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第三話「最近の」

「で?」

「え? で? って……」

「最近、お前達どうなんだ?」


 とある学校からの帰り。

 俺は、秋久と由果と遭遇し、公園のベンチに腰掛け対話していた。

 由果を中央にし、左に俺、右に秋久が座っている。


「どうって言われても、特には」

「あなたと違って、私達は節度を守っているの」

「まるで俺が節度を守ってないみたいな言い方だな」


 とはいえ、なんとなくは理解している。

 最近の俺は、二人との一件から解放されて気持ちが軽くなっている。そのせいか、若干距離感がおかしいんじゃないか? と思う時がしばしば。

 この前の新体操のような行為もそれだ。


「思い当たる節があるでしょ? ねえ、秋久」

「えっと……あははは」


 くっ! 秋久からもそう思われているようだ。

 

「そもそも陣。男の友達、ちゃんと作ってるの?」

「作ろうとは思っているんだが……」


 俺だって作ろうとは思っているし、実行もしている。

 しかし、今のイメージが定着しているというかなんというか。

 それに。


「陣の方から突っぱねた? どうして? せっかく友達になりたいって言ってきたんだろ?」

「それがな……」


 何人か俺と友達になりたいって男達は居たんだ。

 俺も最初は喜んだ。

 やっと男の友達ができる! ってな。しかし、男達の視線は明らかに俺へは向けられておらず……後ろでわいわい騒いでいる天澄達に向けられていた。


「なるほどね。陣目当てじゃなくて、ゆえりちゃん達目当てで寄ってくる連中が多いと」

「ま、まあ仕方ないと思うよ。僕から見ても彼女達は可愛いと思うし」

「そうね。女の私から見ても、完全に美少女。しかも、各々性格も容姿も属性も違う」

「ぞ、属性ってお前な」


 でも、その通りだ。

 四人ともまったく違う良さがある。


「ゆえりちゃんは、金髪のハーフ。性格もよく、スタイルもよく、そして小動物のような感じで可愛い。みいかさんは年上なのに年上に見えないロリ体型とあの自信満々な性格のギャップが特定の人物達に受けやすい。良とこころは」

「なあ」

「なに?」


 仲良くしている四人の説明をしている由果に、俺は横槍を入れる。


「なんで天澄だけちゃんづけなんだ?」

「だって、ちゃんって感じじゃない」

「……うん、まあ」


 そう言われるとそうだなと思ってしまう。


「続けるけど、良とこころは似たような性格で違う。良はノリは良いけど、意外とブレーキ役みたいな感じで。こころはノリにノってよく自爆するような子ってところかな」

「お前、よく見てるんだな」

「彼女達と接して印象に残らないってことはないでしょ」

「秋久もそうなのか?」

「うん、そうだね。彼女達のような人は、僕達の高校にも……いない、かな?」

「良やこころみたいな子達なら居るけど、ゆえりちゃんとみいかさんのようなのはいないでしょうね」


 くいっと、途中で買った缶のコーヒーを飲み、一息入れる。

 確かに、天澄や紫之宮先輩のような人はいないよな……そう考えると、俺ってかなり運が良いというかなんというか。

 

「ちゃんと向き合いなさいよ? あんないい子達、なかなか居ないんだから」

「……わかってるって」

「というか、あなたって意外と独占欲強いのね。あなた目当てじゃないとはいえ、友達になりたいって近づいて来た人達が居たのに」

「べ、別にそういうのじゃないって! というか、普通突っぱねるだろ? 明らかに別の目的で近づいてきてるんだから!」

「ま、まあまあ落ち着いて陣。僕も、間違ってはいないって思ってるから。由果だってそうでしょ? ね?」

「まあね。私が陣の立場だったとしてもそうしていたでしょうね」


 ……たく。

 でも、俺ってそういう感じに見られているんだろうか? 本当に、そういうのじゃないんだけどな。



・・・・



「でさー、試しにゆえりにやらせてみたら」

「マジ? やっぱ天才だねゆえりは!」

「そ、そんなことないよ。佐々倉さんの教えがうまかったからで」

「いやいや、ゆえり後輩の才は止まること知らないね!」


 翌日の昼食。

 四人はいつものように弁当を食べながら楽しそうに話していた。

 今回は、天澄がたくさんのおかずを作って来たので、それを分け合っている。卵焼きからからあげのような弁当の定番と呼べるものばかり。

 しかし、俺は昨日のことがあってか少し考え事をしていて、箸が進まない。


「な? 陣も……ん? どったの? ぼーっとして」

「あ、いや」


 佐々倉に話しかけられるも、俺はどう答えるべきかと口籠る。

 

「んー?」

「お、おい」


 俺の右隣に座っていた佐々倉は、不審に思ったのか肩に腕を乗せながら顔を近づけてくる。

 

「は!? まさか良さん。彼は」

「お? なにかわかったの、こころさんや」


 俺の様子を見て、何かに気づいた筒田が佐々倉を手招きしひそひそと耳元で呟いている。

 その後、佐々倉はなるほどなーっと俺へ向き直る。

 そして。


「ごめんな、陣。あんたの気持ちは嬉しいけど、あたしはあんたのこと友達だと思ってるんで」

「いや、なにが!?」

「陣くん! 良を好きになるのは仕方ないことだけど、良は陣のこと嫌いじゃないんだよ!」

「待て待て! なにか勘違いしてないか!」

「でも、私のことなら好きになってもいいから!!」


 もはやツッコミは無視ですか、そうですか。

 

「あ、そういえばこの前。陣の奴、こころのこと付き合いたいほど好きだって言ってたな」

「―――え? そ、そうなの? あ、えっと……その」


 おい待て。好きになって良いって言ったばかりだろ。

 なんでそんなもじもじしだす。

 本当、防御力が低いな筒田は。


「さて、冗談劇はこれぐらいにして。昼食タイムを楽しむとしましょうかね」

「あ、ああ」


 由果の言う通り、佐々倉はノリがいいがこうやってブレーキ役にもなってくれる。まあ若干やり方がおかしい時もあるけど。

 そして、筒田は調子に乗るが、結構あっさり打ちのめされる、と。

 

「……あれ? 卵焼きが、からあげもない!?」


 これ以上考え事をしていたらまた変なことを言われそうだと思い、箸を伸ばすもお目当てのおかずがなくなっていた。

 

「あ、ごめん。美味しくてつい」


 いつまでもぼーっとしてた俺も悪いけど……残しておいてほしかった。


「だ、大丈夫だよ一色くん。ちゃんと一色くんの分は残しておいたから」


 そう言って落ち込む俺へと卵焼きとからあげが二つずつある紙皿を見せる天澄。


「ありがとう、天澄。お前は本当……」

「ちなみに私も一個だけ卵焼きを残してある。食べるかな? 陣後輩」

「食べます」

「おーい、こころさんや。いつまでも妄想に浸ってないで帰ってこーい」

「ま、待って陣くん。やっぱりそういうことは節度を守って」

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[一言] これが卵焼きの魔力か…
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