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For the settlement【1】

『霞の穏鬼』対策が始まるぞぅ!

ここを超えたら修羅場に入れるッ!!

 ジャックの言に俺は暫く惚けずにはいられなかった。


「それは、本当なのか?」


「そうだね。僕としてもちょっと驚きだけど……これで大体の『欠片』が盤面に出揃ったかな」


 かつて、オルクィンジェは頭、胴体、右腕、右足、左腕、左足の六つに引き裂かれ、その肉体は『欠片』となった。故にその総数は六つ。

 その内、俺が二つ。『暴食』が複数……共闘した際の魔法から見て恐らくは二つ。そして、所有者不明の『欠片』が一つ。つまり六つの内の五つが早くも盤面に出揃った事になる。


『ここで『欠片』を手にする事が出来れば『災禍の隻腕』の効果時間も再使用までの時間も減少する。俺も一刻も早く完全体になりたいところではあるが……』


 オルクィンジェはそこで口を閉ざした。


「どうかしたのか?」


『いや、この世界を支配しているのがあのニャルラトホテプである以上このタイミングで『欠片』を投入したのには何か狙いがあるように思えてな。……俺たちの敵に『欠片』を持たせて、苦戦するのを見て嘲笑う。やりそうな手口だろう?』


 そう言われるとそう言う風にしか思えなくなって来る。

 ニャルラトホテプはこの世界を支配する絶対的な神にしてゲームマスター。人を煽る事に長け、苦しむ人間を嘲笑するのが趣味なゲス邪神だ。

 そんなニャルラトホテプが世界を支配している以上、敵に『欠片』を持たせる展開は容易に想像出来る。


「俄然やる気が萎えて来るな。……これで『欠片』の反応が微妙な理由が、魔獣が持ってるとかからだったら泣くぞ」


「その中でも特に厄介な鬼が持ってたら目も当てられないねぇ……はぁ」


 どんよりとした空気が辺りに漂い始める。口には出さないけれど、全員が『欠片』をあの魔獣が持っているのではないかと考えてしまったからだ。


「とは言え確定では無い筈だ。楽観してはいられないけど悲観するにもまだ早い……よな?」


「……疑問符が悲しいねぇ」


 視界から消える能力、硬いガード、状態異常耐性、重い攻撃、頭も回る。この上に更に何か付加されたら現時点で勝ち筋はゼロ。敗北は必至だ。


「となると、やっぱり調査するしか無いか」


 だから、せめて視界から消える能力と状態異常無効を暴こう。

 この二つにはタネも仕掛けもあると思うから。


「ん? 何をかな?」


「ちょっくら消える能力と状態異常無効のタネ、白日の元に晒してやろうかと思ってな」


 何も主人公らしくお行儀良く戦う必要など無い。十全に調査し、十全に整え当然のように勝つ。

 男ならばそんな戦いも一度はやってみたい。



♪ ♪ ♪



 昼下がりの森は苛烈な夜とは打って変わり何処かのどかな風が吹いていた。小鳥がさえずり、木々がさざめくその様は昨日の戦闘がまるで夢や幻だったかのようだ。


「あの消える能力にタネがあるなんてにわかには信じられんの……」


 木立の中を歩いていると凩はそう呟いた。


「それはまだ検証してないから何とも言えない。けど、これがタネも仕掛けもナシなら……ちょっと盛り過ぎな気がしてな」


 さて、『霞の穏鬼』の強い要素の数を数えてみよう。五つだ。五つもある。勝たせる気が毛頭無いのでは無いかと疑うレベルの強さだ。頭がおかしいとしか思えない。

 だからきっと、俺たちに見逃しがある。


「強い奴には弱点がある筈だ。と言うかあって欲しい。無いと困る。だから、今はちょっとでも情報を集めておきたい」


「……言いたい事は分かるけんど、行っても戦闘の跡しか残っとらんはずなんよな」


「いや、それで良いんだよ」


 俺が確かめたい事はたった一つ。昨日、俺自身が燃えた跡がどうなっているかのみだ。それによっては……対処のしようが生まれる。


 そして、昨日俺が圧死した場所に辿り着いた。


「……普通に潰された跡しか残っとらんの」


 そこには『霞の穏鬼』の作り出したクレーターしか残っていなかった。

 だからこそ、おかしい。


「俺は派手に燃えてたよな。なのに、なんで雑草一つも焦げてないんだ?」


 ーー雑草に焦げ跡一つ付いていない、だなんて。


「今朝方生えたとか、そう言う事じゃ無くて、元から生えてたっぽい雑草すら焦げ跡無し。これは何かしらの力が働いた、って考えるのが自然だよな」


『……成る程、そう言う事か。お前も随分狡い事を考える』


 手っ取り早く目眩しと火傷無効をする手段は限られる上、辺りの火も消化されているときた。この事から導き出せる結論は一つ。


「凩、俺の事を良く見ておいてくれ」


「……一体何をするつもりなんや?」


「消える」


 息を深く吸い込み、それを吐き出す。

 それは『第二魔素セカンド・カルマ』を利用した極々小規模の霧。


「消える言うても見えにくいだけやないん?」


「いや、まだだ。ここから……こうっ!」


 俺がそう言うと凩は驚愕に目を見開いた。


「な!? まさか、本当に……………()()()んか!?」


 俺はどうやら消失能力と火傷が効かなかった理由を暴く事に成功したらしい。


「一つ目の関門、突破したり」


 俺はニヤリと笑いながらそんな事を口にした。

『霞の穏鬼』は果たしてどんな手段で消えてたんでしょうね?


まぁ、現実的には不可能みが強いギミックではあるのですが、「異世界だからそんな事もある」と寛大な精神で許してくださいまし。

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