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デモンストレーション・JACK

注意:今回は内容に比してあとがきがとんでもなくネタに走っている為本編のシリアスを壊したくない場合はあとがきを読み飛ばす事を推奨します。

それでは、

 ジャックが前に進み出る。

 ただそれだけの事に俺の心は酷く騒ついていた。ハナから勝てないとは思っていない。ジャックが提案した以上、何かしらの勝算はある。その証が右腕にこれでもかと装備された防御上昇の指輪に腕輪の数々。

 唯の家に戻って以来行ったレベリングの過程で勝ち得た金銭の実に七割強がこれらに注ぎ込まれている。

 その結果、ジャックの右腕は機動力を比類ない防御力を得るに至った。これが、無意味だと何故思えようか。


「……勝ってくれよ、ジャック」


 ここで勝てば俺たちの出る幕すら無く目標は達せられる。勿論ニャルラトホテプが態々そんな事を言うからにはジャックの勝ちの目が無いと、そう思ったからこそだろう。


 ニャルラトホテプの試算とジャックの勝算。そのどちらが上であるかが、今決定する。


「ジャックさん、最後に言い残す事はありますか?」


「……」


 自然と汗が噴き出る。極限の緊張状態の中、隣に立つアニが俺の握り拳に手を添えた。

 よくよく見れば俺の手の平は力を込め過ぎたのか爪が食い込み血が流れていた。


「叶人、落ち着いて」


「……だな。団長が緊張しっぱなしじゃあジャックも緊張するもんな」


 少しだけ、力を緩めてその代わりに目を、耳を、極限まで研ぎ澄ます。

 ここから始まるお互い一発限りの勝負を一瞬、いや一刹那でさえ見逃してしまわないように。


「ああ、緊張して抜けてたけど、言いたい事は沢山あるよ」


 沈黙を保ち続けて来たジャックが不意に口を開いた。


「先ず叶人。……君に対してはごめんなさいだね。本来ならこの一件は僕らイデアの住人が解決すべき事だった。けど、君を巻き込んで、あろう事か問題の中核を背負わせてしまった。だから、ごめん。でも、君は、誰よりも傷付いて尚戦いに臨む君は誰よりも凄くて、ダメな部分も目立つけど、最高の団長だったよ」


「……ジャック?」


 ジャックの言動がおかしい。何だこれは。

 これではまるで。


「皆にも言いたい事は沢山あるよ。けど、それを言ったらさ、きっと僕は竦んじゃうから。ほら、だって僕ってそもそも戦闘力無いクソ雑魚カボチャだし、臆病な性質だからね。だから……うん。言わない。だから、その代わりに宣言するよ。この勝負は僕の勝ちだ」


 ニャルラトホテプがそれで良いのかとジャックに視線を送り、ジャックはそれに頷き返す。


「では、これより人の想念より生まれたイデアの住人同士による一発限りのデモンストレーションの開始を宣言致しましょう♪」


 すると、ジャックは真っ先に自分の身体に蔓をグルグルと巻き付け始めた。骨の腕やカボチャの頭は隙間なく蔓の中に埋没しその姿を覆い隠していく。それを見て、まるで鎧のようだと思った。

 それは果たして正しく隙間無く巻き付いた蔓はジャックの魔素によって性質を変え、シルエットを大きく変貌させる。


 背中からは黒く大きな蝙蝠の翼が生え、頭部にはカボチャの代わりに髑髏が据えられ、マントで隠れた胴はカボチャへと変貌する。

 そして見るべきはやはり異様な程に肥大化したその両腕。一度当たれば命は無い事を思わせるに容易い原始的な凶器の姿だ。


 至る所から俺と同じ蒼い炎を噴き出すその姿は――紛う事なき巨大な悪霊。


 それを見てまず感じたのは、


「やって見せろよ、ジャックゥゥゥゥッ!!」


 いっそ泣きたくなる位のジャックの決意と覚悟だった。




 そして、


 ジャックが右腕をニャルラトホテプの前へと突き出したのと同時に、


 光の奔流が、


 ジャックの身体を簡単に飲み込んで、


 とても、とても、あっさりと、


 ジャックの身体がチリになって、


 パキパキという異音がして、


「私の勝ち、です♪」


 ジャックの胴体が、頭部が消し飛んだ。


「ぁ……」


 見なくても分かる。輪転灼土エデンを使っても治らないし治せない。

 だってあれは生きているものを癒す力で、死んだものは癒せないから。


 誰も声を出せない。それはまるで沈黙の日曜日のよう。


「勝負あり、だなぁ。こりゃあ我らが総長の完全勝――」


「まだだ!!」


 気付いたら口を突いて叫んでいた。


「お宅ねぇ。仲間が死んでショックなのは分かるけどそれは理屈が通らない。分かってる筈だろ?」


 もう頭も滅茶苦茶で、情緒も滅茶苦茶で、論理なんてあったもんじゃ無い。

 けど、だからこそ思う。

 俺たちが一緒に旅したジャックは無駄死にをするような奴であるだろうか?


 否だ!! ジャックは勝ちだと言った。なら、ジャックの勝ちなのだ。

 見逃しているだけで、絶対に勝ちは転がっている筈なのだ。


 どう考えても自分の死を織り込み済みの策で、ジャックが無為に死ぬなんて、そんな事は絶対にあり得ないっ!


「……腕なら、まだ」


「あ?」


 ああそうだ。あるじゃないかジャックの右腕が。胴体も頭も消し飛んだけど、あの右腕だけなら。

 爆心地と化した箇所の土を掘り返す。


「クソっ、何処にあんだよっ!」


「叶人、多分これ……かも」


 すると、背後からそんな声がした。

 そちらを見ると暗い表情を浮かべるアニが何やら虫の卵鞘 のような物を手にしていた。

 いや、よく見るとそれは繊維質だし匂いはとても焦げ臭い。……炭化した蔓だ。


「アニ、良くやった!」


 俺はアニの手からジャックの腕を半ば引ったくるようにして取ると炭化した蔓を解いて行く。

 ある筈だ。ジャックの言った勝ちの正体がここに。無かったらおかしい。

 指輪や腕輪の残骸を掻き分けていると見慣れた白い骨の指が見えた。


「……お前、やっぱ馬鹿だよ」


 それを見て思わず笑ってしまった。少し気が緩んで涙が溢れそうになるがそこをグッと堪え、そして声高に叫ぶ。


「この勝負、ジャックの勝ちだ……ッ!!」


 だってそうだろう?


 微かに視点を下に下せば、見えてくるのは握り拳に、一本だけ立つ中指。そして、いつから彫っていたのか中指に刻まれた『F●CK』の四文字。


 やっぱりジャックは勝っていたのだ。


「――中指、一本分!!」


 何処か誇らしそうに立てた中指一本だけ。

 するとニャルラトホテプの大笑が響いた。いや、これは嘲笑、なのかもしれない。


「よもや、よもやジャックさんがそんな事をするとは思いませんでした。ええ、余りに予想外。素直に一本取られましたとも。そのアホくささ、馬鹿らしさ、驚嘆に値します。宜しい、それらに免じて私は中指一本分敗北を認めましょう」


「しかし困りました」と嘲笑の神は続ける。


「ジャックさんが勝った暁にはあなた方にとっての最善の終了を用意するつもりでしたが中指一本となると、はて。しかし勝利は勝利と、なりますと」


 すると、耳障りな音が聞こえた。太鼓、いやもしかしたら笛かもしれない。身の毛もよだつ不快な音。

 それがニャルラトホテプから聞こえた。

 ザワザワと木々が揺れ動き、風が唐突に湿り気を帯びる。


 そして、


「――――――――ッ」


 ナニカを見た。よく分からない。

 のっぺらぼうの、キチガイ。


「これを、グサリと♪」


 それがニャルラトホテプの手によってあっさりと葬られた。


「さて、皆さんの正気に戻って」


 その一言を以ってその場にいる全員が正気を取り戻す。


「中指一本分の勝利の報酬として、私は人間の種族の枠に於ける限界で戦うこととします♪ ええ、人間という種の枠に囚われる以上第二、第三形態なんて存在しませんのでその点はご安心を。しかし……逆に人間の限界の範疇となると手加減が出来ない。故に……邪神としてでは無く、荒人神ニャルラトホテプとして全力で叩き潰します♪ では、デモンストレーションが終わった事ですし皆様を決戦の地へと転移する事と致しましょう。それでは♪ 健闘を祈ります♪」


 ――眩い光が全員を包んだ。

げんそーりょだん・ぶれぶれぱんぷきん


絶対にあり得ないif:もし周りのヤツのノリが滅茶苦茶良過ぎたら。



叶人「やって見せろよ、ジャックゥゥゥゥッ!!」


凩「なんとでもなる筈や!」


エクエス「ジャック・ア・ボー〇ンだと!?」


唐突に流れる『閃〇』&ニャルラトホテプに反省を促すダンス

₍₍ (ง ˙ω˙)ว ⁾⁾<鳴らないことばをもーいーちーど描いてー


〈中略〉


₍₍⁽⁽(ી( ・ω・ )ʃ)₎₎⁾<一筋のひかーりーへー


ジャック「やめてくれないかなぁ……神経が苛立つ(#^ω^)ビキビキ」

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