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Resonance of the soul【5】

 何故俺は『暴食』を助けたのか、その理由は……実は自分でも分かっていない。

 『暴食』が悪人である事は分かっている。敵であることを知っている。けれども。それでも尚、助けたいと思ったのだ。

 それだけの理由で俺はオルクィンジェの提案を蹴り飛ばした訳だ。その事は申し訳無く思っている。しかし、こうした事自体に後悔は無かった。


「さぁ、楽しい共闘のお時間と洒落込もうか、『暴食』」


「……分かった」


 掠れた了承の声はやはり俺に似ていた。だから俺は『暴食』を助けたくなったのかもしれないと一人苦笑した。


「おっし、俺の背中はお前に任せるからな。だから……お前の背中は俺に任せろ」


 常識的に考えれば敵同士でまともに連携出来るはずが無い。

 けれど俺には背中を任せる事に対する不安も、躊躇いも、不思議と一切無かった。


「らァァァァァッ!!」


 『暴食』に向かって殺到する魔獣に対して全力で杖を振るう。

 疲労困憊で余裕が無かった筈が心なしか身体が軽い気がする。

 いや、違う。実際軽いのだ。昼間に思いっきり吐いたからとか、そう言った事ではなくて身体がまるで羽毛のように軽い。


 これは一体……?


『これはまさかシンクロ……なのか? そんな馬鹿な!』


 シンクロ。それは魂の共鳴。

 お互いの精神が弱点を補い合う事でお互いをより高め合い、より上位の力を振るう事が可能になる言わば相互理解の極致。


 それが今正に、俺と『暴食』の間で起きているらしい。


 だが、何故?


 戦闘時に効果を十全に発揮出来るシンクロ率は七十パーセント。出会って五秒で即シンクロした挙句、そのシンクロ率が七十を越えるなど果たしてあり得るのだろうか。


 俺とオルクィンジェでもシンクロ率は四十三パーセントが限界。そしてその程度では戦闘に於いて大した変化は見込めないのだと言う。けれど、今の俺は明らかにシンクロの恩恵を十全に受けれている。


「考えるより動け、だ。今はガッポリキル数を稼がせて貰うぞッ!」


 頭を振って思考を切り換える。


 何故ここまで背中を預けるのかしっくり来るのか、何故こんなにも息を合わせやすいのか。それは分からない。


 けれど、『暴食』が三秒後に何をするか。どのタイミングでフォローを入れれば良いかは手に取るように分かる。


 今はそれさえ分かっていれば上等だ。


「よいしょォォォォッ!!」


「喰らい尽くすッ!!」


 一呼吸の間にも魔獣達は段々と数を減らして行った。


 俺と『暴食』に最早言葉は要らず、目配せも要らない。言うならばそう……言葉ではなく心で理解した、と言うのが正しいだろう。

 そして『暴食』もそれは同じようで目に見えて動きが良くなっている。


「何か……何か凄いかな!! こう……破れ鍋に綴じ蓋と言うか……。兎に角凄いコンビネーションだよ!!」


 ジャックがそうこう言う間にも無限に湧いているようにも見えた魔獣は数を加速度的に減らしていき、残りは僅かとなった。


「ド派手な一撃で終わらせるぞ!」


「……分かった!!」


 俺は低く腰を落とし、地面とは平行になるように杖を構える。

 イメージはビリヤードのキューを構えた状態。別名は男の子の憧れ(がとつ)

 そしてこの状態から更にーー。


第五フィフス第六シックスス魔素カルマ……展開、受け取れッ!!」


 『第五フィフス・魔素カルマ』の闇と『第六シックスス・魔素カルマ』の光の属性が混ざり合い、モノクロ模様の螺旋を描き始める。


「知ってるか? セイバークラスのサーヴァントの宝具は……何故かビームなんだよッ!!」


 高速で回転する白と黒の色彩はやがて杖を最果てにて輝ける槍へと形を変える。


「これが俺たちの奥義……名付けて」


「「『混沌なる最果ての槍(ギルフ・ゼル・リバル)』!!」」


 渾身の突きを放つと黒白の螺旋は魔獣達を瞬く間に粒子へと還して行く。


「行ッけェェェッ!!」


 裂帛の気合いと共に螺旋を突き出すと腕が千切れるのではないかと思う程の痛みが走った。

 恐らくオルクィンジェとスイッチした弊害だろう。


「届け……ッ!!」


 だが俺は愚直に右腕に宿る黒白の螺旋を前へと突き出し続けた。


 そして遂に最後の一体を粒子へと変えると役目を果たした最果ての槍は空気に溶けて消えていった。


「勝った……のか?」


 敵がいなくなった事を確認するとドッと疲労が込み上げてきてその場にへたり込む。

 魔獣犇く大地は元の静寂を取り戻していた。

 微かに虫の声がするし、吹く風は何処か穏やかだ。


「勝った……勝ったんだよな」


 確かめる様にそう口にする。しかしそれに応える人物はいない。どうやら『暴食』はもう何処かへ行ってしまったようだ。少し口惜しいような気もするが多分これで良かったのだろう。彼とはこれでも一応敵同士なのだから。


 心地良い疲労感に任せて地面に寝転がり空を見上げると満点の星空の代わりに厚い雲が空を埋め尽くしていた。


「……俺、本当に勝ったのか?」


 そのせいか俺の胸中には漠然とした不安感があった。


「お疲れ様かな。いやぁ、敵と共闘するって言った時は驚いたけどそれで正解だったねぇ。『暴食』はさっさと何処かに行ったし凩の方も魔獣は一体を残すのみ。この勝負、僕たちの勝利かな!!」


 そしてジャックは見事にそれを踏み抜いた事で漸く不安感の輪郭が露わになった。


 それは土煙が晴れないうちに言う『やったか!?』。

 勝利を確信した時の『この勝負我々の勝利だ』。


 それを世間一般ーー負けフラグと言う。


「待てよ……ラスイチの魔獣って明らかにヤバくないか!?」


 仄暗い森の奥に潜む最後の一体。その語感からして嫌な予感がムンムンってやつだ。


「ジャック! 急いで凩と合流するぞ!!」

結局、主人公と『暴食』のコンビが作中最強なのです……。

えーなんでや!! と思われるかもですが、兎に角この二人で組んだら一番つよつよなのです……。

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