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Don't need strange plan, but you are well prepared【2】

主人公@ドヤ顔でやらかす

 雑兵達を蹴散らし終えた数十、数百もの糸が『霞の穏鬼』を絡め取らんと殺到する。

 『霞の穏鬼』もこのままでは不味いと悟ったのか猿のように木に登り糸を回避するが、まだ甘い。

 アニの強さは止まらない。加速するーー!!


「じゃあ、やるか……くらえッ! 半径二十メートル。糸の結界をーー!!」


「絶対拒絶封糸ッ!!」


 『絶対拒絶封糸』。それは張り巡らされた糸の領域。それはこの場に於いて何よりも鋭敏なセンサーとなる。これにより、俺が一度暴いた『霞の穏鬼』が再び霞を纏おうとも手に取る様に位置が分かる。これで俺は火球に割く全てのリソースをカットして最高火力の一撃に全身全霊を向けることができるわけだ。


 いよいよ、大詰めッ!!


「凩! ……頼めるな?」


「任せとき。絶対に其方には行かせん!」


 飛ぶ斬撃が間髪入れず巨大に吸い込まれて行く。相変わらずダメージが入った様子は見えないが、それでも確実に足は止まっている。計画はこれ以上なく順調に進んでいて自分の策士っぷりが末恐ろしいまである。


「オルクィンジェ!!」


『漸くか、待ち兼ねたぞ』



「『シンクロ!!』」


俺の絶叫に呼応するようにオルクィンジェが声を張り上げる。

俺の意識とオルクィンジェの意識を擦り合わされ、極限の集中を以て研ぎ澄まされた感覚はやがて活力となり爆発的な力が全身を駆け巡る。


「ーー右手に水、左手に炎」


 入念にイメージを巡らせる。今から作り出すのは俺史上最も冷たい氷と最も熱い炎。


「これが……俺の、俺たちの全力ッ!! 征くぞオルクィンジェッ!!」


『ふん……言われずどもッ!!』


 凩の斬撃とアニの糸を飛び越えて赤と青の二つの球を銀色の巨躯に叩き込む。

 するとーーすぐさまとんでもない大爆発を引き起こす!


「これが、本場の爆発オチだぁぁぁぁッ!!」


 轟音が森に響き渡る。

 それは正しく爆発音。脆弱な命ならいざ知らず、まともに食らえば死亡は必定。漏れなく俺の腕が数日間使い物にならなくなる様な苛烈極まりない一発芸。

 人はそれをーー必殺技と呼ぶ。


 苦悶の呻き声と共に巨体が冗談みたいに跳ね上がるのが見えた。

完封勝利だ。俺以外に被害は無く、町にも被害はない。正しくパーフェクトゲーム。


『これで俺はまた少し元に戻れるな。……感謝しよう』


 オルクィンジェの言葉で俺はハッとした。

 あれ、そう言えばアレはどうなったんだ?


「……待てよ。おいおい、ジャック。『欠片』の反応は何処にあるんだ?」


「いや、無いけどーーあれ? いきなり出現してる!? え、しかも、この位置はーー!?」


 俺はここで漸く大きなミスを犯した事を自覚した。


 俺は固定観念に囚われていたのだ。ニャルラトホテプなら、最初から『欠片』を敵に投入してくるだろう。

 『欠片』が出現していないのはまだ魔獣が出て来ていないからだろう。


そんな、何の根拠もない自分のメタ読みを妄信した結果どうなるのか。その答え合わせの時間になってしまった。



 瘴気が、森を覆い始めたのだ。



 俺は、単純に後に出す予定だったものを一足先に感知できたが故に勘違いを起こしてしまったのだ。


「敵の癖して主人公補正かよ。クソが……ッ!!」


舌打ちと共に自分の愚かさを呪う。


 つまり、『霞の穏鬼』は最初『欠片』を今まで持っておらず。

 偶々、偶然、偶発的に吹き飛ばされたその先にーー『欠片』があって。ピンチの時のバトル漫画の主人公みたいに急激なパワーアップが起きてリニューアルした訳だ。


 これが愚かしさへのアンサー。何という神の悪戯。いや邪神の悪戯!!


 何てご都合主義だ!! クソッ!!

 

「何やこの禍々しい気配は!?」


 上手く行き過ぎていると思った。何処かで違和感を感じていた。

 それを見ないフリした結果がこれだ。


「第二ラウンドってか……? 笑えないっての」


 ……主人公に立ち向かう敵は毎度こんな思いをしていたのか。

 その心を言葉にするならーー絶望。きっとその言葉が一番近いのだろう。


「どうする、清人」


「清人、これからどうすれば良い」


 困惑した瞳が、現状の打破を期待する瞳が真っ直ぐに俺を射抜く。


 どうするか? そんなの、俺が聞きたい。


 『災禍の隻腕』で俺を壁にするか?

 ……駄目だ。昨日使ってしまって使えない。

 『シンクロ』で無双するか?

 ……希望的観測だ。まず無理だろう。


「はっ、やってやんよ」


 俺は自嘲しながらそう口にする。

 勝てない。無理だ。

 最高火力でも殺し切れないような化け物がパワーアップして帰って来た。そんなの……そんなの勝てる訳が、道理が無い。


 どの道、ここで逃げ帰っても死ぬしか無いのだ。


「『加速アクセル』」


 だから俺は二人を置き去りにして森の奥深くーー『霞の穏鬼』の元へ駆け出した。


「あ゛ぁぁぁぁァァァッ!!」


『清人、お前正気が……!!』


 オルクィンジェが何か言っている。けれど何を言っているのか分からない。


『止ま……!! 逃げ……、…………ッ!!』


 痛みはとうに捨てた。この命も暫く後に捨てる事になるだろう。

 構わない。


「俺は、俺はッ!! 救済を……誰かを救い続けないといけないんだよッ!!」


 俺は何処かで分かっていた。

 俺が、救いたい誰かを救えなければその先には己の絶望が待っているのだと。


 清人との約束を履行し続ける事のみが行動理念の俺が、誰かを救う事を止めれば、それは俺の絶望に直結するのだと。


 故にーー。


「この身体を絶望に浸そうが、お前を必ずぶっ倒す!!」


 視界が赤く明滅し、正気度の大幅な減少を知らせ、動かない右腕が黒く染まり汚泥を纏う。

 そして汚泥の右腕は肥大化しーー獣の前脚へと姿を変える。


「……絶望が何だ。勝てないのが、何だ。だったら俺は同じ土俵に立つだけだ」


 今の俺の姿を言うのであればーーそれはきっと、『半魔獣』と。そう呼ぶのが相応しいのだろう。


「良いさ。やろうか、第二ラウンド」

主人公、お前SAN値……。



ハンドアウト


主人公の絶望の真相について。

【まとめ&ちょっぴりネタバレあり】








主人公は清人の願いを■えられなくなったら絶望します。

その内容は大体お察しの通り『誰かを助ける事』。

アニ、オルクィンジェの時も命懸けで助けようとしたのは『清人との約束を履行、■え続ける』為。

もし仮にここで助けられなかった場合主人公は絶望していた。

(そもそも流れ的にはその前に敗北して死亡するパターンではあるけど)


つまり、主人公の本質は清人の願いを■え続ける事である。


……あと、サボローの本名は■■■人であり何気に■の字が入っている。つまり【以降解禁不可】


また、最初の時に『いのちだいじに』スタイルでエリオットと戦闘したのはひとえに【以降解禁不可】


オルクィンジェに正体を看破されて以来は捨て身のスタイルになっているけれど、これにも理由があり【以降解禁不可】


そして、主人公が死にたがりの兆候を見せた理由は【以降解禁不可】

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