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Don't need strange plan, but you are well prepared【1】

テンポ良く攻略していきましょ。

 ーーそして、夜になる。


 凩の屋敷の辺りは夏場には思えない様な酷く冷たい風が吹いていた。

 眼前に広がる森から溢れ出るのは絶望より出し悪鬼悪霊。そしてそれに立ち向かうのは『ぼくのかんがえたさいきょうデッキ』。即ち、自分が考え得る強いを詰め込んだオールスターチームだ。


「これで勝てなきゃ嘘だろ」


 戦いを前にしてアニ、凩はいずれも歴戦の古強者の様な雰囲気を醸し出しており、且つ俺のコンディションはバッチリ、オルクィンジェの機嫌は良好。ジャックも良い色艶をしていると来た。

 策も十全。これならばきっと勝てる。


「あんさんーー来るで」


「応……じゃぁ、各々方抜かりなくってな。……行くぞッ!!」


 森から溢れ出た魔獣を見据えながら俺は叫んだ。

 それと同時にーー銀の奔流が魔獣達に殺到した。

 それは無数の糸の濁流。鉄より強靭つよく、絹よりも尚しなやかな殺意。それを手足の如く巧みに手繰るのは一人の小柄な少女。


「手応え、あり」


 アニの糸の真髄は拘束のみにあらず。張り詰めた糸の硬度は同じ太さの鋼鉄すら凌ぐ。故に、その糸に絡め取られた魔獣の末路はたった一つ。

 ーー剪断あるのみだ。


 赤い華が咲き乱れ、魔獣達の断末魔が響き渡る。


「ちんまりした見かけによらずエグいのとするの……。情けも容赦も全く無し。末恐ろしいわ」


「でも、今は頼もしい事上無い。撃ち漏らしを殲滅するぞッ!!」


 元々アニは格下相手には無類の強さを発揮する性質を持っている。だから、今回は『霞の穏鬼』の拘束のみならずそれ以外の魔獣の封殺に充てる事にしたのだ。

 そして、その作戦は功を奏し見事に魔獣達の撃滅に成功している訳だ。


 ここまではパーフェクトゲームだ。


「清人……来るよ。『霞の穏鬼』だ! 位置は清人のーー直上ッ!!」


 そこでジャックが声を張り上げるのと同時に直上へと火球を放った。


「凩! 見えたか!!」


「あいよ、モロ見えやッ!!」


 そこへすかさず凩の斬撃が挟まる。

 やはりなんの痛痒も感じていない風だったが、それは問題無い。


「……計画通り」


 自然とニヤリとした笑みが溢れる。

 これが俺流の『霞の穏鬼』の対処法だ。


「いやぁ、タネが割れちゃえばそこまでの敵では無いね!」


「ああ。……今のコイツはただ硬くてパンチが強いマトだからな」


 何故『霞の穏鬼』は姿を消せていたのか。そのアンサーこそこの戦法だ。


 対策するにあたって着目したのは見え方の違いだ。

 ジャックと俺にはあの日、薄ぼんやりと鈍色をした鬼の姿が見えていた。

 しかし、凩には何も見えていなかった。

 それは明らかな視界の錯誤。

 そこから考えられるのはーー位置。

 あの日、俺とジャックは屋敷側に位置しており、反対に凩は森の中央部分まで進んでいた。俺はその事から『霞の穏鬼』に近ければ近い程消失の効力が強まるのでは無いかと考えた。


 では、何故消えて見えたのか。

 それはーー。


「剥がさせて貰うぞーー霞のヴェール!!」


 『霞の穏鬼』、その名が示す通りの霞。それこそが消失のギミックの正体だ。



♪ ♪ ♪



 時間は正午に遡る。


『一つ目の関門、突破したり』


 ドヤ顔をしながら俺はそう宣言した。

 何故ならーー他ならぬ俺自身が消失に成功していたらしいからだ。

 やった事は至極簡単ーーと言っても調整がシビア過ぎて少し苛ついたのだがそれはさて置き。俺は霧を出した上で『第一魔素ファースト・カルマ』で火を灯し、良い感じに光を調整したのだ。

 すると良い塩梅に光が屈折しーー姿が消えたように見える。


『要は光の屈折を利用して消えてたんだよ。だから、位置が違えば見え方も変わってくるし。基本は第二魔素セカンド・カルマを纏ってるようなもんだから火傷も相殺される訳だ』


『屈折? でもそれはおかしくないかなぁ。魔獣が出るのは夜だよ? 昼間みたく光を調整するのは無茶だと思うんだけどねぇ』


 ジャックの言はごもっともだ。しかし、それにもアンサーがある。


『いや、夜でも多分イケると思う。っつのも、俺たちが見た鬼の色は鈍色だったよな?』


『そうだねぇ。え、でも、あれ? まさかーー』



♪ ♪ ♪



 『霞の穏鬼』は火を使わない。

 ではどうやって己の姿を消したのか。その答えはーー。


「ギンギラギンに光ってる本体様ご開帳だッ!!」


 火球が着弾すると微かに銀色に輝く身体が視界に入った。

 『霞の穏鬼』の色は決して鈍色では無かったのだ。己の存在を消す為にーー光量を調節する為にその身体は眩しいくらいの銀色をしている。それが正解だ。

 俺たちが鈍色に見えたのはひとえに霞で見え難くなっていたから。それだけだ。


「ギミックは制覇した。後は……詰めて決めるだけだ」


 消失、火傷無効を攻略した。ならば後は決めるだけ。

 敵のスペックならば拘束し続ける事は十分に可能。


「勝ったな、第三部完だ」

はい、これが消えるギミックの全貌です。


全反射をイメージして頂けると良いかと。実際には恐らく不可能かと思われますがそこはうっちゃり置いておいて。


ここから主人公達と『霞の穏鬼』とのバトルが激化しますよー!!

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