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For the settlement【4】

新年の一発目ェッ!!

「いんやぁ、まさかあんさんがワリャを探しとったとは思わんかったわ」


「まぁ、作戦とか色々と伝えたい事があったしな。それで……その花は?」


 視線を凩の手元に移す。そこには数本の菊が手に収まっていた。


「ん? ああ、これか。梶にちょいと花でも手向けようかと思っての。さっき買って来たんや。……まぁ、それでえらく迷惑かけたようなんやけんども」


 そう言うと凩は過去を追走するかのように目を細めた。その姿は何処かもの悲しく、見ているだけで胸が真綿で締め付けられたみたいに苦しくなった。


「ところで、その刀……おっちゃんの『野分』に見えるんやけんど気のせいかの?」


 ふとそこで俺の持っている刀、『野分』について質問が飛んで来た。

 ……だが、馬鹿正直に『失敗したら切腹する様に言われて半ば強制的に持たされた』などと言える訳も無く。かと言って土地柄上、刀を譲って貰ったとも言えない。

 となると、誤魔化すしかない。


「凩、お前はきっと疲れてるんだよ。きっとお前の見たものは……あれだ。俺の幽霊波スタンドってやつだ」


「けんど、確かに……およ?」


 凩は目を瞬かせた。それもそうだろう。『野分』が忽然と姿を消したのだから。これにも勿論タネやら仕掛けやらが存在するのだけどここで態々言う必要は無いだろう。


「誰が、何と言おうと、あれは俺の幽霊波スタンドだ」


「……そう、なんかの。すたんどとかワリャにはよく分からんけど、あんさんがそう言うなら信じるわ」


「お、おう」


 純粋な信頼が今はただただ痛かった。


「……」


「……」


 気不味い沈黙が辺りに漂い始めた。しかし、それも仕方のない事。凩は墓参り前だし、俺に至ってはつい先程凩の養父に失敗したら腹を切れと言われたばかりだ。その状態で会話が成立する訳もなくーー。


「取り敢えず、墓参り行こか」


「おう」


 こうして俺は半ばなし崩し的に凩の墓参りに同行する事になったのだ。



♪ ♪ ♪



「あんさんは……なしてワリャを助けたいと思ったん」


 夕暮れ時の寂しい道を歩いていると不意に凩はそう尋ねた。


「……誰かを助るのに理由が必るかい?」


 その問いに対して俺はそうキザに答える。……実はこれはとあるゲームの主人公の台詞なのだけどそこはご愛嬌。オタクの悲しい性ってヤツだ。


「……違うんやろ。それは」


「違う?」


「ーーあんさんはあん時、『それがやりたい事だから』って言った。けんど……あんさんは寧ろ、何て言うんやろ。やりたい、とかやのうてやらなあかんって義務感で動いてるような感じがする」


 そう言うと凩は決まり悪そうに頬を掻いた。


 ……義務感。確かにこの感情はそれに近いのかもしれない。けれど、その本質はもっと歪で悍しい事を俺は既に知っている。

 これは『救いたい』や『救わなければならない』とは明らかに別種のーー脅迫観念。それをしなければ俺の中の大切な何かが崩壊してしまうような予感。そんなようなものだ。


「勿論、ワリャとしては有り難いと思っとるし、実際助かっとる。けんど……それであんさんは辛くないんか? 誰かを助けるだけ助けて、虚しくならんのか?」


「辛くなんてないし、虚しくもない。……と、思う」


 口に出した声は思ったよりも細く、震えていた。……何だか馬鹿みたいだ。


「あー、隙あらば自分語りさせて貰うとな。……俺にもさ、大切な人が居たんだよ。いっつもブスッとしてて、ツンケンしてる奴だったんだけど、誰よりも優しくて、兎に角良い奴だったんだ。……誰よりも大切な人だった」


「……そん人を、亡くしたんか?」


「ああ、そうだ」


 思えば、俺と凩は良く似ている。

 大切な人を失い。一人だけ取り残されて、消えない傷を胸に抱きながら生きる人。

 だけれど、どうしようもなくなってしまった俺と違って凩にはまだチャンスがある。大切な人を取り戻す飛び切りのチャンスが。


「そいつは……消えたんだよ。跡形も無くな。全部、全部。何もかも。……その時はまるで生きながらに身体を真っ二つに引き裂かれた様な心地だったよ。もう二度とあんな思いはごめんだ」


 狡いとは思う。けれど、ほんの少し。ほんの少しだけ凩が羨ましくもあった。


「凩、俺はお前が羨ましいよ。……お前にはまだ大切な人を助けられる可能性が残ってる。最後まで何も残らなかった俺とはまるで違う。だから救われて欲しいんだよ。……だから助けるんだよ」


 そう締め括ると凩は何処か寂しげな顔をした。幻滅されただろうか。

 ああ、俺が純粋な善意のみで動ける様な徳の高い人だったら良かったのに。

 けれど現実はこう。俺は決して善人などでは無く、その本性はどこまでも偽善的で、独善的で浅ましい。

 それが、俺だ。

 それが、杉原■■だ。


「……悲しいくらい優しい人なんやの。あんさんは」


 凩はそう呟くと口を噤んだ。

 梶の墓前に花を備え終えても、やはり凩は一言も発さなかった。

さーて、主人公はどうやって『野分』を隠したんでしょうかね?



あ、あと主人公の名前が出ましたね。


杉原■■君です。


そして、主人公が失ったと言った人は……まぁ、アイツです。


ってかバレバレだよね。




さて、2020年初ハンドアウトの時間だぁ……!




【主人公の名前】


主人公≠杉原清人

主人公=杉原■■


【失った人】


杉原清人→高嶋唯(自殺)

杉原■■→????(消失)


【前世組に起きた事柄】


杉原清人→唯の自殺で精神を病む

杉原■■→大切な人を失う

高嶋唯→清人の前で自殺

サボロー→本名は■■叶人

クロ→にゃあご。病んでない頃の清人の相棒


【前世組の関係】


杉原清人→(変な隣人)→サボロー

杉原清人→(相棒)→クロ

杉原清人→(ずっと好きな人)→高嶋唯


サボロー→(守りたい、この笑顔)→杉原清人

サボロー→(???)→高嶋唯

サボロー→(???)→クロ


高嶋唯→(憎悪&依存&好意)→杉原清人

高嶋唯→(ーーーー)→サボロー

高嶋唯→(嫌い)→クロ


クロ→(ご主人!)→杉原清人

クロ→(???)→サボロー

クロ→(嫌い)→高嶋唯



まぁ、うん。

察しだね。

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