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Resonance of the soul【4】

祝! 八十話!!


そんなめでてぇタイミングでこの作品屈指の強タッグが成立したりしますね。

「くっ……キリが無い……」


 俺と凩は溢れ返る魔獣達を前にして苦戦を強いられていた。

 圧倒的なまでの数の暴力は瞬く間に俺と凩を包囲し、此方を劣勢に追い込んで行く。


『ここまで数の差が出ると技術云々ではどうにもならないな。素のスペックがあの男程あればある程度やりようはあるが……いや、今のは忘れてくれ』


 オルクィンジェはそう言うが俺には『現状、改善の余地が無い』と言っているように聞こえる。

 だが、その言葉は酷く正しい。

 俺は第一ファースト第二セカンド魔素カルマが使えるが第一ファーストの火を広範囲に打ち込めば現状の打破は見込めるが辺りへの被害が出てしまう。そして第二セカンドは適性が弱いのかやれる事が限られて現状の打破どころか維持にすら貢献出来無さそうだ。

 そして俺のとっておき『災禍の隻腕』。これは単純に切り所が無い。と言うのも今日発動すれば明日は発動不可。そして効果時間がたったの二十分である事が足を引っ張る。


 どちらも切ろうと思えば切れる手札ではある。しかし、そのどちらも満点の回答にはなり得ない。


「仕方ないか……チェンジ!」


 手詰まりを感じて俺はオルクィンジェへとバトンタッチする。

 オルクィンジェが表に出ている内はある程度の自己回復が付く。体の負担は大きいが手詰まりよりかはまだマシだろう。


「……となると、求められるのは手数か」


 俺の体を操るオルクィンジェはそう口にすると魔獣の額に一切の躊躇なく木刀を突き立て、空いた両手でショーテルを握った。


 この異色の二刀流こそがオルクィンジェの真髄。かつての『魔王』本来のバトルスタイル。


「この何処から出てるかイマイチ分からないショーテルの二刀流……オルクィンジェに入れ替わったみたいだね」


「出しているのでは無い。その場の魔素カルマで作っているだけだ」


「初耳かなぁ!?」


「但し、燃費が悪いからそう連発は出来ないが……なッ!!」


 二本の湾曲した刃が魔獣の頭部を正確に穿っていく。

 振るわれる二本の湾曲は二羽の燕が自由に飛んでいるようにすら見える。

 

「清人! ワリャは奥側の敵を一掃するわ! 清人はその場でなるたけ町の方に行かないように食い止めといてくれんかの!」


 森の方角からは未だに魔獣達が無限に湧き続けている。どう考えても一人で突っ込むのは自殺行為だ。

 しかし、だからと言ってもオルクィンジェがこの場を離れられないのもまた事実。オルクィンジェがこの場を離れてしまえば最後、魔獣達は間違い無く町の方へと侵攻を開始するだろう。

 そうなってしまえば最悪な展開が待っている事請け合い。それだけは絶対に阻止しなければならない。


 俺は歯噛みした。

 いくら何でも俺が弱過ぎる。

 俺が強ければこんな事にはなっていなかったかもしれない。そう考えずにはいられない。


「俺の活動限界が近い……。最悪清人の『加速アクセル』を使って逃走も視野に入れなければ本格的に不味い。どうする? 策はあるか?」


『策、策はーー』


 ここで逃げるのは下策も下策。それはオルクィンジェも承知だろう。それで助かるのは俺一人、町の人は助からないし、凩の信頼に背く事になる。長期的に見れば策として一番最低だ。

 じゃあどうする? 火を放って町の人間の顰蹙ひんしゅくを買うか?

 ああ、それならば確かに凩が庇ってくれるかも知れない。やむを得ない状態だったのだと。しかし、それでは結局被害は変わらない。寧ろ憎む対象が魔獣から俺に変わるだけタチが悪いとも言える。


 ここでのワンオペは既に限界。『災禍の隻腕』は二十分で終わり……。


『……魔獣での被害を最小限に抑える策は、思い付いた』


 魔獣のヘイトを俺に集めて俺は『加速アクセル』で人気の無い場所へ移動する。つまりモンスタートレインだ。

 その後は『加速アクセル』を使い続けてヒットエンドラン方式で攻撃を与え続ける戦術……所謂カイティングを仕掛けて遅延戦闘を開始してやればチャンスはあるはず。


「ぐっ……すまない、そろそろ交代だ」


『応ッ!!』


 そして入れ替わったその瞬間。

 魔獣だらけの空間に轟音と共に空白が生じた。


 そこに居たのは黒いロープの狐面。

 見間違える訳が無かった。


「ここで来るか……『暴食』ッ!!」


 魔獣と同時に『暴食』まで対処しなければならないとなるとただでさえ薄氷のような勝ち目は更に薄くなる。それこそカップ一杯の水にたった一滴のカルピスの原液を入れたレベルでクソ薄だ。


 目の前の魔獣を無限収納から取り出したいつもの杖で殴りながら思考を巡らせているとーー。


『待て。この状況……案外悪く無いのか?』


「どう言う事だ?」


『……『災禍の隻腕』の持続時間と再使用までに必要な時間は保有する『欠片』の数に依存する。そこから先は分かるな?』


 今の状態で『欠片』は二つだから二十分が『災禍の隻腕』の効果時間となる。

 ……そうか。


「『暴食』にヘイトを集めて背後から強襲して『欠片』を奪えば……効果時間は四十分にまで伸びる」


 そして四十分の無敵時間があれば元の短い効果時間の問題を解決して現状を完璧に近い形で突破出来る訳だ。


『幸い『暴食』も魔獣に対して攻撃を加えている上、敵を倒すスピード自体は早い訳でも無い。不利になるのは必定だ。これはまたとない好機だろう』


 確かに、実行さえ出来ればこれ以上無い美味しい作戦だ。

 例え『デイブレイク』でなくても『暴食』は人喰い。許されざる悪だ。

 それと魔獣を一挙に始末出来るならそれ以上の事は無いだろう。


 なのに……。


 なのに、俺は何故躊躇っている?


「……確かに良いアイデアだ。ただ、その策には……確実性が無い。『暴食』の名に見合った権能を持っている可能性がある以上、少し様子を見よう」


 ああ、これは問題の先送りに過ぎない。それは理解している。しかし何故ーー。


 再び轟音が響き、『暴食』の周辺の魔獣が大地ごと削れた。いや抉れた、と言うのが正しいか。


『成る程、その考えはどうやら当たりのようだな。あれはきっと空間ごと喰っているのだろうな。『暴食』を起点に半径三メートルと言ったところか』


 オルクィンジェは獲物を追い詰めた肉食獣のような、何処か喜悦を含んだ声色でそう言う。

 これで『暴食』の権能の一部が酷くあっさりと判明した。オルクィンジェの作戦を実行するにあたっての懸念材料は、無い。


 そして、『暴食』は押し寄せる魔獣達を前にして膝を着いた。


「何で動かないんだ……?」


『恐らく反動があるのだろうな。今が好機だ。……征けッ!!』


 程なくして『暴食』は魔獣達に喰い殺されるだろう。そうなると、『欠片』の奪取は困難になる。


 今だ。今しかない。


 今なんだッ!!


「だァァァァァッ!!」


 『加速アクセル』を発動して『暴食』まで距離を詰めるとそのまま全力で杖を振るった。


『お前、何を!!』


 ーー『暴食』に群がる魔獣に向かって。


 『暴食』も俺の割り込みは予期していなかったようで画面の奥の目は驚愕に見開かれているように見えた。


「正義の押し売り華麗に参上……ってな」


 そして俺はへたり込む『暴食』に第三の選択肢を突き付けるのだ。


「さぁ、楽しい共闘のお時間と洒落込もうか、『暴食』」

何故主人公が『暴食』を助けたのかモヤモヤするでしょう?


それ、回収まで唯以上に時間かかるから待っててな。


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― 新着の感想 ―
[一言] 最悪なファーストコンタクトだったものの、考えてみたら暴食とはまだマトモに会話のやり取りをした訳じゃないし、味方……とはいかなくとも、なんらかの交流が出来るかもしれませんね! 果たして、この…
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