Even if it is folly ,I can only do it【3】
かなり短い上元の奴とほぼ同じ経過をしてるのですまない……。
ハザミの商業区はいつでも活気に溢れとった。
天下の往来には天麩羅売りやら寿司屋等の飯屋の呼子が宣伝する声が聞こえてきての、道端を見れば雑草が力強く生えてて活力の限界突破みたいな感じだったんよ。勿論、今でもそれは変わらないんやけどな。
まぁ、それはさて置き。ワリャには二人の親友がおった。
『一、遅いぞ!』
『悪い悪い、梶の木刀こさえるのに時間掛かってもうた!』
一人目が梶水面。
クソみたいな人誑しで最初は極端に気に入らん奴やと思っとったけど、親がいなくてやさぐれてたワリャを初めてダチだって言ってくれた奴で、そっからはいつも一緒にちゃんばらしたり兎に角つるんどった。
んで、もう一人がーー。
『一、本当は女を追いかけていたのだろう? 正直に言え』
『堪忍な、篝。あんさんに睨まれたらワリャ玉が縮こまるさかい』
灯篝。
おっちゃんの実子で、梶の第一の被害者や。
篝は見た目は良いし、悪い奴やなかったんやけんど……ちゃんばらしたらめちゃくちゃ強いし、口調も男勝りだったから人が寄り付かなくての。友人はワリャ達しかおらんかったんや。
せやから篝は梶に惚れるのは半ば確定事項みたいなもんで、何回も『ばりすいとーよー』ってくっついて行くのに梶が鈍感かますもんで不憫での……。
ほいで、ワリャは二人をどうにかくっつけようって躍起になっとったわ。
……何か要点を掻い摘んで話すつもりが、この時点で結構話が長くなってる感じは否めんの。まぁ、こんな所に住めば話す機会も少ないし、ふーんって言って聞き流してくれたら助かるわ。
ほいで、ワリャが『烈風』の二つ名を頂戴した頃に梶が『剣聖』篝が『剣姫』って具合に街の人間から呼ばれ始めての。天才達の時代の到来とか言われて何だかこそばゆかったわ。
……まぁ、ワリャは三人の中じゃ一番黒星多かったんやけど。
まぁ、ワリャの事は良えか。
こんな感じでワリャ達は十二歳位にゃこのハザミでは一目置かれる存在になった訳や。
……三人で組んで魔獣を狩まくったのは本当に良い思い出やったわ。
ワリャはずっとこうして、三人で街の平和を守って、笑い合いながら過ごすんやろなって思っとった。
……けんど、そうはならんかった。
十二にもなるとこう……ほら、変に性別意識してまう位の年頃やろ?
その差が……三人に溝を生んでしまった。
要するにあれ……そう、思春期ってやつや。
梶はくっつきたがる篝を恥ずかしさから疎ましく思ってワリャとだけつるむようになって、篝も見た目が華やかになった事もあって嫌らしい目線を受けることも多くなっての……。それ以外にも同性からはめちゃくちゃ嫌われるし、大変やった。その度にワリャが庇うもんだからワリャと篝が出来てるって話になって、篝は梶への想いを募らせまくるし、挙句の果てに梶にもワリャと篝が出来とるって勘違いされたしで、本当……散々な目にあったわ。
そっからようやっと暗黒時代が終わるんやけんど……梶も篝も変わってしもうての。
梶はワリャと篝をくっつけようて躍起になるし、篝は……。
篝は、梶とまた話せる事に舞い上がり過ぎての。
篝は暗黒時代のせいで恋心を拗らせ過ぎたのもあって歪みが顕著になったんや。
勘違いと独占欲。それが篝を狂わせた。
ワリャが梶の誤解を解いた頃にゃ出来あがっとった。




