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In the laughter of a clown【2】

あのキャラの本当の名前が登場します。てえてえ営業って奴ですね。



何てことだ…ジャックの勘違いは止まらない、加速する……!

 清人がずっと俺を見ている。

 今にも泣き出してしまいそうな、悲しい顔で。


「消えるのか……? お前も俺の前から消えるのか……?」


 悲しませるつもりはなかった。

 元より俺はそういうものなのだ。

 俺の存在は期限付き。刻限が過ぎたら消える泡沫のようなもの。それが俺だ。


「泣くなよ。こう見えて俺は幸せなんだぞ? お前が段々変わっていくのが見れてさ」


 結果的にほんの少しの時間しか一緒にいられなかったけど、それでも俺にとって清人と過ごした日々はかけがえのない宝物だ。

 変わり映えしない日常だった。けれどそんな日々は今も心の中でキラキラと輝いている。


「――俺たちめちゃくちゃ喧嘩したよな。あずきバーをどこから食べ始めるかとか、些細な事で喧嘩した」


「……止めろ」


 あの時は結局俺が折れて端っこからカリカリってリスみたいに食べたのだったか。

 正直横からガブって行きたかったんだけどそれよりも清人が意見を言ったのが嬉しくてそっちにしたのをはっきりと覚えている。


「そんで、冬の朝っぱらから乾布摩擦しようってやったら風邪引いてさ。馬鹿な事も沢山やったよな」


「……止めてくれ」


 あの時は俺も結構冷や冷やした覚えがある。冬だけに、とは言わないけど。

 本当に馬鹿な事をした。勿論やってる時はめちゃくちゃ楽しかった。

 清人も呆れながらちょこっと笑ってた。


「ずっとずっと、他愛無い話もしたよな。アニメの推しキャラとか、新作のゲームの話とか」


「今から消えるみたいな感じで話さないでくれよサボロー。いや……叶人かなと


 初めて。初めて清人が俺の名前を呼んでくれた。その事実が妙に愛おしくて……少しだけ物寂しかった。



 ――『汝は我……我は汝……。汝新たなる契りを得たり。契りは即ち、囚われを破らんとする反逆の翼なり。……あの、さ。突っ込んでくれないか?やっててめちゃくちゃ恥ずかしくなるからさ』


 ――『…………』


 ――『あぁもう!! 俺は叶人かなと。お前の親友になっから覚悟しろよな! そんでもって……俺がお前を救ってやんよ!!』



「清人……」


 清人は泣いていた。

 ああ、清人だけには泣いて欲しくなかったのに。


「俺は……叶人が居なくなるのは寂しいよ」


 悲痛な呻きを耳にして弱ってしまう。

 俺が消えたら清人が悲しむだなんて分かりきっていた。

 ただ、分かっていても清人の悲しむ顔を前にするともう少しだけ、もう少しだけ一緒に馬鹿な事をやりたいと思ってしまう。


 でも、決別は必ず来る。

 だから俺はサヨナラの代わりに。


「清人」



「お前の事は俺がずっと見ててやっから……安心しろ。誰がお前を見捨てようとも、誰がお前を貶めようとも、俺だけは必ずお前の味方だ」


 俺はありったけの愛を――友情を込めてそう言ったのだった。



♪ ♪ ♪



「……きて、清人。起きて清人」


 ゆっくりと目蓋を開けると辺りは薄暗闇に包まれていた。どうやら長い事眠りこけていたらしい。他の乗客も先程の俺と同じように眠りこけていたり、うとうとと微睡んでいたりしてジョウキキカンのガタンゴトンという不規則な音を子守唄がわりにリラックスしているようだった。


「んっ……どうした?」


「そろそろ着くよ。ミロとテルミドーランを分ける関所前にさ」


 そう聞いてほっと安堵のため息を吐いた。

 まだ『デイブレイク』の勢力圏なのが怖いがそれでもハザミへの逃走経路へ一歩前進したのは大きい。

 それに加えてジャックの分の運賃を誤魔化しただけあって金貨は二枚残っている事だし、渡航代金もこれでどうにかなるだろう。


「ところで……何でまた泣いてるのかなぁ? 魔獣戦といい、ちょっと変だよ?」


 そう言われて手の甲で目元を拭うとしっとりと濡れていた。本当に泣いていたようだ。


「……懐かしい夢を見てたんだ」


 それは、懐かしい地球の記憶。

 遊んで、喧嘩して、また遊んで。数少ない俺の宝物だ。


「そっかぁ……」


「あの頃は楽しかったよ。毎日のように馬鹿やったり、遊んだり。……本当に楽しかった」


「それは前に言ってた()()()()との思い出って事で、良いのかなぁ?」


 ジャックのその言葉には妙なニュアンスが含まれていた気がするけれど取り敢えず「ああ」と返答した。

 するとジャックはいきなり身を捩り「青春の息吹だねぇ!!」と何故だか喜んでいた。


「ああ、……楽しい青春だったよ」


「良いねぇ、彼女がいる青春!! いやぁ、僕はイデアの住人だったからそう言う色恋話とかにちょっと憧れるんだよねぇ……。あ、ごめん気分を悪くしちゃったかな?」


「……いや、良いよ。……もう全部終わった事だし」


そう言うとカランカランと鐘が鳴った。

どうやら関所前まで到着したらしい。


「それじゃあ、ジャック。すまないけどまたターバンになってくれないか?」


「うぅ……ハザミに着いたら何かしら奢ってもらうから覚悟して欲しいかなぁ」


 恨みがましい視線を感じながら俺はジャックの口に頭を突っ込んでジョウキキカンを下車した。


「うっし、高飛びまであともう少しだ」


 そう口にしたその瞬間。


「――そこまでです」


 酷く冷淡な声がした。

 何故、どうして、そんな思いが思考を埋め尽くす。

 闇夜でもハッキリと分かるハシバミ色の髪。


「『デイブレイク』幹部『六陽』の一人、テテ。これより魔王の因子を持つ者を討伐します」

自分用 叶人登場シーン


・九話――『止せ!!止めてくれ!!そんな事をやったらいけない!!』

・十話――『俺がお前を救ってやんよ!!』

・二十一話――『俺がお前を救ってやんよ!!』(二回目)

・二十二話前半部分にてサボローとして初登場

・二十九話――『俺がいる限り絶対に死なせない」――『お前は絶対に大丈夫だって、俺が保証してやんよ』

・三十話――『俺が、全部抱えてやんよ。辛い事も、悲しい事も、全部俺が抱えてやる。だから、お前の背負ってる重荷、俺に寄越せよな』

・三十二話全体

・三十四話前半


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