プロローグ
私は他の人と違う。
日本人だけど、それは半分だけ。
お父さんと同じ金髪は自慢だったけど、周りからしたら目立つ髪の色。
最初こそ、金髪が珍しくて話しかけてくれる子達は多かった。
私の日常が壊れ始めたのは、お父さんが交通事故で死んだ時から。
お母さんは、一人でも育てて見せるとアルバイトを掛け持ちをして……過労で倒れ、そのまま。
そして、本格的になったのは叔母さん引き取られてから。
通っていた学校も転校しなくちゃならなくなり、急な環境の変化に戸惑うばかり。
この頃の私は、いつも俯いて生活をしていた。
そのせいか、目立つ金髪も相まって虐めが始まった。
精神的に追い込まれた私は、自慢だった髪の毛を自ら短くし、母親から褒められた服も着るのを止めた。
それからは、虐めてくる子達に思い切って反撃をした。
するとあっさり虐めがなくなった。
まさか反撃をされるとは思っていなかったみたいで、ちょっと小突いただけなのに大泣き。なんだか私の方が悪者みたいになってしまった。
それが始まり。
私は、色々と悪さをした。
落書きをしたり、物を壊したり……墜ちるところまで墜ちていく。叔母さんは忙しい中、私の心をどうにかしようと接してくるけど、それを無視していた。
そんなある日、運命の出会いがあった。
なんとなくいつもと違う場所に行って見ようかなと、遠出をしたらばったり遭遇した。
「うお!? なんだお前、覚醒でもしたのか!?」
子供の頃の一色くんと。
・・・・
「おー、マッスルマッスル」
「さすがマッチョ!! こういうのやってみたかったんだよね!!」
「いや、さすがにきついんだが……」
あの頃からは考えられないけど、私も一色くんもすっかりいい方向に成長した。
変わるって決めた時、もう会うことはないと思っていた。
でも、高校生になって運命的な再会をした。
それだけじゃない。
仲のいい友達もどんどんできて……毎日が楽しい。
「さあ、ゆえり後輩! 君も来るんだ!!」
「へ!? あ、あの来るってどこに?」
皆がいつもの調子で一色くんに絡んでいる。
佐々倉さんは左腕、筒田さんは右腕にぶら下がって、紫之宮先輩は肩に乗っていた。
そこから来いってことは……ことは……。
「正面しかあるまい!!」
や、やっぱり!? 予想通りだったけど、予想通りなだけに私は慌てる。
だって、正面ってことはその……。
「ほれほれー、陣くんも限界だぞー」
「あ、天澄。別に聞く必要は、ないぞっ」
女の子とはいえ、人間三人分の体重がのしかかっている。
そこに私まで入ったら……。
「ちょっ!?」
「これで少しは軽減されたな」
「まるで新体操やってみたい!!」
どうしようと悩んでいる間に、佐々倉さんと筒田さんが両足を一色くんの足に絡めた。確かに、ぶら下がるよりは軽減されるかもだけど。
「さあ、ゆえり後輩! これも青春の一ページだと思って!!」
「そーそー。これは友達同士のスキンシップなんだから」
「こ、こんなスキンシップが……あって、たまるか……!」
「えー? 嬉しくないの? ハーレム野郎くん」
「だ、だからそれを止め……!」
青春の一ページ……友達同士のスキンシップ……。
そう言われて私は動き出す。
でも、一色くんのことが心配になって止まってしまう。
どうしよう、どうしようと頭の中でぐるぐると思考が回っていき。
「うおっ!?」
気が付いた時には、体が動いていて、一色くんに抱き着いていた。
負担をかけないようにぶら下がらず地に足をつけたまま、一色くんの胸に。
「これで完成した! 央! 記念に一枚!!」
「畏まりました、お嬢様」
「いや、なんで!? いったいどう記念になるんですかこれが!?」
「私達の仲はここまで深まったという記念だよ、陣後輩」
「そう考えると、距離感おかしくない?」
「え? そう?」
「そうだよ!!」
「では、陣様も大変でしょうから。さっそく一枚」
「やめてくださーい!!!」
うぅ……恥ずかしくて、会話に参加できない……。
前回は一色陣にスポットを当てた話でしたが、新章は天澄ゆえりにスポットを当てていこうかと思います。