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第十二話「考えるより、行動だ」

 あれからずいぶんと周りの印象は変わった気がする。

 最初の挨拶を失敗を糧に、努力してきた。

 その結果、少しずつだが相手側から挨拶をしてくれるようになった。


 特に天澄は、すごい。

 あの時、失敗した陽キャの二人と友達になったという。それを聞いた時は、マジか!? と声を上げた。


 陽キャの内、一人は黒髪サイドポニーテールの佐々倉良。二人目は、赤みかかった茶髪セミロングヘアーの筒田こころ。

 二人とも、前々から天澄のことを観察していたらしく、常々友達になりたいと思っていたようだ。


 え? 俺? 俺はな。


「そ、それじゃ!」

「あっ」


 少しは挨拶を返してくれるようになったが、それでも壁は厚い。

 噂によると、俺から謎の威圧のようなものを感じるそうだ。

 

「なんでだ……」

「うーむ。確かに、陣後輩はがたいも良いし、顔にも傷があって、身長も高い。あたしはかっこいいと思っている。でも、怖いと思う者達も少なくはないようだね」


 膝から崩れる俺を、冷静に分析しつつ、頭を撫でてくれる紫之宮先輩。あれだ。俺のクラスの男子は、なんていうか文系な者達多すぎる。

 ならばと、運動系の男子に話しかけるもどことなくぎこちない。なぜだ、なぜなんだ! 


「こうなったら女子に!」

「うん! その意気やよし! では、あそこに居る良後輩とこころ後輩と仲良くなってきたまえ!!」

「は、はい!!」


 本当は、男友達を増やすべきなのだが、仕方ない。

 俺はいく。

 やってやるさ!


「あっ、陣じゃん。なに? あたしらと友達になりたいの?」

「おっけおっけ。じゃあ、連絡先交換しちゃおうぜ!」

「え? あ、はい」


 やった! 友達が増えたぞ!!


「って、そうじゃない!」

「え? なにが?」

 

 佐々倉と連絡先を交換している中、俺は叫ぶ。


「俺から友達になりたいって言って、友達にならなくちゃ意味がないんだ!」

「えー? 別にいいじゃん。そんな細かいこと」


 と、俺の言葉なんてお構いなしにもたもたしている俺の手からスマホを奪い取り、連絡先をさっさと交換してしまう佐々倉。


「そうそう。それに、いちいち意味なんて考えてたら一生友達増えないぜ?」

「うぐっ!?」


 友達が増えない。

 その言葉は、今の俺に効く。


「というか、陣はさ。考えすぎだよ。ゆえりなんて、あたしらの方から友達になりたいって言ったら、素直に受け入れてたよ?」


 それはわかっている。めちゃくちゃ嬉しそうに一から十まで話してくれたからな。

 あの時は、自分のように俺も喜んでいたが、それと同時に負けてられないとも思った。


「……」

「ん? どったの良」


 なんだ? 佐々倉が俺のスマホを筒田に。


「もしかしてさ、陣くんってば高校で友達になったの女子だけ?」

「……考えてみればそうだな」


 天澄に始まって、紫之宮先輩に佐々倉と筒田。

 うん、女子ばっかだ。


「このハーレム野郎!」

「突然の罵倒!?」

「こらこら、こころ後輩。陣後輩も、頑張っているんだ。優しく接してくれ」

「はーい。ほい、うちと良の連絡先登録したからね。ゆえりちゃん共々よろしく!!」

「男友達も増やすんだぞー」

「頑張り、ます」


 こうして、二人の女友達が増え、応援の言葉をもらった俺は、再び友達作りに奮闘するのだった。



・・・



「というわけで、今日は思いっきり遊ぼうじゃないか!!」

「おー!! ほら、ゆえりも!」

「え? お、おー!!」

「うちも、おー!!」

「お、おー」

「なんだい、陣後輩。元気がないぞ! 寝不足なのかい? それとも風邪気味?」


 太陽がギラギラと輝いている。

 空には雲一つなく、まさに晴天なり。

 そんな空の下、女子達ははしゃぐ。

 そんな中、唯一の男である俺は、普通は喜ぶところだが、なかなかテンションが上がらない。


 いや、俺だって、テンションを上げたいさ。

 しかし。


「先輩。あれですよ。自分一人で友達ができないうえに、また変な噂が流れてるらしいんで」

「変な噂? それはなんだい?」

「私の情報網によれば、陣くんは、女子ばかりと仲良くなってるハーレム野郎って一部で言われてるらしいですぜ」


 不名誉だ! 俺だって、男友達がほしいさ! ハーレム野郎って羨ましがるなら、俺と友達になってくれよ!

 

「というか、その一部ってお前じゃないよな? 筒田」


 俺は、筒田からハーレム野郎と言われたことを覚えている。情報網とか言いつつ、筒田が広めたんじゃないかと疑っている。


「そんなことないって。私は、友達をおとしめるようなことは絶対しないから」

「俺にはハーレム野郎って言ったのにか?」

「それはあれだよ」


 あれ? あれってなんだ。


「陣くんなら大丈夫だっていう信頼があったから!」

「そこまで仲良くないのに信頼!?」

「悪いね、陣。こころってば、時々フィーリングで色々と言っちゃう時があるけど、悪い子じゃないのよ?」


 それは、まあなんとなくわかるような気がするけど。

 紫之宮先輩とはまた違った元気っ子。

 昨日今日友達になったばかりだというのに、落ち込んでいる俺の頭をばしばしと叩きながら、ごめんってーとか言っている。

 反省しているのかどうかわからない。今まで、関わったことのないタイプだ。対して、佐々倉は同い年だが、お姉さんっぽい雰囲気がある。自分でもはっちゃけつつ、ブレーキ役のようなことをしているのだろう。


「わかったよ……とりあえずは、落ち込むのはやめだ」

「本当に、大丈夫? 一色くん」

「ああ、なんとかな」


 なんか、他の三人に比べて見た目こそ派手だけど、天澄が一番まともに見える。

 なんかこう、癒し? みたいな。


「それで、紫之宮先輩。今日は、いったい何をするつもりですか? こんな街中に来て」


 今日は、いつもはほとんど行かないようなところに来ている。

 周りを見れば、高層ビルや多種の店が建ち並び、お洒落な服に身を包んだ人々が楽しそうに歩いている。

 家族とでは、たまに訪れるが、友達とは全然と言っていいほど来たことがない。


「決まっているじゃあないか。遊ぶんだよー!!」

「買い物だー!!」

「男は、荷物持ちだぜー!!」

「男って俺だけなんだが!?」

「あははは……」

 

 なんとなくそうだろうなって思ってたけどさ。あれ? そういえば央さんは? こういう時こそ執事の出番というもの。

 周囲を見渡していると、物陰に央さんを発見。

 どうやら後ろから、俺達のことを見守ってくれていたようだ。視線に気づいた央さんは、にっこりと笑顔を返す。


「ちなみに、央は本当にピンチの時じゃないと現れないからね!」

「つまり、荷物に押し潰されない限り、俺は」

「大丈夫だって。友達の陣くんをそこまで酷使しようだなんて思ってないから」


 さわやかに親指を立てながら、肩に手を置く筒田。

 が、俺は疑いの目を向けるのだった。

 でもまあ、付き合っているうちに楽しくなるだろ。ただの荷物持ちにならないように、俺も楽しまないとな。あんまりお金ないけど。


「よーし! まずは、あっちの服屋へゴー!!」

「お、おー!」

「お? ノッてきたね、ゆえり」

「うんうん。仲良きことは青春かな」

「あんまりムチャするなよ? 天澄」

「うん。頑張る!」


 いや、頑張りすぎないようにって言ったんだが。


「陣?」


 ……こ、この声は。

 さあ、いざ買い物へ! という刹那。聞き覚えのある男の声が、耳に届く。

 ゆっくりと声のしたほうへと体を向けると。


「あ、秋久。それに」


 そこには、私服姿の幼馴染二人が立っていた。


「由果」


 なんてタイミングで、遭遇してしまったんだ……。

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