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Uban exploration【2】

今回登場するキャラクターの名前を逆から読むと……?

 切妻屋根の両端に細い尖塔があしらわれているのが特徴的な『ギルドホール テオ=テルミドーラン第一支部』。


 ゴシック風味の木製のドアを開けた向こうには――まるでお通夜のような暗い雰囲気が広がっていた。

 周囲の人は下を向いていて、俺が入ったのにも気づいていない様子だった。


「ジャック、これがギルドのデフォルトなのか?」


「……間が悪かったかな。今度は運悪くギルドの闇を見てしまったかようだね」


 ジャック自身も『死亡率が高い』とは言っていたがドンピシャでこんな場面に出くわすとは思わなかったのだろう。そんなことを沈鬱な面持ちで言われた。

 この世界は地球とは違って危険がいっぱいだ。戦闘になれば死ぬ可能性は誰にだってある訳で、だからこそ死亡率が高くなっているのだろう。


「これが……ギルド」


 緊張感が直接肌を突き刺すようだった。


「……時間を置いてまた来よっか。今はさすがにやめた方が良さそうだし」


 ジャックの提案に俺は無言で頷くと俺達は黙ってギルドホールから出た。



♪ ♪ ♪



「さて、時間を置くとは言ってもどこに行こうか……」


 ギルドホールを出たは良いが、当然どこに行こうかなんて思い浮かばない


「それじゃあ一旦観光に切り替えよっか。軽食ならカフェがあるし、有料だけど図書館もあるかな。それに武器屋、防具屋、道具屋。まぁ、異世界のベーシックなラインナップは殆どあるねぇ」


 図書館……か。

 この世界について知るには丁度いいかも知れない。有料なのが痛いが後々情報不足が足を引っ張るなんて事態に発展したら目も当てられない。

 それに……。


「じゃあ……図書館に向かうか」


「了解だよ」


 『魔王』を知る手掛かりがあるかもしれないのだから。



 ♪ ♪ ♪



 銅貨一枚を受付に支払って図書館に入館すると真っ先に目に飛び込んだのは見渡す限りの書架の山だった。


「俺の想像してた図書館と違うな……。正直ここまで大きいとは思わなかった」


「そうかなぁ? 普通だと思うけど」


「……俺の住んでたところは半ば田舎みたいな感じだったからな。図書館とか、おじいちゃんとか小さい子連れの人しか来ないからあんまり本の所蔵多くなかったんだよ。そのせいか新聞とか絵本は割と多かったんだよな」


「へぇ……」


ジャックは興味無さ気に書架の方に向き直るとふむふむと言いながら背表紙を眺め始めた。どうやら読書スイッチが入ったらしい。


「……じゃあ、俺もゆっくり本を探すとするか」


 ――『魔王』の手掛かりを。


 昨日言っていた事を思い返す。


『俺は『魔王』。この世界を滅ぼし、新たなる秩序を齎す災厄だ。……どうだ? ジョーカーを託されたと思ったらババを握らされていた気分は?』


 世界を滅ぼし、新たなる秩序を齎す厄災……。

 使ってた武器がショーテル。しかもあの口ぶりだと本来は二刀流のはずだ。

 ショーテルの二刀流だなんてそうそう多くはいないだろうしこれだけでも相当に絞られる。


「そう言えば……邪神によって六つに破砕されたんだっけ」


 となると少し妙だ。世界を滅ぼす邪神に破砕された世界を滅ぼす『魔王』。何だか関係がごちゃごちゃしてくる。ヘカテの言を信じるならば『魔王』は地球の陣営らしいが実際のところは何とも言い難い。


「あぁっ……モヤモヤする!!」


 そう髪を弄りながら悶々としていると背後から足音がした。煩くしたから注意しに職員の人が来たらしい。もしかしたら摘み出されるのでは?と考えて顔に青筋が走る。


「おや? 何かお困りの様ですね」


 しかし予想に反して言われたのはそんな言葉で。思っていた反応と違って却って少し面食らってしまう。

 にしても……何だか落ち着くような声色だ。甘いテノールが耳に心地良い。

まるで昔に聞いたことがあるみたいな感じで不思議と耳に馴染む声だった。


「もしかして、何か本をお探しですか?」


「あ、はい。えーっと『魔王』について書かれた本を探してて……」


 ついつい惚けてしまって反応が素になってしまう。


「……ああ、そう言えば名乗っていませんでしたね。私はこの図書館の館長を勤めているアイナと申します。以降お見知りおきを♪」


「……アイナ、さん?」


……俺はこの声を知っているような気がした。何処で聞いたかは分からないけれど、俺はこの声をいつか聞いたことがある気がする。


「にしても……『魔王』について知りたいだなんて貴方は面白い方ですね♪」



「――『魔王』は、この世で最も惨めな存在なのに」


「ッ!?」


「この辺りに……ああ、ありました」


 アイナさんは徐に書架に手を突っ込むと一冊の本を取り出した。


「『日の出の勇者』……児童文学ですがきっと貴方の知りたいことが書いてあることでしょう」


「あ、ありがとうございます」


 アイナさんは本……『日の出の勇者』を手渡すと書架の山へと消えていった。


「……あれ」



「アイナさんって、どんな姿をしてたっけ?」


 甘いテノール、優し気な態度。それはしっかりと覚えているのに。アイナさんの姿だけが靄が掛かったみたいになっていて思い出せない。

今あった人の顔を思い出せないなんて明らかにおかしい。


 或いは――俺は白昼夢を見ていたのだろうか?


 けれど、俺の手には。


「……『日の出の勇者』」


 確かにさっきアイナさんが渡してくれた本がしっかりと握られていた。

公開されたハンドアウト

・『日の出の勇者』

・聞き覚えのあるアイナの声


公開されていないハンドアウト

・アイナの正体…まぁ、直接的な表現は避けてるけど大体お察しだね。


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