第十三話「青春しようぜ!」
「およ? 陣くん。この二人は?」
「ほほう? インテリ系のイケメン。さっき陣の名前を言ってたってことは、お友達ってことじゃない?」
秋久と由果の登場に、興味津々な佐々倉と筒田は、俺を挟むように立つ。
「どうなのさ? 陣くん」
「どうなの? 陣」
そして、つんつん脇腹を突ついていくる。
「じーん!」
「じーん!」
「はい!」
《じーん!!》
「えーい!! 邪魔だ! 地味に痛いわ!! 幼馴染だよ! 幼馴染!!!」
「きゃー! 陣くんが怒ったー!」
「退散たいさーん」
ほんと、このテンションには疲れる。昔の俺だって、ここまでじゃなかったぞ。けど、これで友達を作りまくってるんだよな……。
「こらこら、二人とも。今は、真面目な空気だよ? 大人しくしているんだ」
「りょ!」
「そうしますね」
紫之宮先輩が居て助かった。初めは、めちゃくちゃをやる人かもって思っていたけど、見た目が小さくて可愛いだけでめちゃくちゃいい先輩だったって、実感している。
さてと。
「わ、悪いな二人とも」
「い、いや僕は別に良いけど」
完全に、秋久は動揺している。由果は……相変わらずクールだな。久しぶりに俺と会った時もだったし。
昔は、俺と同じで元気が爆発したような性格だったのに。
「二人はデート、か?」
付き合っていることは知っている。だから、二人で居るってことはデートという確率が高い。
というかデートしかないんじゃないか?
「今日は、僕が勉強ばかりで息が詰まっているんじゃないかって。由果が心配してくれて」
懐かしいな。子供の頃も、勉強ばかりで全然外に出ない秋久を俺と由果が、よく無理やり外に連れ出してたっけ。
「相変わらずだな。高校でも、博士か?」
前回よりもスムーズに会話ができてる。もしかして、さっきの佐々倉と筒田の馬鹿騒ぎのおかげか?
いや、まさかな。
「はは。そうでもないよ。僕なんかより頭のいい人なんていっぱい居たからね。それよりも」
と、秋久は背後の四人を見る。
「その人達は?」
やっぱり気になるよなぁ。
「えーっと、と、友達?」
友達。友達なのだが、幼馴染達の前かつ女子しかいないので、思わず疑問系になってしまった。
「疑問系かーい!」
「陣後輩! それはさすがに悲しいぞ!!」
「そーだ、そーだー」
「と、友達じゃなかったの? 一色くん」
ぐお!? なんという猛抗議!? やめてくれ、俺だって友達だって思っている。
しかし、己の自信のなさが言葉となってしまった。
「と、友達だ!!!」
「グッジョブだぜ!!」
「それでこそ!」
「けど、顔が赤いですよ?」
「恥ずかしいんだね。わかるよ……」
そうだよ、恥ずかしいんだよ。だって、幼馴染達以外にもめっちゃ見てるんだからさ。
しかも、さっきの大声のせいでなんか微笑ましそうな視線が。
「ま、まあそういうことだ。俺だって、いつまでも昔の俺じゃないってことだ」
「確かにね」
と、由果がやっと口を開ける。
しかし、その視線は冷たいものに見えた。
「昔は、女になんて興味がなかったのに。今じゃ、ハーレムを形成するほどの女たらしになっちゃったみたいね。幼馴染として、恥ずかしいんだけど」
「ぐおっ!?」
由果の言葉の剣により、俺は膝から崩れそうになる。
「わーお、なんて言葉の攻撃」
「大丈夫かな? 一色くん」
「これは陣後輩の戦いだよ。手出し、口出し無用といこう」
別に戦っているわけじゃないんですが。けど、その通りだ。俺は現実を受け止め、前に進むと決めた。
「ゆ、由果。陣だって、変わろうとしているんだから」
「変わり過ぎじゃない?」
「まあ、確かに」
くっ! 秋久も同意するとは。
「秋久。早くいこ。どうやらお邪魔みたいだし」
「あ、由果! ちょっと!」
うーん。やっぱりまだ由果とは無理か……でも、時間がかかろうといつかは。
「よくやったよ、陣後輩」
「いやぁ、クールビューティーだったね幼馴染ちゃん」
「昔は、元気なやつだったんだがけどな」
「そうなの?」
中学生になった時からだったかな……少しずつ落ち着きが出てきたのは。
「おつかれさん。けど、君はまだまだ疲れることが待ってる」
「佐々倉……少しやすま」
「おっしゃー! 青春しようぜー!! 荷物持ちー!!」
「せめて、名前で呼んでくれ筒田……」
休まずに荷物持ちとして働かせるかと思ったが、癒し担当天澄の説得により近くの喫茶店で休憩してから買い物に行くことになった。