輩、止めた方がいいです。このお嬢さん、ホントに腕利きなんで、でもって容赦ないんで」

「はぁ!?トティから見ての腕利きなんて、当てになるもんですか」


 後輩に諫められたことで余計に怒りの感情を煽られたようである。

 トティは止めてほしくてアーティを見るが、彼は我関せずで剣の手入れをしていた。


「お嬢さん、短気は起こさないでくれな?今はちょっと感情的になってるけど、ズズ先輩は悪い人じゃないから」


 ハニー・ビーの実力の一端をを知るトティは、自分が声を掛けると更に激昂するズズではなく、今度はハニー・ビーに向かって片手拝みにして言う。その行為が余計にズズを苛立たせることは分かっていないようだ。やはり、単純で直情的で腹芸の出来ない男である。


「ん。トティにーさんの顔を立ててあげよう」


 ハニー・ビーは女騎士に何と思われようと、特に気にならない。

 自分に対しての敵意は、聖女に近づきたいのにままならない自分たちに比べてこの子供は親しすぎるという――要は妬みだと分かっているのもあるし、彼女らの実力は一目で見て取れたので気に掛けるほどのことも無いと言う判断だ。


 ただ、煩いのは嫌なので黙ってくれないかな、と思うだけ。


 ハニー・ビーの言葉と態度で、ズズは更に不満を募らせた。トティと違って、ハニー・ビーは自分の言動で彼女が怒ることは分かってやっている。直接的に嫌味を言われた意趣返しである。

 この場合「やられるまえにやれ」はおやすみで「やられたらやり返せ」の出番である。


 個人の行動ならともかく、今回は国の依頼での集団行動だ。基本的に自分のやりたいようにやるハニー・ビーでも、揉め事を起こす方が面倒な事になる事は分かっている。


「ズズ、口の利き方も知らないコドモに何言ったって仕方ないよ~」

「だって、アルヴァ!」

「どーせ、あれよ。護衛と言う名目だけど、聖女様方の無聊を慰める為のお小姓みたいなもんでしょ~。騎士の私たちに怖気づいてるんだろうから、放っておきなよ~」


 瘴気浄化において出番の無かったハニー・ビーは、その力を見せる場面もなく、知らなければただの少女なので、女騎士たちが侮るのも仕方がないと言えば仕方がない。


「騎士のお姉さんたち、ビーちゃんは王様に対してもこんな話し方なんで、その辺は勘弁してやってください」


 割って入ったのは翔馬だ。


「はぁ!?なんでこんな小娘が陛下と言葉を交わすのよっ!適当な事を言ってんじゃないわよ」


 翔馬が召喚された勇者だとは知らないズズが憤る。彼もハニー・ビーと同じく出番が無かったし、勇者の名乗りも上げていない。

 出番が無かったのは騎士たちも同じなのだが、彼女らは今までに十分お互いの実力を知っている。


「――ショーマにーさん、フォローありがと。でもさー、この人たちなにを言っても分かってくれそうもないからいいよ」

「でもさー、ビーちゃん怒らせたらエライ事になっちゃうじゃん。ヤだよ、俺、瘴気浄化の護衛で来てるんだし揉め事とかさぁ、血の雨が降るとか、来た時に11人だったのに帰りは生きてるのが9人で、二人が死体になってるとかさぁ」


 ハニー・ビーの力は伝聞ではあるが承知している翔馬である。


「ん。にーさんは血を見るの嫌か。殺さないよう、血を流さないよう気を付ける」

「頼むよ、ビーちゃん。ビーちゃんならその辺の塩梅は余裕でしょ?」


 平和主義の残念勇者は、分からずに煽っているのか、わざとやっているのか。


 ズズだけでなく、アルヴァも怒りで鬼女の形相である。




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