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A bit of brave 【3】

待たせたな。

はい若干スランプってました。けど謝らない。スランプだったんだもん仕方ないね。

「ねぇ清人、本当に行くの……?」


 ジャックは肝試し前の女性タレントのコメントみたいな感じでそう言った。

 見た目は明らかにそっち系なのに案外小心者のカボチャである。


「当たり前だろ。俺は一度やると決めたらやる男だ。それに……俺達は『デイブレイク』と敵対してるんだから一刻も早くここから逃げたい」


 そう、今現在テルミドーランには『デイブレイク』が誇る六人の幹部、『六陽』の一人『拒絶姫』がいるのだ。ゴブリンの件が片付いた今、『デイブレイク』がいつ襲ってくるか分からない。

 だから早急にここから高跳びしなければならないのだ。


「それとも心配事でもあるのか?」


 そう言うとジャックはコクリと、控えめに頷いて見せた。


「大丈夫だって、安心しろよ。俺と『魔王』で絶望なんてサクッと倒してドーンと高飛びだ」


 「俺を頭数に加えるな」なんて声がしたような気がしたがきっと気のせいだろう。

 うちの『魔王』がツンデレなのは周知の事実なのだ。


「さぁ、やろうか。バァンとォ!! な」


「何か屍になりそうだからやめようねぇ!? というか君妙にゲームとかに詳しくないかなぁ!?」


「地球にいた頃はゲームとラノベが生き甲斐だったからな。時たまこう……ネタを打ち込みたくなるもんなんだよ、無性にさ。名前繋がりで希望の花を咲かせないだけマシと思ってくれ」


「心配するだけ損だった!?」



♪ ♪ ♪



 行き着いたのは辺りが良く見渡せる平原だった。


「そろそろ出てもおかしくは無いんだけどな」


 そう言うとメニューに視線を移す。

 普段は戦歴が表示されている部分には代わりにミニマップとも言うべき代物が表示されており漠然と魔獣の位置が分かるようになっていた。

 ただ飽くまでも漠然と、でしか無いのでこの辺りにいるのは確かなのだがピンポイントでここにいるとかは分からない。


「……」


「ジャック、どうかしたのか?」


 いつもと違って酷く口数の少なくなったジャックに話しかけると、シッと口を塞がれた。


「何かが近づいて来てる音がするよ……左手の方向、だね」


 左手の方向を向くとその先には……。


「ッ!?」


 それは、ホヤのように見えた。

 あの骨つき肉を極限まで気持ち悪くしたみたいな見た目をしているあの海産物だ。あれが、二足歩行をしたらあんな風になるだろうか。


『ふん、コレが絶望の果てとやらか』


 ゆっくり、ゆっくり、垂れ落ちそうな肉の塊をあちこちに纏いながら緩慢な動作でこちらに近付いてくる。

 ――異物。

 その言葉がしっくり来るような外見をしている。


『息を吸え、空気を肚に落とし込め。正確に構えろ。敵を睨め』


 落ち着き払ったその声に従って杖を構える。

 幸い動きはトロい。『加速アクセル』を使用すれば捕捉される事は無いだろう。


『気分を落ち着けたな。ならば後は征くのみだ』


「――応ッ!!」


 異形の影を睥睨しながら疾駆する。


「らァァァッ!!」


 身体が軽い。レベルが上昇したからだろうか。踏み締める足も、振り上げる腕もキレが格段に良くなっている。

 魔獣は俺を視界に捉えてはいるだろう。


だが――反応は出来ない!!


「ぼくハ……見て欲しかッたダケなんだ」


 そんな呟きが耳に入った。

 だが俺の考えていた事はたった一つ。この醜い絶望の皮で覆われた人を助けると言う事だけ。


 杖をフルスイングする。

 無駄な動作は多いが威力は強力。魔獣と言えど当たれば痛いでは済まされないだろう。


 だが。


「何だよ、この肉ッ!?」


 その肉は鎧……いや堅牢な要塞のようで強打した俺の腕が痺れた。


『やはり耐久性に優れるタイプか。一旦引いて炎で攻めろ!!』


「ぼくハ見て欲しかッたダケなんだァ!!」


 魔獣がそう叫ぶと腹部の肉が裂けて腸が露出する。

 そしてその腸は重力に反して浮き上がるとまるで鞭のようにしなり後方へ下がろうとした俺の肩を強かに打ち付けた。


「ッがァ!!?」


「清人! 大丈夫かなぁ!?」


 平気だ、とはとても言い難い状況ではある。

 さっきの一撃のせいで負傷した右肩が動かなくなっているのだ。


「ぼくを見ロ!!」


「生憎グロい露出狂はご遠慮だよッ!!」


 再びこちらへと繰り出された腸の鞭をジャックの蔓がはたき落として行く。


「バッチいけど僕が腸をどうにかするから清人はどうにか本体をお願いするよ!!」


「あいよっ!!」


 腸を出すために露出させた内部。そこに寸分違わず――叩き込むッ!!


「『灼熱よ燃え盛れ(イルク・アルバ)』ッ!!」


 深紅の魔法陣から炎が飛び出す。

 炎は異形を包み込むと醜悪な肉の塊を焦がしながら土煙を上げた。


「効いてる……これなら!!」


『いや、駄目だ。良く見ろ、あの肉を』


 土煙の向こう側。そこには――水泡のできた醜い肉が蠢いていたのだ。

 そしてそんな肉塊を見て、ふと嫌な想像が頭を過る。


「……自己回復(リジェネ)


 俺は勘違いしていた。

 動きの遅い魔獣に対して速度で大幅に勝る俺。それだけで有利だと思っていた。

 だがそれは間違いだった。

 腸を使用した遠距離攻撃は動きの遅さをカバー出来るし、そもそも防御力が異様に高く生半可な攻撃が通らない。その上自己回復までつくとなると……相性で見れば、最悪に限りなく近い。


「上等だっての……。俺にも意地があんだよ」


 長期的に見れば俺の負けは必至。

 ただ、勝利するためのビジョンが無い訳でもない。

 単純明快な、たった一つの真実。


「何でそうなったかとか、そんな事は知らない。けど、俺が……俺がお前を救ってやんよ!!」


 一発、回復出来ない量のダメージを叩きこんでやる!!

あれ、清人性格変わった……変わってない……?

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