天使と祈り
眠ると死ぬ。
毎日、毎日。今日の僕は死んでるのかもしれない。
昨日の僕と今日の僕の連続性は確かに保たれている。けれど昨日の僕が死んでいないことの証明にはなりえないんだ。
夜半。ベッドに潜る。寝ないように起きようとし続けても、眠りへの誘いが高まるだけなんだ。
反抗して手を振りほどいても、視界をフェードアウトさせていく。
怖い。眠りはいつの間にか音もなくやってくる。
枕にしがみついて生の世界を必死につかもうとしても、きっと離してしまうだろう。
吊るされた天使よ、どうか僕のためだけに祈ってはくれないか?
僕の安眠を永眠ではないと肯定し祝福してくれ。天使よ、天使よ、安息を祈り給え。
あぁ、ダメだ。
君らでは天使になりえない。
その躯体は既に成熟し腐敗を始めてしまっている。
幼少の頃にあった天使の羽は今や埋もれている。首の骨を砕き、君らは僕に永遠の祈りを捧げる贄となったのだから、その背には羽がなくてはならないね。
膝間づくための両足を斬ることはできない。祈るために針金で雁字搦めた祈手もはがすことはできない。
蝶番を付けて、背中を開こう。
翼が生えた。贅肉に埋もれたその下からかつて天使の羽だった骨が出る。翼のように、天使のように。
天使だ。天使だ。僕だけの、僕の安息を祈っていて。
今日も怖かった。生きることも眠ることも僕には怖いんだ。君たち天使だけが僕の毎日を穏やかに健やかに祈り続けていて。
吊り下げられた僕の天使。無性に切り裂かれた君。ザクロから滴る血は丘にて十字架にかけられた聖人のもの。穢れはない。僕は純粋無垢なのだから。
眼をゆっくりと閉じる。羽の生えた天使がうっすらと見えた。