A lullaby dedicated to the devil【3】
ざまあ書いてて遅れましたねえ……。
あと、今回はイラスト付きです。
「……俺は杉原清人。お前と共に戦う男だ」
俺はそう宣言した。
オルクィンジェの過去を俺は知らない。けれど『負けたく無い』と心の底から望んでいる事は理解出来た。だから、俺はその助けになりたい。
俺は弱いから敵を斬りはらう剣にも、身を守る盾にもなれない。
だけど、もう一度立ち上がる為の杖にはなれる。
「オルクィンジェ。お前はどうしたい? 一縷の勝機に賭けるか。負けたままこれ以上の負けを重ねない事にだけ心を割くのか」
俺はそう言いながら手を伸ばした。
もしオルクィンジェが手を掴むのならば俺も必死の覚悟をしよう。
手を払うのならばここで朽ちて死のう。
「俺は……ッ、俺は……ッ!!」
オルクィンジェの視線が床と俺の手を行き来する。選択を迫る様な真似は酷く残酷なのかもしれない。けれど、そうでなくては勝てない。
テテを攻略する為には俺とオルクィンジェのどちらも欠けてはいけないのだ。
そしてオルクィンジェは涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、俺の手を掴み。
「俺は……勝ちたいッ!!」
そう叫んだ。
「なら勝とう!! 大丈夫だ、俺たちなら絶対に勝てる俺が保証してやっから!!」
「――お前……」
俺がそう言うとオルクィンジェは悲痛そうに顔を歪めた。
「気にすんなって。俺はこれで良いんだよ」
身体を灼熱が舐めた。身に覚えのあるその炎は再生の炎。『災禍の隻腕』の権能だった。
再生の炎は俺とオルクィンジェを包み込み、辺りのおもちゃを焼き尽くしながら燃え盛る。
「さぁ、決闘を始めよう!!」
ここからが逆転の始まりだッ!!
♪ ♪ ♪
私は己の拳で魔王の素体となった青年の肉体をめちゃくちゃに殴っています。
それは正直八つ当たりに近いものと言って良いでしょうか。慢心したとは言え、デイブレイクが誇る六人の大幹部の一人が一撃を浴びせられるなんて事はあってはならないのです。
故に、過剰に。生き地獄を味あわせるべく殴打に勤しむのです。
「まだまだですよォ……次は左足ィッ!!」
ぐちゃぐちゃにした両腕と右足はもう引っこ抜いて捨てました。もし仮に逆転の手段があったとしても芋虫と遜色無い現状ではそれを実行出来ないでしょう。
完全かつ完璧に私の勝ちです。
「ふぅ、目標沈黙。あとは眼球でも抉るとしますか。趣味ではありません。これも保険です……」
言い訳がましくなってしまいましたが、私は決して解体が好きな訳では無いのです。デイブレイクの大幹部が血が見たくて堪らないとか、そんな浅ましい事ある訳無いでしょう?
「悪くない色艶じゃないですか。これは良い目玉です。さて、もう片方も――」
「随分と――」
不意に口元が動いたと思ったら全身が炎に包まれました。
成る程。敵の手で辱しめを受けるくらいなら自決してやろうと。そう考えている訳ですね。
「随分と好き勝手してくれたな。下衆女」
しかし、その直後、思いもよらない出来事が起きました。
芋虫の青年が立ち上がったのです。
「その姿は――」
その姿は炎の悪魔。そう言って差し支えないほどに禍々しく、圧倒的でした。
両腕と右腕、そして今しがた抉り取った左目が炎に置換されています。
「これが俺の――俺たちの力だ」
ですがァ……!!
「私の『傲慢』の前では……ァ!! 何をしようが無駄なんですよォッ!!」
私の『傲慢』のスキルは私が参照した人物のスキルを完全に模倣する能力です。少々の対価は必要になりますが、その分リターンが大きく汎用性の面では間違い無く一流。
単純な身体スペック比べになれば私は『六陽』の中でも中間に位置します。故に、私に勝てるのはごく一部の人間に限られます。
スキルをそもそも参照出来ない人間。
そして、スキルを模倣されても身体スペックで私を上回る人間。
その二パターンしかありません。
故にどちらでも無い彼には私に勝てる道理が無い。
「どんな手を使おうが私の『傲慢』にはァ!! 勝てないんですよォ!!」
「……ああ、確かに傲慢だな」
そう言うと炎の悪魔と化した青年の殺気が目に見えて和らいだ。
「因みに決闘者ならこう言うんだよく覚えとけ――『それはどうかな』ってな!!」




