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最終決戦・ツギ(ハギ)へ

バッドエンド臭くなって来たなぁ!!

 『怠惰』の極みとは何だろうか。

 自ら何もしない事? 成る程、それは確かに怠惰だ。しかし極みかと言われればそうとは言えまい。何故なら何もしなければ何も出来ない、翻って何かをしなければならない状況に追い込まれる事に繋がるからだ。

 故に、エクエスは怠惰の極みをこう解釈する。


 他者を『出来る』人間に変容させる事だと。


 エクエスがニャルラトホテプより賜った能力。それは教導の力だ。己の戦闘経験や能力をコピーして他者に貼り付ける事で素人を一足飛びに一角の戦士にしてしまう、単純に言えば軍を作る能力。デイブレイクの戦力拡充の根幹を支える、そんな力だ。

 だが、怠惰にも明確な弱点は存在する。

 それはサシでの対人戦闘に弱いと言う事だ。

 軍を作り、自ら動かずして勝利するのが怠惰の戦法にして流儀。しかしそれが無くなれば残るのは素の力のみとなる。

 エクエス自体弱くは無いが能力込みなら『暴食』や『強欲』にあっさり負ける。

 基本的にこの権能は対面する事を念頭に入れたデザインではないのだ。


 それを念頭に入れて、この現状。下の階からやって来たのは理性のかけらも無くなった同僚。肉体改造のせいか羽根やら手足が増設されており敵味方関係無く暴虐を振り撒いている。

 普通にやっても勝てる相手ではないのは明らかだ。


 では、このまま潔く負けるか?

 否。断じて否だ。


「テテ、お前さんはちょいとやり過ぎた。だから……ちょいと怠惰になろうや」


 怠惰とは変容の力。学生の手抜きのようなコピーアンドペーストの力。

 速い話がステータスや戦闘経験を好き勝手弄る事が出来る能力と言えば分かりやすいか。基本付与する事に特化した権能だがーー対価を払うならそれを逆転させる事もまた可能だった。


 敵を倒すに派手さは要らぬ。


「テテが肉体改造して以降の経験を全削除。……基礎ステータス削除」


 ゴポリとエクエスの口から血が流れ出る。

 当然だ。本来想定されていない権能の使い方をしているのだから。

 しかも自分よりも明らかな格上を相手に。


「エクエス!?」


「こっちは気にしなさんな。おっちゃんの勝手にやった事だ。……それよりも、来るぞ」


 異形は変わらない。しかしその速度も技巧も何もかもが先程よりも数段劣るのもに変わる。

 魔装も維持出来なくなったのかモヤも霧散しており、サシで戦える程度には格落ちしている。


「そいじゃ、後は頼んだわ。青年」



♪ ♪ ♪



 エクエスが倒れた。それとほぼ同時に怪物の動きが今までとは段違いに落ちた。それこそ、目に見えて。

 エクエスの能力は戦闘経験のコピーと言ったが、それと現状がいまいち結び付かない。けれどエクエスが体を張った好機、逃すつもりはない……!!


「はぁぁぁぁぁっ!!」


 杖の先が真っ直ぐに腹部を捉え、突き穿つ。

 そこに先程までの硬質な手応えは無く、攻撃が通るようになったと確信する。

 基礎ステータスの低下によって持ち前の瞬足と硬さとパワーが失われて、残るは不慣れな手足、重い羽根というハンディキャップのみ。


 そんなもの、獣の手足を持つ俺にとってはただの的でしか無い。


 残心すら利用して更に前に。杖すら手放して鋭く肥大化した自分の爪で今度は羽根ごと背中を引き裂く。


「オルクィンジェから真似た物を失った程度で、喚くなァッ!!」


 叫び声が騒々しい。それは所詮、オルクィンジェから真似ただけの紛い物なのに。


 悶え苦しむ怪物を何度も何度も息絶えるまで執拗に刺突する。


 暫く経っただろうか。

 怪物は動かなくなった。

 達成感は無かった。ただ虚無感だけが身体を支配していた。

 怪物の体を引き裂いた両腕は真っ赤に染まっていて、血が染み込んでしまったみたいにずんと重く感じられる。


 ……ああ。


「何なんだろうな、本当に」


 そう呟けばまた心にピシリとヒビが入る音がした。

 オルクィンジェが負けた。テテだという怪物に取り込まれた。エクエスは先程からずっと伏したまんまで動く気配は無い。

 意味が分からない。

 何でオルクィンジェが死んだのかも。何でエクエスが俺を強くしようとしたり、身体を張って怪物を弱体化させたのも。弱体化後の怪物が異様に弱かったのも。


 何も、分からない。

 けれど前に進まなければならない。


 先へと続くドアに手を掛けて、ふと嫌な想像が頭に過ぎる。

 もし、もし仮に先で仲間が全滅していたのなら。

 そんな事はあり得ない……とは思えなかった。だって最高戦力であるオルクィンジェが敗北を喫したのだから。


「……進まないと」


 だが進まなければ、答え合わせをしなければ。でなければオルクィンジェとジャックの死に何の意味も無くなってしまう。


 意を決してドアを開けば、その先に敵は居なかった。


 しかし、鼻を突くのは余りにも濃厚な血の……死の臭い。


「……そんな、嘘、だろ?」


 俺の突き進んだその先に、生存者は一人しか居なかった。

最近モチベが低くて中々進まない……。

が、完結に向かって頑張るぞい!!

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