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最終決戦・簒奪の徒

250話目!!

多分次回かその更に次で『強欲』戦終わり!!

 凩の体から急に力が抜け、ガクリと膝から崩れ落ち、次いでその膝も、いやそれどころか四肢の全てが唐突に消失する。


「な、何が!?」


 思わずそんな言葉が口を突いて出たが、その実凩には何をされたのかに関しては凡そ察していた。吸われた、否。奪われてしまったのだ。生命線たる魔素を。

 凩は魔素によって失った部位を補填して来た。しかしそれが奪われてしまえば……後は、奪われるのを待つだけの身に成り下がる。それどころか今まで補填していた分すら無くなり達磨同然の姿へと変わり果ててしまったのだ。


「そうだ。そうだ。能動的に簒奪せずして何が俺か! 簒奪こそが俺の道! 路傍の石ころども如きに俺の道は閉ざせない!」


 それを見て『強欲』の徒は大笑する。ざまぁないとでも言うかのように。

 耳障りな笑い声が響き渡る。しかし凩は、アニは、篝は何も出来ない。

 攻撃を加えればその分奪われ、攻撃しなくとも奪われる。つまるところ、生存権すらもいずれは奪われる定めにあると言える。

 簒奪だ何だと言っているが、要するに『奪われて死ね』という能力なのだ、『強欲』の権能は。


「さて、散々呪いをくれたお前は入念に奪ってやりたいところだが、奪ったら最後もっと呪われちまう。で、殺すのもナシだ。こんだけ呪いを振り撒いておいて道連れじみた真似が出来ないとは考え難い。だからよぅ、こんなのはどうだ?」


 パチリと指を一つ鳴らすと篝の手が元いた場所へと戻り……篝が呻く。


「お前、一体……!?」


「渡しただけだよ、俺の物を。やっぱ手がないのは色々不便だろうと思って仏心出してやったんだよ」


 そう言うシュヴェルチェの顔はやはり醜悪に歪んでおりそれが仏心でないのは一目瞭然だった。


「まぁ、俺の物だから俺の意思が適応されるんだけどなぁ!」


 すると、篝は戻った手を押さえつつも刀を取り出し……自分で自分の手を切り落とした。


「あの女も大概狂人か。まぁ対処としては大正解ではあるがな。そうでもしなけりゃ、お前を叩き切って貰うところなんだが、いやぁ、惜しい惜しい」


 シュヴェルチェが企んだのは篝を操って凩を殺害、あわよくば凩の呪いで篝を殺してしまおうという一挙両得の手筋だった。

 実際、凩は今自身を殺した相手を道連れにする呪いを掛けていた為、篝が自分の絵を切断しなかった場合最悪の一挙両得は実現していた。


「……」


 最早勝ち筋はどうにか凩を殺させて道連れにする以外には無い。しかし肝心の要の凩の四肢は既に無く、成功したとしても凩の死亡は確定する。


「こうなりゃ、しゃあないか、の」


 そこで凩は考えを改める。自分は最早助からない。何か別の方法で勝てたとしても最終最後の決戦で達磨では役に立たないだろうし、肉壁として役に立てたとしても道連れの呪いのせいでニャルラトホテプを呪殺しかねない。そうなれば二つの世界の存続は成らず、最も不本意な結末での終わりを迎える事となる。

 つまり、凩の生存には最早戦術的な意味も価値も無いのである。


「命の使い所は、ここや」


 故に、凩は絶殺必死の覚悟を決める。


「蜘蛛子、ワリャを、糸で操れるかの」


「……んっ!!」


 アニは言葉少なにも関わらず凩の意図を正確に察すると凩に幾重にも糸を巻き付ける。アニとてただ後ろで傍観していた訳では無い。もしも凩が敗れた場合を想定して二の矢を作るべく陣地作りに専念していた。


「……仕方ない、というのかっ」


 そして糸で巻かれた凩を見て篝も察してしまう。

 糸で凩を縛り付けて、いざというときの肉盾にしようとしている事に。そしてそれを誰よりも凩が望んでいる事に。


「オイオイオイ、人の心がねぇのかぁ? 仲間を平然と見殺し……いや、これは自爆か。そんな事をしようとするなんてヒーロー様にしては非情なこったなぁオイ!!」


「知らん、こっちゃないの。……ワリャ達は手段を選んではおれん、のや……」


 血走った目で凩は吐き捨てる。

 恐らくこれは間違いだ。それは誰の目にも明らかだった。けれど既にそうしなければ詰んでしまうのもまた明らかだった。

 端的に言えば……最初から、選択を間違えていたのだ。


「心底気持ち悪い正義だよ、反吐が出るッ!!」


 そう言いながらシュヴェルチェは既に簒奪が進む篝に突貫するが、その先には予見したかのように糸によって操られた凩が配置される。


「……チィッ!」


 殺せば呪殺。篝に殺させようとしてもいきなり飛んで来て結局呪殺。

 これで、流れはイーブンに……。


「……ああ?」


 ならなかった。

 訝しむ様にシュヴェルチェは首を傾げると凩の面をよくよく観察して、口元に笑みを浮かべる。


「は、はははは!! はははははははッ!! コイツもう死んでらぁ!! そりゃそうだ、自傷攻撃をバンバン馬鹿みたいに打った挙句俺に散々奪われてんだ。その状態で生存すんのは無理ってもんだ!!」


 凩は、死亡していたのだ。

 呪殺は殺した相手を道連れにする呪いである。しかし……凩のそれは直接の死因たる失血の因果を辿るには至らない。つまり直接殺されなければ呪殺は成らないのだ。


 そしてこの瞬間、篝の敗北もまた確定した。

250話行ったし一人脱落。



唯(?)vsクロ(?)

オルクィンジェ(lose)vsテテ(win)

叶人(win)vsテテ&エクエス(lose)

凩(dead)篝&アニvsシュヴェルチェ

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