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デモンストレーション・Brave and pumpkin

 さて、少し無駄話をしようか。

 僕の名前はジャック。ジャックオランタンのジャックだ。生まれはイデア、年齢は……自分でもわからないや。イデアって基本的に想念の世界だから時間の概念が結構あやふやだから年齢とかって実はそこまでハッキリしてはいないんだよね。

 それはさておき。今回は僕の半生について少し語りたいと思ってね。

 と、言っても僕の中で一番充実してる時期は叶人と出会って以降だから被る部分も多々あるんだけどもね。


 さてさて、じゃあ僕のお話の始まり始まり。


 さっき僕はイデアで生まれたと言ったけど実際の所は『生まれた』、と言うよりは『自然発生した』というのが正しいかな。

 イデアは想念の世界なのは前述の通り、その住人たる僕も例に漏れず誰かの想像から生まれた訳さ。

 そんなこんなあって発生した僕は程なくして魂を導く仕事に就いたんだよね。って言うのも、そもそもジャックオランタンって旅人を導く以外にも祖霊とか魂的なサムシングが合わさって、かくあれかし。まぁ日本でいうところのお盆に作るキュウリ、或いはナスの馬みたいなもの、と考えれば良いかな。


 で、僕はオタクになった。

 いきなり何でそうなると思うかもだけどこれって結構ジャックオランタン的なあるあるなんだよねぇ。ほら、ジャックオランタンって創作に結構出て来るし、認知度もかなり高い部類だからサブカルチャーとの親和性も高くてね。それに加えてイデアは各国集合。垣根は無くて想像の限りなんでもあり。だからありとあらゆる娯楽がある。とあれば、ね? 後はお察しの通り。


 そんな感じでオタ活しつつ仕事をしてたらいきなりヘカテに呼び出されて、それで異世界転生するからその旅の補佐、並びに『欠片』とやらまでの道案内を頼む、なんて事を言い渡されたんだ。

 このところ創作とかで異世界転生とか増えてるって話は知ってたからそんな日も来るかとか思ってだんだけども。まさか自分の番が来るとは思わなかったからビックリしたよ。


 そして、清人を名乗る叶人と出会った。


 第一印象は良くも悪くも普通だったかな。異世界転生に好意的な昨今の若人って感じでも無く、極々普通に狼狽えてるし。あと、ぶっちゃけると線が細くてもやしっぽいとも思ったっけ。今では相応に筋肉付いているけどもね。


 ただここで悔やまれるのが『欠片』を集めたらどうなるのか。その詳細を聞かなかった……いや、知ろうともしなかった事かな。

 僕の仕事はあくまでも賑やかしと道案内。それ以上でもそれ以下でも無い。だから詳細まで知る必要性を感じなかった。

 ……まぁ、知ったからといって違う行動を取れたかと言うとそれは多分否なんだろうけどね。


 結果として僕は、知らぬ間に叶人をそして仲間に重責を背負わせる事になってしまった。


 最初は本当に何もピンと来て無かった。オルクィンジェなんて名前の『天使セラフィム』の情報なんて碌に知らなかったし。

 でも、大森林に差し掛かる頃には大体分かってしまったんだ。

 思えばオルクィンジェは初めから情報を出してた。けど、僕は深く考える事をしなかった。だからこれも僕の失態。

 けど、まだ楽観的だったんだ。世界を滅ぼすっていうのはあくまで比喩に過ぎなくて、悪の親玉を倒せば皆丸く収まるんじゃ無いかってね。

 ……全然甘かった。甘過ぎた。相手の悪辣さを理解していなかった。


 正直、今日ここに至るまで僕のアウトを数えればきっとスリーアウトじゃ済まされない。それだけ取り返しのつかない失敗をしでかして来た。


 ああ、叶人は自分を失敗ばかりだと言うけれど、それは違う。叶人は間違えるかも知れないけど、その度に少しずつ強くなった。マイナスをニュートラルに戻し続けて、場合によってはプラスを生んできたんだ。それは実際とてもすごい事なんだ。


 だから、さ。


 僕もちょーっと思っちゃったんだよね。

 叶人みたいになれたらなって。


「提案、とあれば聞き入れないのはゲームマスターの名折れ。実行するかは別として拝聴しましょう♪」


 さて、無駄話はここまで。

 ここからは僕のターン。


「イデアの住人同士、デモンストレーションなんてどうかな。勝ち抜きルールを抜きにして、この場で僕と一対一」


 僕がそう言うと皆目を見開いた。

 まぁ当然かな。僕、戦う力なんて本当に無いし。


「くふふ……それは実に面白い提案ですねぇ。しかし理解していない訳でも無いでしょうに。それがただの自殺行為であると」


 実際そうなんだよね。けど、それが僕の考える最善。ただ、無駄死にはしてやらないけど。


「ジャック……やるんだな? 今、この場面で」


 叶人の真摯な視線が突き刺さる。……この場面の信頼って、ちょっと罪悪感だ。

 けど僕は止まらない。


「勿論、僕は勝つよ」


 再度言うけども僕には戦う力なんて無い。道中のモンスターは逃げに徹さないと死んじゃうモノがここ一番の場面で超パワーを発揮して勝つなんてそうそう起こるものじゃない。

 ……叶人は結構起きてる気がするけどそれは例外として。


 だから、これは僕のニャルラトホテプに対する抵抗。ささやかな嫌がらせ。


「さて、では勝ち抜き戦を行う前に私と貴方で戦闘を行い、私が勝利した場合、私は当初の予定通り六層での待機。貴方一人の力で、もし仮に一縷よりも尚小さな可能性を引き寄せ私に勝利した場合は勝ち抜き戦を行わずにこちら側の無条件敗北、という風でどうでしょう?」


「上等かな。ただ二点、条件を設定して欲しいかな」


「それは?」


 叶人、そして皆。 


「先ず勝利条件についてだけど、君が間違って死んじゃったら問題だからね。君は『敗北を認めたら負け』。僕に関しては『死んじゃったら負け』。そして戦う条件はお互いに必殺技一発での決着。これでどうかな」


「成る程。どうやら相当自信があるご様子。それで、チャージの時間を与える必要は?」


「頂こうかな。タメが要るからね」


 どうか、


「では、タメが終わったと判断した場合にお互いの一撃をぶつけ合い、私は敗北を認めた場合、貴方は死亡した場合、敗北と見做すものとします。……今回は主観によって勝敗が左右される事になるので公平性を保つ為に私の方からはエクエス、貴方の方からは杉原叶人を審判として置くものとする。これで良いですね?」


「それで良いかな」


 ――僕の小さな勝利に、気付いてくれますように。

次回ニャルラトホテプVSジャック

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