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大阪環状線発車メロディー 森ノ宮駅・桃谷駅、大阪城公園駅・鶴橋駅・京橋駅、天満駅・西九条駅、芦原橋駅 編

作者: 尾塚うどん粉

昔は、大阪人は、二人寄ると漫才になるとよく言われたが、最近はセクハラ、パワハラ、モラハラを意識するようになり、冗談が言い難い時代になってきた、また、若手と、ベテランの漫才の形態も変わってきているし、笑う場面も、若い人と、年配で違うところがあると感じている、いずれにせよ、大阪は、永久に、笑いの王国であって欲しい。

水森茜と大熊かおりは、中学、高校の同級生で、仲良しだった、二人は、教室で、冗談を言い合い、皆を笑わせているので、高校3年生の文化祭で、クラスから推薦されて、「クラス対抗、お笑い選手権HYグランプリ」で漫才をすることになってしまった、HYとは、学校名、柏葉はくよう学院高校のHとYである。

「嫌やは、恥ずかしいやんか」

皆の手前、一応言ってみたが、内心は嬉しかった。放課後、話し合った結果、二人とも、森ノ宮駅で待ち合わせて通学している、この駅の発車メロディーは「森のくまさん」で、うってつけに、二人の名前が、水森と大熊である、そこで、自分たちの名前を、発車メロディーにあやかって「森の熊さん」というコンビ名にすることを決めた、学校では、自然と「突っ込み」が大熊かおりで「ぼけ」が水森茜になるので、できるだけ、このパターンになるようにと思っているが、冗談はいくらでも言えたが、ネタを考えるのは思った以上に難しく、全くいい案が浮かばなかった。

柏葉学院高校は、進学校で、ほとんどの3年生は、この夏休みに勝負をかける、彼女二人も進学希望だが、受験勉強に集中できなかった、9月上旬の全国模試が終わった1週間後が、文化祭である、夏休みの多くの時間を費やして、TVの漫才の番組や、吉本新喜劇の中継を観て研究をした、実際に,NGKに足を運び、プロの漫才を聞きに行った時、最初に登場した、名前も聞いた事のない2~3組の20分間の漫才は、全く面白くなく、誰も笑わない、これを見て、少し安心した。

学校の最寄り駅は、桃谷駅で、先生をはじめ、ほとんどの生徒は、この駅の発車メロディー、河島英五さんの「酒と泪と男と女」は、登下校時に、毎日聞いている、これをテーマにしようと意見が一致した。

夏休みは、瞬く間に終わってしまった、結局、受験勉強は、ほとんど出来ず、全国模試の結果は、よくないと予想出来る、いよいよ、明日が本番である、今夜は、水森茜の家に泊まり、最後のリハーサルをした。


司会進行は、生徒会長である、

「次は、漫才で、水森さん、大熊さんのコンビ、森の熊さんです」

皆、彼女達が、森ノ宮から、通学をしているのを、知っているようで

「おおーなるほど、発車メロディーやな、上手い事、名付けるな」

拍手が起こった

駆け足で、舞台中央まで行った

「どうもー、3年2組の森の熊さんです」

再び、拍手が起こった、二人は歌い出した

「ある日、もりのなか

くまさんに 出会った

はなさく もりのみち

くまさんに 出会った」

この歌は誰もが歌える、会場全体で、手拍子をしてくれている

「くまさんの いうことにゃ

お譲さん おにげなさい

スタコラ サッササッサノサ」

ここまで、歌った時

森「わー」

大声をあげ、茜が舞台のそでに走って行った

熊「茜ちゃん、どこに行くねん、今、始まったばかりやんか」

森「今、おじょうさん おにげなさいと、ゆうたやんか」

熊「誰が、おじょうさんやねん、あんたは、もう、おばさんや、これは歌や」

森「なんで私が おばさんやねん」

会場から、笑いが起こった。いい滑り出しだ つかみは成功した

熊「さっきな、桃谷駅で、英五の曲が流れていたわ、私、英五が好きやわ」

森「へぇー好きなん、私はえいご嫌いや」

熊「なんで、嫌いなん」

森「この前の、模試もあかんかったし、それに吉村先生は、私に欠点ばかり付けるもん」

熊「それは、イングリッシュの英語や、私は河島英五や」

まだ、新人教諭だが、結構、点数に厳しい、吉村先生の名前が出て、大きな拍手が来た

森「河島英五って誰やねん」

熊「知らんの?酒と泪と男と女を歌った人やんか、大阪の人やで」

森「男と女が鮭弁当を食べて、喜んで涙している歌か、私は、焼肉弁当をもらったら泣くな」

熊「魚の鮭と違う、アルコールの酒や、茜ちゃんは、おっさんみたいなギャグいうな」

森「さっき、かおりは、私を、おばさんやと言ったやんか、結局、私は、おっさんか、おばさんか、どっちやろか」

熊「そんな、難しいこと、大人にならんと分かれんへんのと違うかな」

爆笑が起こった、順調に進んでいる、持ち時間は5分、あと1分だ

森「やっと、漫才が終わるな、これからは、皆に負けないように、勉強して、京大を目指すわ」

熊「茜ちゃんは、京大は無理やで」

森「なんで、京大はあかんの、吉村先生がまた欠点つけるからか」

会場、全員爆笑

熊「あの先生は、欠点をつけるのが趣味なんや」

森「悪趣味やな、校長先生に言って、首にしてもらおうか」

熊「ゆうたら、私達が、先に退学させられるわ」

予定にない、アドリブまで入ってしまった、時間オーバーだが、気にしない

森「それより、なんで、京大あかんか、早く言って」

熊「茜ちゃんは、一人っ子やろ、今更、兄弟は無理や」

森「もう、ええわ」

茜は、右手の甲で、かおりの胸を軽くたたき、お辞儀をして、舞台から下りた

会場から、拍手が、鳴りやまなかった、二人は抱き合って泣いた、2か月間、辛く、苦しかった、受験勉強を犠牲にして、たった5分間のために練習してきた成果が出た、吉村先生が、笑いながら近寄ってきた

「面白かったで、良かった、良かった」

凄く喜んでくれた、審査結果は、勿論、優勝だった。


入試も終わり、無事に志望校に合格をしたが、二人は、別々の大学に通っている、入学して、しばらくすると、水森茜から電話があった、

「かおりちゃん、大学、楽しいか」

「全然、楽しくないわ」

二人とも、サークルに入らず、勉強もせず、バイトだけの、だらだらした生活を送っていた

「私も、全然楽しくないねん、なあ、もう一度、漫才せーへんか」

「えー、漫才」

かおりは、考えてもいないことを言われ、驚いた

「今のような、だらだらした生活を送っていたら、あかんわ、高校の漫才に集中していた頃が、一番充実していたやろ」

「そうやったな」

「何処か、素人漫才選手権のような、コンテストを探して、チャレンジしようや」

「ええな、やってみたいわ」

意見が一致した

「でも、大学は、卒業しような、それが条件やで」

「勿論や、ちゃんと卒業はする」

「私な、大学を卒業してから、もう一度、NSCに入学して、お笑いを勉強して、プロの漫才師になりたいねん」

茜が言い出した

「ええ、NSCか、それもいいな、」

かおりも同調した

話し合いの結果、高校と同じ「森の熊さん」で活動することになり、台本作成に取り掛かった、高校のように、身近な吉村先生のネタでは、勝負は出来ない、誰が聞いても分かってもらえるネタが必要だが、難しかった。

「なあ、私ら、桃谷駅のネタで、スタートしたやろ、だから、これからも、環状線のネタで勝負せえへんか、大阪らしくていいやん」

かおりが提案した

「そうやな、19駅があるから、19のネタができるな、はははは」

方針が決まったが、いいネタが浮かばず苦しんだ、1か月以上時間を要したにもかかわらず、満足のいく内容ではなかったが、一応完成した、それ以後、必死で、コンテストを探すが、二人の学校の都合や、試験と重なり、出場は無理だった、

「かおりちゃん、これ、城天で聞いてもらおうや」

「ええ、城天・・・・」

城天とは、環状線、大阪城公園駅から大阪城ホールまでの間にある公園で、ストリートミュジシャンが路上ライブを行っている場所である。

8月、大学が夏休みに入った、今日は、城天で、漫才ライブをする日である、緊張しながら大阪城公園駅に着いた、この駅は、大阪城に因んで、ほら貝の音が発車メロディーだが、ほとんどの人は、これが、ホラ貝の音とは気付いていないと思う、

「ぶ、オオオオオオー」

山伏が吹く、ホラ貝の音が聞こえている、いよいよ出陣だ、緊張して、二人とも黙っている、駅からライブを楽しみにして、多くの人が降りてくるが、漫才を聞きにくる人は誰もいない、ミュージシャンの方々に迷惑をかけないように、、公園の隅に陣取って、ブルーシートで舞台を作り、模造紙に「森の熊さんです、漫才をします、聞いてください」と大きく書き、聞いてくれる人を待った、10分間立ち続けたが、誰も立ち止まってくれない、悲しくなってきた。

「おおー」

男の子の声がした、

「あれー、何処に行くの」

あの時、司会をしてくれた、生徒会長の長井道紀君だった、彼はよく、ライブを聞きに、城天に来るという、

「長井君、今日は、漫才を聞いてや、お願いや、後で、コーヒーおごるから」

彼は、快く承諾してくれた、人間の心理って不思議である、一人が、ブルーシートの前で待つと、数人が、興味深々と、集まってきて、数分で10名を超えた、中には年配の男性もいた、

いよいよ、デビューである、まず、カーテンに隠れて、水森茜は、森をイメージした、緑のワンピースに着替え、大熊かおりは、着ぐるみの熊のキャップをかぶり、緊張しながら、観衆の前に立った、

「どうもー、森の熊さんです」

観衆から、パラパラと拍手が聞こえた

熊「城天っていいな」

森「そうやな、美味しいもんな」

熊「なんで、城天が美味しいねん」

森「白い、てんぷらやろ」

一人だけ、ニコっと笑ってくれた

熊「てんぷらと、違うわ、城天って、公園や、ここで、路上ライブをしてはるんや、あの有名な、シャ乱Qを結成した、つんくさんは、ここでスカウトされたんや」

森「へえ、そうなんや、つんくさんって、すぐに疲れて寝てしまう人なんやな」

熊「そんな事ないで、元気な人やで、なんでやのん」

森「バタンキュウで、寝てしまうんやろ」

誰も、笑ってくれなかった、

森「この前にな、用事で鶴橋駅に行ってん」

熊「人が多かったやろ」

森「発車メロディーの、ヨーデル食べ放題の曲が流れたんやわ」

熊「そら、駅やもん、流れるわ、それが、なんやのん」

森「ヨーデルやろ、だから、パチンコ屋が焼肉の食べ放題をするのかと思ってな、店に入ったんや」

熊「あんた、アホやろ、それで、どうなったんや」

森[玉は、ヨーデルけど、肉は全然出なかったんや」

熊「あたりまえや、かおりちゃんは、パチンコするんや、知らなかったわ」

森「パチンコだけに、たま(玉)にするわ」

熊「おっさんギャグ言うな」」

観衆「シ~~ン~・・・・・・・」

熊「私も、前に、彼と鶴橋に、焼肉食べに行ったで」

森「茜ちゃんは、彼氏おるんや、どうせ、しけた顔した男やろ」

熊「違うわ、IT企業の社長の息子で、イケメンの金持ちやで」

森「その顔で、信じられんわ」

熊「彼が、一杯、遠慮せんと食べてもいいよと、言ってくれたから、一杯食べたってん」

森「羨ましいわ」

熊「店員さんが、最後に、お勘定書きを持ってきたら、彼は、それを、私に渡して、とっとと帰ってしまうねん、腹が立つやろ」

森「ほんまや、なんちゅう男や、」

熊「でも、しょうないわ」

森「なんで、しょうないねん」

熊「ここは、鶴橋駅や、勘定せん(環状線)や」

森「そんな、アホな」

舞台から下りた、長井君だけが、拍手をしてくれ、他の人は、あっと言う間に消えて行った。

自信はあったが、受けなかった、

「長井君、どうやった」

「この前のほうが、面白かったで、ちょっと緊張してたな、堅かったで」

大阪の人は、耳が肥えている、勉強し直しだと、反省した、それ以後、M1グランプリで優勝した、銀シャリ、霜降り明星、ミルクボーイ、マヂカル・ラブリーの漫才のネタを何本も見た、ある時は、家族にも見せて、両親、兄弟の反応も、観察して、お互いのデーターを持ち寄り、検証もした。高校時代より、時間に余裕があるため、NGKにも何度も行った、相変らず、最初に登場する、若手コンビには、誰も笑わない、始まったばかりなのに、トイレに立つお客もいる、人気のコンビが登場すると反対に、トイレから走って戻ってきて、場内が活気づく、さすがに、しゃべりもスムーズで、上手いと感じる、二人は漫才より、お客の反応を観察していると、若い同年代の人は、大爆笑をしているが、年配の人は、「あれどこがおもしろいのかな」というような顔で、黙って、きょとんとして、笑っている人を不思議そうに見ていた。、家で見せた、両親の反応とよく似ていた。

後半に、ベテランコンビが登場してきた、若い人は「おっさんか」というような冷たい目つきで見ている、内容によっては、トイレに行く準備もしている様子だ、始まると、結構面白い、トイレに行こうとしていた人も座り直し、どんどん漫才に引き込まれて行き、若い人も、年配も笑っていた、何組目かに、中堅コンビが登場した時、話の中で、驚くシーンがあり、「えええっ」といい、顔を変形させ、大袈裟な驚きの顔を作って、会場の方に向けると、大爆笑だった、かおりが、茜の腕を引っ張った、

「あれは、顔が面白くて、笑っているんやな、ネタは、面白くないな」

小声で、かおりの意見を言った

「そうやな、ネタはしょうもないな」

茜も、そう感じていた、

家に帰り、笑う、笑わないの意見交換をした、

「ネタの内容かな」「話術かな」「若者と年配の面白い感覚の差かな」「間の取り方かな」

いろいろな意見が出たが、結論は出なかったが、二つ、共通する事を発見した。

年配の人は、例えば「なってねえよ」と「なってへんやん」「「おまえ馬鹿じゃあねぇの」と「アホか」の関東弁と関西弁の違いで、笑うか、笑わないかが決まってくる、もう一つは、顔の変化や、コミカルな動き、動作には、反応しないことが分かった。・・・・(注)これは彼女達だけの検証結果です。

2回生になったが、いくら研究しても、自分達のパターンはどうしても変えれなかった、

今年の夏は、京橋駅前の広場で行い、さくらを長井君に頼んでだ、この場所には、ミュージシャンのライバルがいないので、予想以上の人だかりが出来、気合が入った

熊「京橋駅の、発車メロディーって、知っているか」

森「勿論、知っているよ、大阪の人やったら、ほとんど、歌えると思うわ」

熊「それじゃあ、歌ってくれるか」

森「京橋は、ええとこだっせ、グランシャトーがおまっせ」

グランシャトーとは、TVで関西一円に放映されている、特異なCMで有名な、総合レジャービルの名前で、大阪の人なら、ほとんどの人が知っている、今、集まってくれた約20名のうち、高校生を除いた、15~6名は、この歌を唄う事を、期待していたようで、茜が、歌い始めると、喜こび、笑って、手をたたいてくれた、いい滑り出しだ、

熊「それは、グランシャトーの歌や、あんた、そこの、キャバクラ嬢か」

森「違うわ」

熊「京橋は、ゆかいな牧場の替え歌で、大阪うまいもんの歌や」

森「へぇ、知らんかった、どらえもんの歌かいな」

熊「どらえもんと違う、うまいもんや」

観衆「・・・・・・・・」

シーーーーン

森「うまいもんで思い出したけど、私、京橋の居酒屋で、バイトしてるんや」

熊「忙しいやろ」

森「お酒を運んだり、フルーツを運んだり、無茶忙しわ、焼き鳥は、服が汚れるからって、人気がないな」

熊「そうかな、焼き鳥は、人気メニューやと思うけどな」

森「さすが、京橋の居酒屋やで、お酒も、ドンペリを注文するお客さんもいるんや」

熊「京橋で、そんな高級な酒をおいている居酒屋はあるか」

森「あるよ、この前、ジーパンとTシャツで、ドンペリ運んだら、店長から、ミニスカートはけって、怒られたわ」

熊「そこは、グランシャトーや、やっぱり、あんた、キャバクラ嬢やろ」

観衆「・・・・・・・」

森「さっきな、そこを歩いていたら、イケ面の、男性に声かけられ、ナンパされたわ」

熊「そんな顔で、ナンパされた、その男性、目が悪いやろ」

森「そんな事ないで、視力1・5やと言ってたで」

熊「なんて、声をかけられたん」

森「おじょうさん、私の病院で、美容整形しませんかってな」

熊「その男性、目はいいやん」

森「そんなアホな」

観衆「・・・・・・・・・」

最後まで、誰も笑ってくれず、ショックで泣いてしまった、長井君まで泣いている、なんとかしなければと焦りながら頑張り、ネタ帳が2冊になってしまったが、限界に近い、何度も喧嘩をし、泣き、部屋を飛び出した時もあったが、いつの間にか戻ってきて、また考えた。


暗中模索のなか、3回生になってしまった、今年は、天満駅プララ天満の前でおこなうことになった。

この駅の発車メロディーは、大阪出身のaikoさんの「花火」である。

熊「aikoさんの花火、いい曲やな」

森「ほんまや、いい曲や、あの歌好きやわ」

熊「ほな、歌ってくれるか」

森「ええ、人前で歌うの、恥ずかしいやん」

熊「歌われへんねやろ」

森「歌えるわ、・・歌うで・・・・ちょっと待ってや・・皆の前で歌うと、印税がかかるのと違うの」

熊「カラオケ違うから、大丈夫や、早く歌い」

森「歌うで・・・・・・・大きい声で、歌うと、買い物にきてはる人に、迷惑がかかれへんか」

熊「そしたら、小さい声で、歌ったらええやん」

森「小さい声で歌うわ・・・・・・1番だけでいいか」

熊「1番でも、2番でもええから、早く歌いや、皆も待ってはるで」

森「歌うで・・・・た~まやー」

熊「それは、掛け声や」

観衆「・・・・・・・・・・」

熊「知らんのか、こんな有名な曲、知らんとは、考えられへんわ」

森「そしたら、熊ちゃん、歌ってえな」

熊「私がか・・・・よく聞いときや・・・た~まやー」

森「あんたも、知らんのか」

観衆「・・・・・」2~3人がニタッと笑った

熊「さっき、大阪天満宮で、学問の神様に、お参りしてきてん」

森「えっ、トイレの神様が、天満宮に祀ってあるのか」

熊「違う、トイレの神様は、植村花菜さん、天満宮は、学問の神様で、菅原さん」

森「それは、違うわ」

熊「何でやのん、有名やで」

森「菅原さんは、学問が嫌いで、高校を中退したと、言ってたで」

熊「どこの菅原さんやねん」

森「天満駅で、花火、売ってたわ」

熊「もう、ええわ」

観衆「・・・・・・・・」

今年も、受けなかった、今回は、3年間で一番出来が悪かったかもしれない、あれこれ考え過ぎて、しっかりとした内容がまとまらず、自信がなかったのが、はっきり結果に出てしまった。さくらの長井君も、何も言わず、帰ってしまった。


4回生になった、、

「もう一度だけ、チャレンジしようや、これで、受けなかったら、そこで考えよう」

かおりが言った、茜も同意した、

今年は芦原駅前で行う、さくらは、長井君が最後まで協力して務めてくれた。芦原駅の発車メロディーは、芦原橋太鼓集団「怒」の楽曲「祭り」を採用したと聞いているが、正直、聞いた事もなく、「村の鎮守の・・・」の童謡か、北島三郎さんの「祭りだ、祭りだ・・」しか、イメージが湧いてこず、苦労した、更に、4回生にもなると、お互い、卒論作成が忙しく、会って打ち合わせの時間も少なく、昨年で懲りているはずだが、今年も、暗中模索のまま、スタートすることになってしまい、結果は予想できた。

森「芦原橋にきたから、ついでに、西九条に住んでいる、おかんの家に行ってきたんや」

熊「おかんって、ミルクボーイの真似したらあかんで、怒られるで、まさか、コーンフレークの話と違うやろな」

数人が、ニタっと笑ったが、たぶん、ミルクボーイのコーンフレークのネタを思い出して、笑ったのだと思う

森「違う、違う、おかんは、駅の近くに住んでいるから、電車や、笛の音が、うるさいらしいわ」

熊「わかるわ」

森「でも、駅の東側は、そうでもないらしいけど、西側が、ひどいんやて」

熊「そうなんや、風向きの関係かな」

森「だから、西側の住人から、よく文句がでているんや」

熊「そら、そうやろ、それで、どうなったん」

森「だから、駅の名前を西苦情(西九条)にしたんと違うかと、おかんが言ってたわ」

熊「お母さん、アホやろ」

森「なんぼ、友達でもアホって失礼やろ」

熊「そうやな、ごめんな」

森「アホ、違うよ、賢くないだけや」

熊「それをアホと言うねん」

観客「・・・・・・・」

熊「西九条の発車メロディーに、アメリカンパトロールを選んだのは、なぜか、お母さん言ってたか」

森「おかんが言うのには、オバマさんが、USJがあるから、アメリカらしい曲にしてくれと、頼みに来たらしいは」

熊「わざわざ、大統領のオバマさんが、西九条まで来たんや、凄いな」

森「大統領なんて、西九条に来るわけないやん」

熊「今、オバマさんが来たと、言ったやんか」

森「小浜おはまさんと言ったんや、あんた、耳悪いんか」

熊「おはまさんて、誰や」

森「西九条の、売店のおじさんや」

熊「そんな人、知らんわ」

観衆「・・・・・・」

森「その、おはまさん、イケメンで、優しくて、いい人やねん」

熊「そら、よかったな」

森「年がいもなく、おかんと、ええ仲になってしまってな」

熊「不倫か」

森「違う、違う、その人は、ただの友達や」

熊「ほんまか」

森「本間さんと違う、多田さんの友達や」

熊「本間さんも、多田さんも、私、知らんわ」

観衆「・・・・・・・」

森「おかんは、おはまさんが、急用が出来たけど、銀行が日曜日で開いていないので、明日、必ず返すからと言われて、多田さんもいるし、信用して50万円貸してあげたんや」

熊「そら、いい事しなな、人助けや」

森「翌日、電話があって、この駅、芦原橋で、返すから、待っていると言うんや」

熊「律儀な人やな」

森「そうやろ、高いケーキまで、お土産に買って、駅に行ったらおれへんね」

熊「トイレにでも行ってはたんか」

森「二人とも、逃げたらしい」

熊「えっ、逃げた、芦原橋だけに、後の祭りやな」

森「もう、ええわ」

茜は、右手の甲で、かおりの胸をかるくたたいた、茜は感極まって泣いていた、かおりも涙していた

パラパラと拍手は起こった

観衆「・・・・」

ほんとうに「もうええわ」だった、苦しかったが、楽しかった、充実した4年間が送れた、師匠もいない、学校にもいかない、誰にも、聞かず、自分達だけで研究し、考えることに限界を感じていたが、精一杯やったことで悔いはないが、受けなかったことは悔しかった。


数日後、今後の相談をした、

「楽しかったわ、でも、受けなかった事は悔しいわ、私、やはり、NSCに入学して、プロを目指すわ」

水森茜は、きっぱり言きった

「凄いな、前から話そうと思っていたんやけど、内緒にして悪かったが、私、長井君と付き合っているねん」

大熊かおりが、打ち明けた

「えっ、長井君と、いつからや」

「城天の後からや」

「そうやったんや」

「長井君、国家公務員試験に合格したやろ、だから、来年から東京やねん」

「官僚候補やもんな」

茜も凄いと思っていた

「長井君な、一緒に東京に行って欲しいと、プロポーズのような、でないようなことを言われて、漫才もしたいし、結婚もしたいし、悩んでいるねん」

まだ返事はせず、就職はする気はなく、NSCと悩んでいた

「私に、遠慮しないでええよ、官僚の妻ってかっこいいやん、漫才師では無理やわ、あはっはっは、一緒になり、応援するわ」

茜の言葉で、決断が出来た。


二人は、それぞれ、違う道に進むことになり、10年が経過した

「ママ見て、あの漫才面白いで」

子供の声で、炊事の途中だったが、吉村茜は、慌ててTVを見た

最近、人気上昇中の、高学歴漫才コンビ「熊の道」が、映っていた。熊は、長井(大熊)かおり、道は、長井道紀で、道紀は、国家公務員の道を選ばず、かおりと一緒にNSCに入学をし、プロの漫才師になった、水森茜は、NBCに入学手続きをした帰り、かおりに最後まで内緒にしていたが、大学3回生の時から付き合い始めた、英語の吉村先生から、プロポーズをされ、何の迷いもなく、結婚の道を選んだ。








彼女ふたりは、最近の、コミカルな動きを取り入れたり、リズミカルな、スピードのある漫才ではなく、昔ながらの、しゃべくり漫才に徹してくれた、お陰で、ほとんど観衆からは受けなかったが、彼女達に敬意を示したい。

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