Twin come beast【3】
明日も更新するからよぉ……止まるんじゃねぇぞ……
その戦場には瘴気と暴風が吹き荒んでいた。
「これが本当にこの世の絵面なんか? 地獄の間違いやろ」
「まるでハリケーンと地震がいっぺんに起きたみたいだねぇ。正直言って、割り込む余地が無いよ。仮に割り込めても多分直ぐに死んじゃうかな」
凩とジャックが弱気な声を漏らす。それもそうだろう。肥大化した獣の手足を持つ男が縦横無尽に駆け回り、単眼の鬼が地面を隆起させながら巨大な拳を振るっているのだ。その様は最早災害のぶつかり合いにも等しい。
諸人の介入を許さない、意思なき高次の戦いが目の前に広がっていたのだ。
三人が到着した時よりも激しさを強めた災害同士の決戦は辺りの木々を問答無用で薙ぎ倒し、地面に幾つものクレーターを作り出しており、この中に自ら飛び込もうとは思えないのもある意味当然と言えた。
「……あれが、本当に清人なんか?」
凩の疑問にその場の誰しもが押し黙る。
先程、獣の手足を持つ男はこう叫んでいたのだ。『俺が清人の代わりに助ける』のだと。
では、今まで自分達が清人だと思っていた人間は一体誰だと言うのか。それを疑問に思わずにはいられない。
「きっと……オルクィンジェの暴走じゃないかな。それなら多分この状況にも説明がつくよ」
「お、おる……くぃんじぇ? って一体誰や?」
「清人の中のもう一つの自我って言ったら良いかな。実は清人は擬似的な二重人格者なんだ。だからきっとそっちの方が暴走したんだよ」
「それは、違う」
ジャックの言に否定を返したのはアニだった。
「私は清人と視界を共有してる。でもそれは清人の自我が表出している時のみの共有。『魔王』の意識が表出している時は見えない。けど、のいずが酷いけど今も見えてる。だから、あれは清人」
「って事はあれが……本当にあれが清人の成れの果てなんか?」
「ん、いぐざくとりぃ。ただ、清人だとしてもこうなっている以上は割り込めないし、仮に割り込めたとしても何も出来ないのは変わらない。それに……多分、今の清人でも『霞の穏鬼』は削り切れない。結局、たいむあっぷで私達の敗北」
清人が清人なのかはうっちゃり放って現状について思案する。
今の状況は敏捷性能の高い清人が優勢だ。しかし、攻撃は通っているとは言えどその総量は決して多くはない。このまま行けば勝つより先に朝になり半ば強制的に戦闘が終結する事になる。
「何か、ワリャ達に出来る事は無いんか……」
凩は半ばから折れた刀に視線を下ろしながら自分にもっと力があればと強く唇を噛み締めた。
「あの様子じゃあ、拘束も振り払っちゃいそうだし……飛ぶ斬撃もまず効かないだろうね。凩に真っ当な刀があればまだ通りそうだけど」
「……それは、無理や。飛ぶ斬撃はワリャが慣れ親しんだ刀でしか発動出来ん。ワリャも侍やさかい、真っ当な刀を持てれば決め手になるような一撃だって放てるやろうけど、そうそう簡単にはいかん」
「結局、僕たちは傍観してるしか無いんだね……」
そう言って項垂れるジャック一行に赤い視線が向けられる。
その視線の主は単眼の鬼。
鬼はすばしっこい獣を相手にするのに焦れて己の力で簡単に蹂躙出来そうな三人、いや二人と一体に目標を変更したのだ。
「なっ!? いつの間にかこっち見てるかな!?」
「不味い……蜘蛛子! ジャック! ワリャの背に来いッ!!」
凩は半ば折れた刀を構えながら単眼の鬼を睨み付けた。
恐らくここで一撃を喰らえば死んでしまうだろう。しかし、それを覚悟して尚、凩は拳の前に立ち塞がった。
「させない。絶対拒絶封糸ッ!!」
放たれた拳にアニの糸が絡み付く。しかし、圧倒的な力の前に糸は切断され、勢いは衰えたものの拳は真っ直ぐに凩に迫って来る。
しかし、遅れたそのワンテンポを凩は見逃さない。
「はァァァァァッ!!」
裂帛の気合いと共に繰り出すのはお得意の飛ぶ斬撃。それは卓越した技術と鍛錬の果てに至る剣士の秘奥。
飛ぶ斬撃は正確に拳へと飛翔するとーーごくごく浅い傷だけを残して霧散してしまった。
「……クソがッ。……クソがァァァァァッ!!」
凩は己の無力さへの怒りを口にしながら眼前に迫る死を見た。
刹那、黒い風が吹き荒れる。
「ーーふん、雑兵如きがこの俺達から目を話すとは。随分と余裕だな」
凩が目を開けると、そこには黒い獣の腕を以て拳を受け止める一人の異形の姿があった。
その片目は血のように赤く、片目は闇を丸く切り取ったかのよう。
両手両足は獣となったが、強い意志を宿した二色の眼は間違い無くーー杉原清人のものだった。
「……清、人?」
「ああ、待たせたな。ここからはずっと俺達のターンだ。ーー今度こそ見せてやろうぜ……俺達の力をッ!!」
その異形は……否、杉原清人は高らかにそう宣言した。
復ッ活ッ!!
杉原復活ッッ!!
杉原復活ッッ!!
杉原復活ッッ!!




