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リザルト

今回で最終回ですが、予告通り滅茶苦茶あっさりと終わります。

 程なくして杉原叶人は寿命を迎えた。伴侶を亡くしたアラクネは体液置換が出来なくなり死に至る。希望を見出し、神に勝利した者であったとしてもそこは変わらない。多くの苦難にぶつかった彼だったが、終わりが早かったのは彼にとっての幸か不幸か、それは当人のみぞ知る。


 さて、場所を移してデイブレイクの本部。激戦と悲惨の跡が色濃く残るそこには一枚の貼り紙があった。


『酷い火傷を負ったので暫く休養しますBYニャルラトホテプ』


 幻想旅団との決戦に際して徹底した人払いがなされた本部では未だその貼り紙を見た者はいない。しかしこれを見た構成員はこう思う事だろう。


「ああ、またサボりですか」と。


 実際『六陽』のメンツは揃いも揃ってサボりの常習犯である。怠惰を旨とするエクエスは勿論の事、基本働かないクロエと自分よりも強い者の言うことしか聞かないシュヴェルチェ、そして何を考えているのかフラフラと仕事したりしなかったりするニャルラトホテプ。

 上層部たる『六陽』の過半数が仕事しないのである。

 だからこそ、構成員はこう判断するであろう。


 今度は一体どれ程空白期間を作る気だろうか。一週間か、一か月か、それとも一年か。とても分かったものではない。


 しかし、ただ一つ。死んでいない事は確かである。ニャルラトホテプは最強。それは過去も未来も絶対的で揺るがない。普遍的な事実である。故にニャルラトホテプが再び『六陽』の席につく事は間違いないだろう。


「お休みが終わればまたお仕事をしなければなりませんね。仕事も溜まっているでしょうし、減った分の邪神も補填しなくては♪」


 ――口元に邪悪な笑みを讃えながら。



▲ ▲ ▲



 気付いたら俺は道場の前に立っていた。


「……いや、何でだ」


 と言うのも、さっき確実に死んだにも関わらずこんな所にいるのだからそうなるのも仕方ない事だろう。

 取り敢えず道場の外観を眺める。ごくごく普通の外観だ。道場で検索したら多分一発でヒットするようなベタで平凡な感じだ。


「えっと何々? 鳴海道場?」


 鳴海道場というらしい。奇しくも死ぬ直前に戦っていた相手と似たような名前をしている。まぁ、多分空似だろうがそれでも心情的には引っかかる物が残る。

 取り敢えず触らぬ神に祟りナシ。聖体を拝領しなければ獣の病は蔓延しないのだと俺は踵を返す。が、


「コミュが足りない!!」


「は!?」


 なんか、さっきまで戦ってたはずのラスボスが、どういう訳か道着ルックで中から飛び出して来た。訳がわからない。もう一回遊べるドン! って奴だろうか。そんなお代わりはノーセンキューだ。


「杉原叶人さん、貴方はコミュが足りません。何ですかあのギスギス具合は。一体何をしたらあそこまでギスギス出来るんですか」


「は?」


 なんだろう。元凶にそれを言われると滅茶苦茶腹が立つ。死んだら自爆して世界滅びるとか言い出したせいで俺を含めてどれだけの人が頭を抱えたと思っているのだろうかコイツは。


「まぁ、確かに? コミュを上げたとしても色々な手法で精神とか正気をガリガリ削る算段はありましたがそれにしたってあんまりにもコミュが無い!! 両親との対話の場面で容赦無く、且つノータイムでバッドコミュニケーション引く人がいますか!? あの場面は抱腹噴飯モノでしたよ全く」


「……」


 やらかした自覚はある。が、メンタル的にあれが限界だったのだ。仕方がないって奴だ。それを他人にとやかく言われる筋合いは無い。


「ここからは真面目な話を。……杉原叶人さん。両方の世界の延命、おめでとうございます♪」


「……」


「おやおや、随分と嫌われてしまいましたね。これは悲しい。ですが、ええ。役割ですので伝えておきましょう。貴方はトゥルーエンドには辿り着けなかった。ハッピーエンドにも辿り着けなかった。なので、私が貴方に報酬として与えるのは『単なる妄言』です」



「一つ、『もし仮にゴブリンの王との戦いの後直ぐにアニさんを仲間に引き入れて臨海都市で再開する約束をしたのなら』。

二つ、『灯紅蓮の刀を凩に渡さずに自分で使用したら』。

三つ、『アニさんが唯さんを殺害しようとした場面で『災禍の隻腕』を使用したら』。

四つ、『エクエスとの戦いでアニさんを頼らず唯さんに止めを要請していれば』

……以上です」


「……本物の妄言だな」


 一つ目は、まぁ分かる。が、二つ目と三つ目は不可能だ。四つ目も、出来ない事はないだろうけどもアニの精神状態が悪かったし頼らなかったら頼らなかったで碌な事が起きない気がする。


「ええ、勿論ですとも。妄言ですから。しかしれっきとした貴方へのプレゼントです。喜んで頂けましたか?」


「いや、全然。全く」


「でしょうね♪ ……っと、そろそろ時間のようです。では杉原叶人さん」




 ――またお会いしましょう。

ニャルラトホテプは火傷が治ったらまた侵略仕掛けます。尚、最終兵器たるオルクィンジェは先の決戦で死亡した為地球&イデアの勝ち目は非常に薄いです。

が、暫くは平穏な日常を過ごす事は叶う事でしょう。……いつまで続くかは邪神はのみぞ知る。


そして主人公が頑張った報酬は『邪神の妄言』だけ。割りに合わない感。

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