最終決戦・けだもののキス
戦闘は入れなかったが、イラスト付きだゾ。
俺が部屋に入ると濃厚な血の匂いが漂って来た。吐き気を催す匂いから意識を外すと、視界に入るのは糸の白と血の赤で彩られたマーブルの世界と、自ら首を絞めたまま絶命した『強欲』と、四肢が無くなり微動だにしない凩と、何処か満足げな表情で目を閉じている篝と、血溜まりを広げているアニの姿だった。
辛うじてアニは生きている。けれど凩も篝も、二人とも死んでいる。その事実が何よりも重く伸し掛かる。鈍磨した筈の心が尚も軋みながらひび割れていく。そんな気がした。
「……アニ」
いや、今はアニの傷を塞ぐのが先決だ。
アニはまだ生きている。止血して俺の血を飲ませれば……延命は出来るはずだ。
そう思ってアニに近寄り、ふとその思考に違和感を感じる。
アニは、何故止血をしていないのだろうか。糸の生成はアニの十八番。止血をする程度は片手間に終わる筈なのだ。
そしてアニに近付くと、更に絶望的なモノが見えた。
肉だ。内臓だ。臓物だ。
腹の肉が抉れてそれらがまろび出ていた。
……ああ、ああ。一目見れば分かる。これは助けられない。血を飲ませても延命は叶わないだろうと一目見るだけで分かる惨状に思わず全身の力が抜ける。
「あ、アニ……」
アニは止血しなかったのではない。出来なかったのだ。
「かな、と」
焦点の合わない赤い目がこちらを向く。
「あ、ああ。アニ、大丈夫だ。大丈夫。俺の血を飲めば治る筈だから。アニは何も気にしなくて良い。傷もすぐに良くなって元通りになる筈だ。ほら、病は気からって言うだろ? 大丈夫、大丈夫なんだよ。アニはこんなところじゃ死なない。俺が死なせないからさ。だから大丈夫、大丈夫なんだ。ほら、ちょっと待ってくれよ、今から手首切るからさ。きっと良くなる。きっと良くなるに決まって……」
「こっち、来て」
酷く穏やかな声音だった。痛くて苦しくてたまらないだろうに、そんな事などまるで気にしていないような、或いはもう痛みなど感じていないかのような、そんな声音。
「な、なんだ? どうした?」
「きす、しよ?」
俺はアニに強請られるままに口付ける。
これは、最期のキス、というものだろうか。
……ああ、そう言えばアニが死んでしまったら、そう遠くないうちに俺も血が飲めなくなって、発狂して、悶え死ぬんだったか。
つまり、バッドエンドだ。地球は滅ぶ。仲間を直接手にかけ、或いは死地に送り込み、挙句何の戦果も得られず終わる。なんて酷い終わりだろう。
けれど、ああ。けれども。
その事に少し安堵を覚える自分がいる。
もう、楽になりたかった。戦いたくなかった。休ませて欲しかった。死ねばどこに行くかなんてのは分からない。けど、生きながらの苦しみはもう沢山だ。
そう思うと死を強く意識してしまうこのキスも悪いものではない。
「かなと」
「何だ?」
「まえに、すすんで」
すると、何か弾力のあるものが口の中に割って入り、千切れた。
いきなりの事で驚いたからか、それとも甘い香りがしたからかは分からないが俺はそれを飲み込んだ。するとそれを皮切りに口の中を暴力的な甘さが支配した。その甘さは先程までの思考と理性を容易く奪い去って尚も余りある代物だった。
こんこんと湧き出るそれを俺は夢中で啜り、舐め取る。一体何処から湧いて来るのか。この甘露は。
蜜のようなそれの源泉を辿っているとふと、何となく嫌な予感がした。
俺は今とんでもない事をしているような、そんな予感が。
そしてそれは源泉を辿ってアニの口腔に侵入して明らかとなった。
そこにある筈の舌が無いのだ。
その代わりにあったのは甘い液体の源泉のみ。
「っ!!」
俺の飲んでる液体、何だ?
それはアニが生きるのに必要な……血液じゃないのか?
駄目だ。飲むな飲むな飲むな飲むな!!
これ以上飲んだら、アニは……。
「あ、に?」
あに、は?
冷たい。脈もない。死に体、どころの話じゃない。これでは、これではまるで……。
死体ではないか。
♪ ♪ ♪
ずずっ、ずずっ、ずずずっ。
啜り取る。
べちゃ、べちゃ。
舐め取る。
ぶちぶちぶち。
貪り喰らう。
♪ ♪ ♪
「おやおや、誰が来るかと思いましたがよもや……辿り着いたのは血の匂い漂う犬畜生ただ一匹とは。期待外れも良いところです。が……まぁ良い。ええ許しますとも。ところでその濃厚な血の匂いから推察するに……貴方、自分の妻を文字通りの意味で食べたりしましたか?」
唯VSクロエ
唯の敗北
オルクィンジェVSテテ
オルクィンジェの敗北
叶人VSエクエス
叶人の勝利
凩、篝、アニVSシュヴェルチェ
アニのみ勝利するも自害




