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A bit of brave 【1】

【許して】マップ書いてたら投稿が遅れた件【クレメンス】

 俺たちは現在いる機構都市テオ=テルミドーランから東へと進み臨海都市ミオ=ヒュルツへと向かう事に決めた。


挿絵(By みてみん)


 旅の行程をざっくりとさっきのジャックの地図を用いて図示すると大体こんな感じだろうか。

 二つの大都市の間に横たわる大河を迂回し、ジョウキキカンで陸路を一気に進む行程となっている。

なっているのだが……。

 テルミドーランのジョウキキカンのチケットを取ろうとしてある問題が発生した。


「何だよ、これ!? 値段高い!」


 ジョウキキカン……というか見た目はモロにロコモーションなのだが、これの搭乗料がかなりかかる事が判明したのだ。

 その額、なんと金貨二枚。これが如何ほどの額かと言うと……。

 スライムを纏めて討伐してその報酬は僅か八枚。

 デスパレードを乗り越えて漸く銀貨二枚と銅貨が一枚。

 ゴブリンの大繁盛の時のお零れが述べ銀貨一枚と銅貨四枚。

 今までに頂いたお給金は占めて銀貨四枚と銅貨三枚。金貨一枚にすら届かないのである。

 しかもその額がまるっと残っているかと言えばそれも否。エリオットから奪ったお金を先に使ってはいるが、後はこの金から日々の生活費を捻出した為、銀貨二枚と銅貨七枚しか手元に無いのだ。

 流石に日々の寝食は馬鹿にならない。

 しかし可及的速やかに逃げなければ『デイブレイク』がやって来て呆気なく必至が掛かる訳である。

 どんな地獄なのだろうかと頭を抱えた。


「ジャック、手っ取り早くお金を稼ぐ手段って何か無いか?」


「そんな都合の良いものある訳――」


 そう言いかけるとジャックは口を噤んだ。一体どうしたのかとジャックの視線の先辺りを見回すと一枚の張り紙があった。


 まず目に飛び込んだのは、莫大な報酬金額――金貨五枚。

 そしてその上には悍ましい姿をした怪物の絵があった。


「『魔獣から息子を救出して欲しい。もし救出してくれる勇士がいるのならテオ=テルミドーラン第二支部受付まで来てくれ』……か」


 魔獣。いつだったかジャックが言っていた。絶望より生まれ、世界を憎み、世界を破壊する癌細胞だったか。

 そしてその報酬はジョウキキカンの金貨二枚を要求するのを補って尚余りある金額だ。


 リスクを取るか、リターンを取るか。

 いや、違う。

 俺には初めから選択肢は無い。飛びつかなければ『デイブレイク』の手によって葬られるだけだ。


「まさか行く気じゃないよねぇ!?」


 ジャックの悲痛な問いに俺は無慈悲にもサムズアップを返した。


「待ってよ、中の人のいる魔獣って普通の魔獣よりも断然強いんだよ!?」


「……中の人?」


 一瞬、紫髪で眼鏡なパイロットの搭乗するGNバズーカを持ったデカブツを想像した。恐らく、というか絶対にそんな事はないだろうけれども。


「前は説明しそびれた今するんだけど……魔獣には二種類あるんだ」


 そう言うとジャックはブイサイン……いや骸骨の二本の指を立てて見せた。


「一つは人々の普遍的無意識から生じた魔獣。これが中身が無いタイプだよ。特徴としては倒してもまたいつか復活するって事なんだけど実はその分打たれ弱くてモンスターと同程度の強さ……っていってもピンキリなんだけど。比較的倒し易いんだ」


 成る程。無限にリポップする代わりに力は弱めと……。んんっ?


「……ちょっと待ってくれ。それってモンスターとどう違うんだ?」


 ジャックは前、『イメージ通り悪い事する異形』と言っていたのだが、モンスターと魔獣についてのイメージがだだ被りしている。一体何が基準でそうなっているものかと尋ねるとジャックはやれやれと言った風に肩を竦めた。


「大違いだよ。モンスターは原生生物。その中でも取り分け人々に害を与えるものを指す言葉だよ。魔獣とは別物だね」


 そう言われると成る程、成り立ちの違いが魔獣かモンスターかを左右するのかと納得出来る。……一回目の説明で確実に言ってない事柄なのだが。

 総括すると魔獣は本物の化け物で、モンスターは地球で言う指定外来生物か或いは有害生物に近いという訳だ。


 ――『……モンスターだからどうこうは、駄目。色眼鏡良くない』


 ふと、その言葉が思い起こされた。


「ッ……!」


 顔をぶん殴られたみたいな衝撃が走る。

 ……ゴブリンの時点で察していれば良かったかもしれない。


「ん? いきなり暗い顔だねぇ、どうしたのかなぁ」


 そう、『有害生物』。

 それが誰にとっての有害か、だなんて簡単に分かる。……人間だ。

 薄桃の髪の少女の事をが頭を過った。彼女はどれ程人間至上主義に振り回されたのだろうか。それを思うと胸が締め付けられた。


「……いや、続けてくれ」


 ジャックは不審そうな目で俺を眺めていたがそのことに思い当たったのか露骨に目を背けた。


「そう、だね。話そうか。……中身のある魔獣、それは個人の巨大な絶望が受肉してこの世界に現れたもの、かな。その時に絶望の元……絶望した人を取り込んじゃうんだ。そしてそれを倒さない限り取り込まれた中の人は解放されないまま絶望に浸り続けるんだ」


「――なら、助けないとな」


 「へ?」とジャックは素っ頓狂な声を出した。


「絶望した人を絶望したままにするのは絶対にダメだ」


 それは俺のエゴであり――今度こそ成し遂げたい事。

 もう二度と惨劇を起こさせはしないのだと。


「俺は助けたいんだ。絶対に」


「君は――いや、前から気になってたんだけど……」



「どうして君は人を助ける事にそんなにも固執するんだい?」

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