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Even if it is folly ,I can only do it【5】

書いた……!!

後は攻略戦だけだ! 頑張れ睦月! ここを乗り越えれば一話から構想してた話に入れるぞ!!


あと、18万字突破&150ポイント突破やったぜ!!

 折れた刀を手に梶は茫然と立ち尽くす。そして、その隙を『剣姫かがり』は逃さない。

 致命の一撃が梶の首元にまで迫りーーキィィンと澄んだ金属音と共に火花が飛び散る。


「!!?」


 梶と篝との間に割り込む形で刀が振るわれたのだ。

 刀の主はそのまま篝の刀を己の膂力のみを頼りに弾き飛ばす。


「……それだけは、させん」


 火花と共に露わになったその赤い髪は紛れも無く一凩のものだった。


「雑兵如きが! 私の、私の意思の邪魔をするなッ!!」


 篝の激情に凩は苦笑を浮かべる。

 その肩口はザックリと深く切れていた。


「確かにワリャはあんさんよりもずっと弱い。けんどな……」


 燃えるような赤い色合いの鞘を片手に凩は吠える。


「親友が、親友を殺すのを黙って見ている程お行儀良くはおれん。……せやから、こっからはワリャの……この街の守護者にして『烈風』、一凩の番や!!」


「凩……お前……」


 梶は心配そうに凩の背中を見つめる。そこには肩口を『剣姫かがり』によって切られ、今にも倒れてしまいそうな哀れな男の姿があった。


「お前程度が私を止められるなどと……思い上がりも甚だしいッ!!」


 打ち合いが、始まる。

 鮮血と火花が混じり合い、至る所に赤い花が咲いた。


「止めろ凩……ッ!! 逃げろ!!」


 梶の静止が耳に入らないのか、血に塗れながらも凩は立ち続ける。負けるのがわかり切っているのにも関わらず。それでも尚、篝の前に立ちはだかる。


「一瞬、逃げようと思った。……多分それが正しいんやろな。せやから、きっと今のワリャは間違えとる。けんど……けんどな、ワリャは親友を失うかもしれない場面で形の上の正しさを守れるような賢い男やない。せやからワリャは戦うんやろな」


 そう言うと再び刀を構え、篝を睨み付けた。その姿勢は正しく不退転。退く事は無く止まることもまた、無い。


「……分かったよ。お前の思いは。だったら折衷案だ」


 刀を失った『剣聖かじ』は再び立ち上がると刀を握る凩の手に自分の手を添える。


「共にやろう。俺が力を貸す」


 『烈風こがらし』一人では『剣姫かがり』勝てず、『剣聖かじ』は武器を失した。

 しかし、『烈風』には武器があり『剣聖』には力がある。お互いの欠けた部分をお互いが補い合うことが出来る。


「それは……心強いのッ!!」


「この一撃で、決める……ッ!!」


 二人の力を合わせて放つのは世にも奇妙な飛ぶ斬撃。

 けれど、その一撃はただ飛ぶだけに止まらない。


「「破邪……剣征ッ!!」」


 それは一条の光。

 迫り来る夕闇を切り裂く圧倒的な光量を秘めた一撃が『剣姫』の元に迫る。


「負ける、ものかァッ!!」


「一人じゃあ、勝てん。一人じゃあ立てん。けんどな、二人ならこんな事も出来る」


「これが親友の……絆だッ!!」


 魂の同調。それが今二人の間で起きているのだ。魂の同調により増幅された力が、一人の少女に殺到し、この身体を呑み込む。


「嗚呼。親友、絆……か」


 光による斬撃はまるで朝日のように辺り一面を明るく照らし出す。

 それは正に絆のなせる技。


 これぞ勧善懲悪。絆の勝利ーー。


「親友、絆……下らない……。嗚呼、心底下らないッ!!」


 ーーとはならない。


 少女は光に呑まれても尚、そこに立っていた。


「下らないッ!!」


 否、それは最早少女と呼べるようなモノでは無かった。鈍色に変色した髪、縦に裂けた瞳孔、額から生えた二本一対の角。


 その姿は人間と言うよりーー鬼と呼ぶのが相応しいだろう。


「親友だと? ふざけるのも大概にしろ! どんな想いも親友と言う一言で括る。それがどれ程残酷な事か、お前たちは分かっていない!! 分れないッ!!」


 一匹の孤独な鬼は絶叫する。


「私がどれだけ愛しても、怒っても、憎んでも!! ずっと親友の二文字が邪魔をするッ!! それだけの言葉で括ってその意図を理解しようともしないッ。それが親友だ! それが絆の正体だ!! 結局、誰も私を見てはいなかった!! お前達は親友と言う都合の良い偶像を見ていただけだッ!!」


「ッ!!」


 梶の目が見開かれる。


 結局、この話は痴情の縺れから凩がとんでもないとばっちりを受けているに過ぎない。


 そしてその原因は……梶水面であり、その事に当人がーー梶水面が気付いてしまったのだ。


「だから私は殺す。私を見ない男も、お前が見ている親友と言う名の偶像も。全て、総て、須く、滅し尽くしてやる!!」


 鬼もまた致命の一撃を放たんと全身に力を漲らせる。

 しかし、梶は呆然と立ち尽くすばかりで動こうともしない。


「おい、梶! 梶!!」


「……俺って本当に馬鹿だよな」


 そう言うと梶は凩を突き飛ばした。


「凩、巻き込んで済まない。それとーー」


 鬼の斬撃が飛翔する。そして、その軌道の上には梶がいた。


「お前と親友になれて、良かったよ」


 そして、吸い込まれる様に斬撃は梶を飲み込んでいった。


「か、梶? 嘘やろ? なぁ! おいっ!!」


 当然ながら反応は無い。そこに残っていたのは半ばから折れた刀だけだった。


「……死んだか。人とは脆いな」


「篝ッ!! お前……お前ッ!!」


「私はもう、篝では無い。人の情を捨てた人間の埒外に存在する絶望より出し怪物……魔獣だ」


 徐々にその姿形が変化して行く。ボコボコと醜悪に膨れ上がり、全身が鈍色に変化する。


「嗚呼、ただ……。自分でも、何故こうなってしまったのか。それだけが分からない」


 闇夜に蠢くその単眼は皮肉にも篝を絶望に追い込んだ原因である『霞の穏鬼』に酷似していた。


「……一体どこで間違えてしもうたか、だなんて……そんなもん、ワリャが知りたいわ」


 取り残された凩は一人、失意に沈みながら折れた刀を見つめていた。

凩、今回の圧倒的被害者枠なんだよなぁ……。

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